6
「ほな、始めますか?」
今は廃墟と化したビルの中、一輝の明るい声音が木霊している。
此の場所は誰も来ない為、普段は攫った溝(どぶ)の拷問場所にしていた。故に思う存分に、暴れる事が出来る。
「……ッあ! 其の前に、一つ約束して下さい!」
「何や?」
煙草に火を付けて、一輝に問う。どうせ又、下らない事を謂う心算だろう。
「俺が勝ったら、さっきの姉さんに想いを伝えて下さいッ!」
唐突な言葉に、思わず噎(む)せていた。
睨み付けるが、屈託の無い笑みを向けてくる。
「好きなんでしょう?」
真っ直ぐな瞳が、死神の心に問い掛けていた。
答えは既に出ていたが、応えられずにいる。
「兄貴、本当に素直じゃないっすね!」
おもむろに煙草を取り出しながら、楽しそうに笑う一輝が不思議で仕方がなかった。
自分と此れから喧嘩をしようと言うのに、どうしてこんなにも笑っていられるのだろう。
「御託は良い。偉そうな口上は、俺に勝ってから言えや」
煙草を乱暴に投げ捨てると、幸四郎は構えた。
精々、拳で語って貰うとしよう。
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