第70話 3人の変態
ミミルが地面に手を触れると、土が凝縮し赤茶色のレンガへと変わった。
赤土でもない粘土でもないただの土が、焼き入れもせずにレンガへと変わる。
「出来たにゃご主人様!」
受け取った圭はそのレンガをまじまじと見つめる。
「すごいな、常識で考えたらただの土がレンガになるなんて無理なのに。
やっぱ魔法ってすごいんだな。
よし、この調子でレンガをどんどん作ってくれ」
「わかったにゃ!」
水を得た魚のように、凄まじい勢いでレンガを量産していくミミル。
山の地面に手をつき、レンガに変えて山肌をどんどんレンガへと変える。
それを後ろから追いかけレンガを取り除いて、一か所に積み上げていく圭。
共同作業をひたすら繰り返し、夕方になるころには山の半分がレンガに変わっていた。
数えていたわけではないけど、5秒に1個のペース、1時間で約700個。
5時間くらいで、約3500個のレンガが出来上がった。
「ミミル、魔力は今どのぐらい残ってる?」
「うにゃー、半分くらいかにゃ、半分よりちょっと多いかもにゃ」
ミミルは体感的に半分も魔力を使ってないと言う。
仮に半分がレンガ4000個としたら、フルで8000個
それは土の上位魔法が8000回使える魔力だということだ。
同等の魔力でパンツが800枚。
つまりパンツ1枚の生成がレンガ10個分と同じ魔力ということになる。
「パンツって、上位魔法の10倍だったのか、それが魔力消費小って……」
魔族の魔力が底知れぬ膨大なものだと改めて実感した圭。
「とりあえず、今日はこのくらいにしておこうか。
リーゼの様子を見に行ってみよう」
「はいですにゃ!」
「うわー、俺も変態だけどリーゼも変態だろ」
思わず出た言葉がそれだった。
森だった場所が変わり果てた姿になっていた。
森の外側に向かって倒された木は全て裸にされており。
その範囲は1km四方に及んだ。
遠くで爪楊枝のように見える木がまた倒されていく。
「あそこだな、ミミル行くぞ」
「はいですにゃ」
走る速さに差が出ると思い、圭はミミルを抱きかかえ疾走した。
「リーゼ」
「あ、ブルーレット」
「もうそろそろ夕方だ、今日はこれで終わりにしよう。
一旦村に戻るよ」
「うん、そろそろ魔力が尽きそうだったから丁度いいかも」
「そうか、リーゼは魔力ほとんど使ったんだね。
ミミルはレンガ作ってもらったけど、半分残ってるみたいだよ」
「風と土で魔力が違うのかな」
「どうだろう、輪っかと切断の風が思ったよりも魔力を使うのかもね」
「使う間はずっと出してる魔法だから、多く使うとかかな」
「多分そうじゃないか、にしてもこの木の数、変態すぎるだろ、何本倒したんだよ」
「えへへへ、変態って褒められるとなんか嬉しいねブルーレット」
「誉め言葉だからな、ついにリーゼも変態の仲間入りか」
「ミミルも、ミミルも仲間になりたいですにゃ」
「いや、あれだけレンガ作ったら十分変態だよ」
「ミミルも変態ですかにゃ?」
「ああ、変態だ、立派な変態仲間だよ」
「やったですにゃ、変態さん仲間~」
村に戻った3人は村長の家に入った。
「で、どうだったブルーレット、木材はなんとかなりそうか?」
結果が気になるサトウは圭にそう尋ねる。
「結果だけ言おう、リーゼが木を倒しまくった、多分だけど1000本近くある」
「へ?」
その場にいた村長とサトウが、口をあんぐりと開けたまま固まった。
「しかも皮剥きと枝落としも終わってる、完全な丸太が1000本近くある」
「……」
「それでミミルにはレンガを作ってもらった、数えてないけど3000個以上は確実にある」
「それは冗談だよな?」
「レンガは村の入口近くの外に、木は村に近い森だ、見てくれればわかる」
「マジか」
「マジだ」
「なんてこった、しかもそれをリーゼとミミルがやったって言うのか、わずか半日で」
「うん」
「ブルーレットさんですからね、驚いても、すぐに納得しますよ私は。
椅子に座るのに比べたらレンガなんてカワイイもんですよ」
村長さん、いまだにあの椅子がトラウマらしい。
「今日はこれで帰るよ、明日また来るから、みんなで打ち合わせをしよう。
家を建てる場所とか、材料の量とか諸々の相談だ」
「わかりました、それではまた明日、お願いします」
呆けたサトウをそのままにし、3人はパンツに乗り温泉宿へと戻った。
3人一緒に温泉に入った昨日の夜から、リーゼの勧めでミミルのパンツとブラも回収が始まった。
これで使用済みパンツとブラのストックが倍で増えていくことになる。
いつもは温泉に一緒に入る時に着替えた下着をそのまま圭に渡すのだが。
今日だけはリーゼが圭に念を押した。
「このパンツ、絶対に内側見ないでね! ほんとに見ないでね!」
「ですにゃ、見ないでほしいですにゃ」
「いや、別に見たりなんかしないよ、いつもそうだし」
受け取ったパンツとブラをそのまま収納する。
童貞故か、鈍いのか、二人の言葉の意味を理解せずに首をかしげる圭。
「変態だけど、俺はそこまで変態じゃないよ」
「そういう意味じゃなくてさ……、あーもう! 温泉入るよ!」
「入るですにゃ!」
「変な2人だな」
こうしてパンツに翻弄された一日が終わった。
翌朝、散歩がてらに森へとやってきたサトウが、その光景をみて言葉を失うのだった。
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