こころのばんそうこう

味噌村 幸太郎

第1話 こころのばんそうこう

 ぼくはむねをケガしているの。




 でも、ママにいってもばんそうこうを、はってくれない。




 ぼくが


「いたいよ」


 ていっても、


「そこにははれないよ」


 だって。




 むねがズキズキいたむのに、おいしゃさんも


「きにしすぎだよ」


 といってぼくのはなしをまじめにきいてくれない。




 なんでいたいのか、かんがえてみた。




 たしかこのまえ、おともだちのあっちゃんとあそんでいるときにケガしたんだよ。




 なかよく、ふたりでこうえんでいっしょにあそんでいたのに。


 あっちゃんがほかのおともだちとあそぶから、ぼくとはあそばないっていったんだ。


 ぼくがめのまえにいるのに、あっちゃんはほかのおともだちと遊んでいたの。


「ひどいや!」


 あたまがカンカンになっていた。


 おこったぼくはひとりでおうちにかえった。




 でも、かえりみちにむねがきゅうにズキズキいたくなってきたの。


「なんでだろ?」


 ぼくはくびをかしげる。




 ママにいそいで、


「むねがいたいよ!」


 とないた。




 ママは


「みせてごらん」


 といってぼくのシャツをめくった。


 でも、ケガどころかキズひとつない。




「ケガなんかしてないじゃない」


 ママはわらった。


「でもいたいよ!」


 ぼくはおこった。




 それからまいにちずっとぼくのむねはいたくてしかたなかった。


 ほいくえんにいってもいたいし、こうえんであそんでいても、いたい。


 ずぅーっと、いたみがきえない。




 あるひ、ぼくはあっちゃんにこえをかけられた。


「あ、このまえはごめんね。これからはいっしょにあそぶから……」


 あっちゃんがあやまってくれた。




 すると……。


「いたくないかも…」


「え?」


 あっちゃんはふしぎそうにぼくをみていた。




「またあそんでくれるの? あっちゃん」


「もちろんだよ」


 そのとき、ぼくのむねはズキズキしなくて、ウキウキしていた。


 うれしかったんだ。


 まるで、こころのなかにばんそうをはられたように。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こころのばんそうこう 味噌村 幸太郎 @misomura-koutarou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説