第7話 交錯そして開戦 ②
オリ―はジャックを背負って、何とかコンコードにたどり着き、民家の一つに転がり込んだ。息を整えつつ周りを見渡してみるが、誰もいない。コンコードは静かだった。
「おい、ジャック」
「俺の名前はジャックじゃねぇ、何だ」
足の痛みに顔をしかめながらジャックが言う。
「何で誰もいない? 応戦するべきだろ」
「確かに応戦したい気持ちは俺にもわかるが……ここで応戦しても勝てないと踏んだんだろう」
「だから逃げたのか。何か策があるのと思ったのに!」
オリ―は怒って傍にあった食器を叩き割った。割ってから猛省する。そんなオリ―を見て、微笑みながらジャックは少し肩の力を抜いた。突然自分のことをジャックと呼ぶ慣れ慣れしい男だったが、不思議と悪い印象はなかった。助けてくれたし。
「逃げたわけじゃない。敵にここを拠点にされたら武器が見つかるのも時間の問題だ。簡単に逃げるという選択肢は取れないだろう。恐らく、兵数や兵力、状況を冷静に考え意図的にここを出たと思うよ……勝つために」
「戦わなければ勝てないぞ?」
「あぁ、もちろんだ。きっと今は、ここからそう遠くないどこかで各地からくる民兵の援軍と合流しているのだろう。一旦落ち着いたわけだ」
「じゃあ、総力戦が始まるのか?」
「その可能性もありそうだが……俺ならそうはしないな。勝てる見込みが薄いし、勝てたとしても犠牲が多すぎる」
「じゃあどうするんだよ」
「知らんわ。でも、イギリスの狙いは多分殺しではなく、あくまで武器・弾薬の押収。コンコードで抵抗がないと、奴らはお前のように敵は逃げたと思い込むだろう。だから……」
ジャックの話を遮るようにイギリス軍の高らかなラッパの音が鳴り響いた。
「お出ましだ」
ジャックが言う。
「あぁ。……今ふと思ったんだが、ここにいたらやばくないか?」
「そうだな、やばいだろう。だがもう動けん。お前だけなら逃げられるぞ?」
ジャックは答えがわかってるかのように笑いながら言った。
「それは絶対にしない」
「やっぱりね。じゃぁ……」
ジャックは首をかしげながら両手を上げて肩をすくめた。
「オリ―だ。オリ―・ブルックリン」
「よし、じゃぁオリ―、一芝居打ってこの窮地を脱しようじゃないか」
二人は固い握手をした。
「ちなみに、俺の名前はト……」
「知ってるよ。ジャックだろう?」
「あ……うん……そこの棚を開けてくれ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます