第20話 天使ちゃんと白い部屋(回想)

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聖女である立花ホノカの回想です。

「第4話 目覚め」から異世界に転生しリールと出会うまでのお話になります。

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『あなたは死にました』



 目が覚めると目前には女の子がいた。


 金髪で美しい顔立ち。


 日本人には見えないけど欧米人にも見えない。


 強いて言うならコスプレ?頭の上にはドーナツ型の蛍光灯?


 まさか天使の輪っか??


 私もそういう格好してみたかったな。


 立花ホノカは思った。


 そんな事より......。


 私は死んだんだ。記憶が全くない。


 何かに襲われたような。だめ。思い出せない。


 ......え?私、誰だっけ?


 自分の名前しかわからない......。不安が襲ってくる。



『あなたは死にました』

 天使ちゃんはもう一度言った。



 あなたは?



『導く者』


 無表情だが優しい声。



『立花ホノカ。あなたは死にました。黒の魔人から殺された。理由は一つ』


 導く者は言った。二言以上話せるらしい。



 黒の魔人?



『人でも獣でもないもの。あなたの世界にはいない者。あなたが死んだのは間違い』



 間違いなら帰して!



『それはできない。あなたの世界の秩序、乱れる。だから立花ホノカ、異世界に転生する』



 転生?



『あなたの才能、ずっとずっと開花させる。転生してやり直し』



 才能?やり直し?全然わからない!どうにかなりそう!



『心配いらない。あなたは聖女。生まれながらに尊い。稀有な存在。世界を繋ぐもの』


 聖女?それは何?私はどうすればいいわけ?


 殆ど泣き出しそうになる私。混乱と恐ろしさ。聖女?取柄もない私が?



『話しても理解されない。だけれどあの世界。いま未曾有の脅威に晒されている。聖女が必要』


 どうして私は殺されたの?



『それは、立花ホノカ。強すぎるから。開花したら誰も近づけない』



 開花したら、そのだれも近づけない存在になるってこと?


 聞いていると苛立ってきた。



 分かったわ!その異世界で暴れまわってやる!そうすればその黒の魔人に辿り着けるってことよね?



『そうとも言える。でも、暴れまわる。それ迷惑』



 知ったこっちゃないわ!!


 突然殺しといて、その理由が強すぎるからー、とか納得いくかっつうの!!


 記憶もないし。


 あったま来たわ!!



 皆殺しよ!!!



『だめ。ホノカ。聖女。弱きものを癒やす存在』



 だ、か、ら、そんなの知らないって!!


 だめならそうね......強くて悪い奴をやっつけてやる!!!


 そうだわ!早く転生させて頂戴!



『転生する。だけどここでの記憶、すべて忘れる』



 はぁ?何でなのよ!?それじゃあ自分が聖女で、強いってことも忘れてしまうってわけ?



『そうなる。こればかりはしょうがないこと。脳に障害が生じない最善策。それと』



 それと?



『少し、性格柔らかくしておく』



 え?ま、まあそれは別にいいわ。



『一つだけ、ヒント』


 助言したいっていうの?


『ホノカ、あなたは美しい。だからもう少し優しくした方がいい。これ処世術』



 うっさいわね!!!


 ホノカは天使ちゃんの頭を叩いた。



 パリンっ



『あ』



 あ!!



『ああーーー!』



 頭上の輪っかが割れた。



 ごめんやりすぎたわ......。



『もう知らない。さっさと行け』



 そんな怒んないでよ~。スペアとかあんでしょ?



『あるわけない。これ最後の一個だったのに』



 割ったことあるんだ......。




『まあいい。これから異世界に送る。アルガリア公国の領土。比較的安全地帯。』



 教えてくれても忘れちゃってんだよね。


 せっかく知り合いになれたのに、もうお別れか。ちょっと寂しいね。



『全然』



 うおりゃー!


『ゴフっ!』



『行ってしまえ(怒)』


 ホノカは白い光に包まれる。


 聖女として、未知なる世界へ転生を始める。



『......また、すぐに会える』



 ホノカを転生させた天使ちゃんはため息をついた。



『ホノカ。面白いこ』



 天使ちゃんは遠い日を思っていた。


 ホノカと同じ黒の魔人に殺された、の事を。


 名前はたしか、ガル......。





『ホノカ。黒の魔人を殺して。私たちを救って』


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