矢車菊色の海

午後の図書館で、

読みかけの本に矢車菊の栞を挟んだら、

向かいに座っていた人が顔を上げた。

青が好きなの?

私は微笑んだ。

好きというか憧れ。

彼が微笑んだ。

いいね、そういうの。

遠い時間の向こうで波が騒いだ。

私は青い目を覗き込む。

理由が聞きたい?

今度こそ、

泡にならなかった人魚は想いを伝える。

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