あらたまの年のあしたつるとも春にこそあれ富士そかすめる



◇短歌



 月のこよみにては今日睦月二日けふむつきふつか

 父母ちゝはゝ少時をさなきみぎりには、日の曆の正月としあけまさりて、月の曆の新春はつはるをばけりなりしかど、今の代にる行ひあるを知らず。本朝あがくににて、昨日を元朝みよのはるりし人、はなはすくなかるべくありけむ。

 臺灣、越南、震旦から或はからにては、あらじ。すこぶともしとなむへる。

 民草のいにしへならひて果てゝじぬは、何如いかなる世をかほりする。


 凍つる日、猶暫なほしましくつゞくがごとあめれど、曆に春とへるは、うつゝにもしかるべし。むべ此數日こゝすじつ空に霞ありて富士を見放みさくるにあたはず。

 瑣事ちひさきことにてはあれど、かゝるきざしにこそ、春來はるきたるらしとおもほゆれ。




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