12

 甘い吐息が、心を掻き乱す。


 艶やかな幸江の肢体に、心も身体も異様に昂っている。


 ——美しい。


 幸江の乳房も、柔らかな身体のラインも、何もかもが美しかった。首筋から臍(へそ)までゆっくりと舌を這わせている。幸江の細い指が、優しく腰を撫でながら、下へ下へと降りて往く。甘い痺れが、毒の様に、全身を支配して往く。幸江の乳房を、下で転がしてやると、電流でも流された様に、身体を痙攣させている。異常なまでに興奮していた。幸江も又、同じなのか指の動きは激しく為っていた。


「幸四郎さんの此処、硬くなってます……」


 甘く、優しく、耳元で囁くと、耳に舌を這わせてきた。


 幸江の指が、まるで淫靡な蛇の様に絡み付いてくる。堪え切れずに、声が漏れてしまう。


「幸四郎さんの声、凄く、可愛い……」


 穏やかな心とは裏腹に、悪戯な視線を絡ませながら、幸江は淫猥に嗤っている。


 其れが、異様に興奮を掻き立てる。


 口吻(こうふん)を、幸江の唇に重ね合わせる。何度も、何度も、擦り合わせながら、指を下へ下へと這わせて往く内に、湿った感触に行き着いた。まるで熟れた果物の様な感触が、生温かく内へと引き込む。ゆっくりと内側(なか)へと侵入させながら、舌を絡め合わせる。


 呼吸を忘れる程に、互いを求め合う。


 愛しさが、異様に込み上げている。確(しっか)りと繋ぎ止めておかなければ、直ぐに擦り抜けていく様な気がして恐かった。幸江を守護(まも)り抜くと誓った。惚れた女を、何が何でも幸せにしてやると決めた。斗神會を敵に回そうが、構わない。幸江と共に居られるので在れば、何も求めはしない。


「絶対に、幸せにしたる!」


 指を引き抜くと、幸江の上に覆い被さった。


「本当に、信じても良いですか……?」


 潤んだ瞳で問い掛ける幸江が、愛おしくて堪らない。


「信じて良い!」


 此れ異常、我慢が出来なった。


 ゆっくりと、幸江の内側(なか)へと侵入(はい)っていくと、異様な快楽が脳を狂わせて往く。ゆっくりと、ゆっくりと、心が甘く儚く痺れている。


 激しさを増すに連れて、幸江も異常な迄に乱れている。


 枕元に置かれたスマホが、着信を報せている。山崎の名がディスプレイに表示されているが、構わずに幸江を求め続ける。時刻は深夜の二時を回っている。明日の朝には、名古屋を立つ。未だ山崎は、何も勘付いていない筈だ。構わずに、無視をした。


「……で、出なくてっ……良い、んですかっ……?」


 情欲に顔を歪めながら、幸江が問い掛ける。


 激しく責め立てながら、答える。


「放っておいて、良い。俺の動きは、奴らには解らんっ……」


 まるで何かから逃れるかの様に、幸江を求め続けた。


 逃げ切れる算段も、自信も在る。


 自分は死神だ。


 邪魔をする為らば、鎌首を衝き立てるだけだ。


 ——何が在っても、幸江を守護(まも)り抜いてみせる。

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