指定席

勝利だギューちゃん

第1話

僕は関西に住んでいる。

なので、東京に行くときは新幹線を利用している。


もちろん、のぞみ。


昔は、自由席を利用していたが、窓際でないと嫌なので、指定席にして、

最近では、贅沢をしてグリーン車に乗っている。


もっと若いころは、自由席がいっぱいの時は、デッキにいたこともあった。

今では、無理だけど。


指定席もグリーン席も、座る席はあらかじめ指定されて、その席に座る。


当然隣にも人は来るのだが、完全に赤の他人の場合が多い。

なので、会話は最低限しかしない。


まあ、互いにしたくもないが・・・


しかし、神様というのは時に皮肉。

面白い演出をしてくる。


ある時、東京からの帰りも新幹線に乗っていた。

グリーン席。

どうしても、座りたかった。


グリーン車は高いので、買う人は少ないと思っていたが、

同じことを考える人は多い。


かなり、混んでる。


先に席に座っていたら、隣に同い年くらいの女性が座った。

僕は、気にも留めなかった。


「あのう、間違っていたらごめんなさい」

その女性が声を、かけてきた。


「もしかして、・・・くん?〇〇高校の」

「そうですけど・・・」

「やはりそうだ。私よ、私。3年の時同じクラスだった小野よ、小野和美」

「えっ?小野さん?」


言われてみれば面影がある。

でも、女は高校卒業するとばけるって本当だな。


「君は、変わらないね、すぐにわかったよ。今何してるの?」

「まあ、ぼちぼち・・・」

「私は、出張だったんだ。・・・くんは結婚してるの?」

「してると思う?」

「思わない」

「正解」

「私も・・・縁がないんだ」


意外だな・・・

もててたのに・・・


「でも、どうしてグリーン車に乗ったの?高いのに・・・」

「疲れていて座りたかったから」

「私も・・・考えることは同じだね」


相変わらずおしゃべりだ。

でも、僕とは会話をしたことが、あまりない。


「・・・くんは、今はどこに住んでるの?」

「同じだよ」

「私は、神戸に引っ越したんだ」

「・・・そう・・・」

「ねえ、クラスの子たちには会ってる?」

「消息不明」

「私は、会ってるよ。仲の良かった子たちだけどね」


そういや、疲れてしまった。


話している間に、降りる駅である京都に着いた。


「じゃあ、ここで」

「うん。またね。・・・くん」

「うん。また」

「あっ、ライン交換しようか?」

「やり方わからん」

「じゃあ、メールと電話ね」


交換した。

まあ、かけることはないだろう。


ホームに降りて気づく。


あっ、駅弁食べるの忘れた。


まあいい。

近鉄特急の車内で食べよう。


だが、同じことは繰りかえされた・・・


近鉄特急も指定席。

座っていると、声をかけられた。


「あっ、・・・くんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

指定席 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る