小話2

 電気自動車の電池残量を示すメーターが、全体の3割を切った。


「先輩、そろそろ充電した方がいいんじゃないですか?」

 助手席に座ってい大森は、ハンドルを握っている晴美に知らせる。

「わかってるよう。この辺りにガソリンスタンドに向かっているところだからあ」

 晴海が気だるそうに返事をしながら、カップホルダーに置いてある紙コップに手をかける。

「あれ、ない……」

 一瞬だけ、眉が上がった。

「すみませえん、大森おおもりさん、補充お願いできますかあ?」

「わかってますよ。ちょっと待ってください……」

 大森は手慣れた手付きで手元のリュックサックから袋を取り出す。


 袋についていたファスナーを外し、中身のをつまみ上げ、晴海が差し出した紙コップの中に入れる。


「どうもお」

 晴海は紙コップをカップホルダーにセットすると、スティックニンジンをつまみ口に運ぶ。

「それにしても、先輩って変わってますよね」

「それは承知の事実じゃないのお?」

「そうじゃなくて、ニンジンの食べ方ですよ。普通、マヨネーズかドレッシングをかけて食べません?」

「料理の時はドレッシングをかけるよお。でも野菜単体はかけないで味わう方がおいしいって、勝手に決めつけているだけえ」

「そうなんですか。それにしても、もうすぐお昼ですよ? 昼飯が食べられなくなりません?」

「ニンジンは別腹だよう」

「先輩は相変わらずベジタリアンっすね……」

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