第71話 おまた、さわります


 少し早めに身支度をした3人は開店前のブラウン服店に来ていた。


「おはようございます変態領主様」


「うん、否定はできないけど朝っぱらから変態はないよね」


「でも変態ですよね、いきなり領主になってさらに侯爵様になるとか。

そんな魔族聞いたことないですよ。

も、もしかして王妃様にパンツとブラを献上したんですか!

爵位がもらえるなんて、そうとしか考えられないですよ。

で、王妃様のブラのサイズはいくつだったんですか!

参考までに教えてください!

もしかして、公女殿下のサイズも把握済みとかですか!

それはさすがに鬼畜ですよ! 公女様はまだ12歳なのに!」


「え、ブルーレットそれマジなの?」


「採寸なんかしてねーよ、お前ら俺を一体なんだと思ってるんだ」


「文字通りパンツと共に羽ばたく変態」


「ちゃんと功績を讃えられて侯爵になったんだよ!

いや、確かに王宮で大量のパンツ飛ばしたけどさ」


「マジですか」


「ガチのマジです」


「ブルーレットさん、パナイっすね、マジ尊敬するっす!」


「国王の奥さんと子供が『破廉恥ですわ!』って言ってたきがする。

そうか、あの子は12歳だったのか」


「うわー、王妃に破廉恥って言わせたとか、それ極刑案件だよブルーレット」


「さすがはパンツ伝道師、そこにしびれる憧れる!」


「ちょっとまて、メリッサさんはアノ漫画知らないよね?」


「アノマンガ? なんですかそれは」


「いや、知らないなら知らないでいいんだけど……」


「そうだ、ブルーレットがね、新しいパンツ作れるようになったんだよ!」


「!!」


 メリッサがものすごい勢いで圭に抱き付いた。


「好き」


「おい、お前が好きなのはパンツだろ」


「私の体、好きにしていいから、めちゃくちゃにしていいから、パンツください」


「そういうのはリーゼで間に合ってるから」


「おや、お二人はもうすでにそんな関係ですか」


「昨日、ブルーレットにパンツまさぐられた、パンツ濡れた」


「ミミルもおまたがサワサワされて濡れたですにゃ!」


「ほほう、それは興味深い報告ですね、お姉さんちょっと興奮してきましたよ」


「お前ら3人とも頭おかしいだろ、濡れたとかそういうこと言うなよ。

あれは村のためで故意にやったわけじゃないんだからな!」


「で、濡れた惚れたは別にして、パンツ。

パンツはまだか! 早く出せこの変態魔族!

お姉さん我慢の限界だ!

ほら、早く出しちゃえよ、ポロンって出しちゃえよ。

触らせろよ、テイスティングさせろよ」


「パンツは口に入れるものじゃないからね、メリッサさん興奮しすぎ」


 パンツのためならキャラ崩壊だっていとわない、それがパンツ伝道師の精神だ。


 そしてカウンターの上に出されたのは、色とりどりのデザインパンツ。

 水玉、縞柄、花柄、そのた諸々。


「こんな感じでデザインの制限がなくなったんだ。

こんなデザインがいいとかあったらその通りに出せるけど」


「おお、神よ! この世界はなんと美しいのだ!」


「ねえ、それ、パンツに頬ずりしなが言うセリフじゃないよね。

あとは遊び心でこんなのもあるけど」


 圭が追加で出したのはキャラ物のバックプリントパンツだった。

 ネコ、イヌ、クマ、ウサギ、ハムスター。

 それに反応したのはミミルだった。


「うにゃにゃにゃ! 可愛いですにゃ!」


 キラキラした目でネコパンツを広げて凝視するミミル。

 そして、メリッサも同じ反応をした。


「もうだめ、私、死んじゃうかも」


 震える手でバックプリントパンツを天にかかげるメリッサ。

 両目からは涙が流れていた。


「ねえメリッサさん、パンツは御神体じゃないからね、崇めたりしないでよ」


 メリッサが正気を取り戻すまでにそこから10分ほど時間を要した。

 

 その日の納品オーダーはバックプリントパンツ600枚だった。

 日本だったら子供用として使われるデザインだけど。

 そんな固定概念が無いこの世界では、初めて見るカワイイものに年齢など関係なかった。

 さらに紙が普及していないこの世界では、絵というもの自体が希少とも言える。

 それがパンツにコミカルに描かれているのであれば、見えないオシャレとして欲しいと思うのは、無理からぬことだった。



 いつものように露店で朝食を取り、ついでに昼食も買い込む。

 昼食は村で食べる用だ。


 昨日と同じパンツ鳥で飛んだ3人はエッサシ村へと降り立った。

 井戸の広場にはすでにサトウとササキ、そしてヨシダの3人組がいた。

 ほかにもチラホラと村民数人が井戸の周りで活動していた。


「おおブルーレット、相変わらず変態すぎる登場だな。

下着を乗り物にするとか人類じゃ考えられないぞ、さすが魔族と言うべきか」


 そう言ったサトウの手には昨日作ったレンガが握られていた。


「今朝見つけたけど、どうやってこれを半日で作ったんだ?

あと丸太も見たけど、あれは本当にリーゼがやったのか?」


「それも含めて今から説明するよ。

もうね、俺も吹っ切れたよ、今日はこの村を変態に染め上げてやる!

全員ここに集めてくれ」


「おう、わかった」


 言うや否や全員に召集をかけるサトウ。


「ねえブルーレット、もしかして全員に魔法使うの?」


「希望者がいればね、とにかく今日一日で片を付けるぞ。

人海戦術でやれば今日だけでこの村を何倍にもできる家の資材が揃うはずだ」


「にゃ~、みんなのパンツ濡れまくりですにゃ~」


「コラコラ、そういう表現はダメだからね」


 ほどなくして、村民全員が集まった。


「えーと、今日はみんなにやってもらいたいことがある。

この村を発展させるために家を沢山建てる」


 要点をまとめて圭が説明していく。

 魔力が得られたら木を伐ったり加工したりできること。

 土からレンガや石材を作れること。

 力を付与されたらそれらの資材を簡単に運べること。

 さらに地面に柱を刺したり、重たい丸太を組み上げたりなど、家を作る段取りが出来ること。

 

 圭の希望は今日一日で資材の全確保、さらにモデルハウスの完成までこぎつける。

 そこまでの話を聞いた全員が驚きの声を上げるが。


「まあ、ブルーレットさんだから、できるでしょ」


 との村長の一声でみんななぜか納得した。

 全ては変態魔族の一言で片付けられてしまうこの悲しさ。


「そして俺が力や魔力を与える方法なんだけど、パンツのココを履いた状態で1分俺が触ります」


 昨日リーゼとミミルに説明した内容そのまんまで伝える。


 ドン引きだった、リーゼとミミル以外の人全てドン引き。


 ざわ……、ざわ……。


 絶望! 圧倒的絶望っ!(CV:立木〇彦)

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