第24話 第五の事件! 俺はロリコンじゃねえ
◾クリス
「クリス、見て。ここ見て……首筋」
ダイヤは女の死体を指さした。
「これはやけどか? こんなピンポイントで……ってまさか!」
「そう。強力な電気を操る能力者がこの女を、殺した……ってこと。そして、この女を殺すことができるのは……この時間に、この場所へ来ることを知っているはずの、同じ組織の人間……」
ダイヤは一呼吸置いて、
「つまり……エミリーとクイーンっ!」
◾隆臣
それから2日が過ぎ俺、エース、凛、ジョーカーの4人は訪日してくるというイタリア人の魔術師を迎えに豊園邸を出た。
最初は俺だけで行くつもりだったんだがエースと凛とジョーカーもついてきた。
もし組織の幹部と出会って戦闘になったらエースとジョーカーがいたら心強いけど、凛がいると守りながら戦う必要があるので本当は豊園邸で大人しくしていて欲しかった。
でも凛が行きたい行きたいと言って聞かなかったので、かわいいから今回は特別に同伴を許可してあげた。かわいいは正義。
秋葉原。そこはオタクの聖地――サブカルファンやアイドルファンのメッカでありながら昔ながらの電気街。
俺たち4人は山手線で浜松町に行くために豊園邸最寄りの電気街口へ向かった。
するとどうやら出口付近でアイドルが路上ライブを行なっているらしい。
小学生くらいの体躯の女の子で金色でウェーブのかかった髪の毛が非常に美しく、手にマイクを握って歌って踊っている。
カーキのホットパンツを履きブカブカのオレンジパーカーを着ていて背中には改造された水色のランドセルを背負っており、両手に人差し指と中指だけ金属製の黒い革手袋をはめている。
ちょうど曲が終わったようでまばらにパチパチと拍手が送られた。
少女は額に汗を輝かせながら無邪気に笑って観客に手を振っている。けっこうかわいいな。
「ありがとうございましたー!」
活発な声で礼を言いそして少女は大きく息を吸って、
「隆臣ぃい! スキだぁぁあああ!」
と叫んだ。
『…………?』
少女の奇行に観衆の頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
「……え?」
「「「……?」」」
俺もエースも凛もジョーカーも同様だ。
俺はきっと同じ名前の人に叫んでいるんだろうと思って気にせず歩き続けた。
だが少女は観衆を掻き分けて俺の目の前までやって来て、
「好きだぁ〜!」
と、また叫んだ。
え? どゆこと? なんなのこの子! どうしたの!?
俺は少女に腕を掴まれズカズカとどこかへ連れて行かれる。
「おい! ちょ待て!」
突然の出来事だったがエースは霊魂化して俺に着いてきてくれた。
少女に連れて行かれた先は狭い路地裏だった。
「なんなんだお前は」
そう尋ねると少女は俺に壁ドンをしてきた。黄金のウェーブヘアーがゆらっと揺れキャラメルのような甘い香りが漂ってくる。
サファイアのように透き通ったきれいな瞳。長い黄金のまつ毛。まあるくてやわらかそうなほっぺた。きれいなあごの曲線。少女は整ったかわいらしい顔で俺を見上げ、
「お兄さん、ロリコンなんでしょ?」
俺の首に腕をかけて頭を下げさせ耳元でそうささやいた。
「ほら? いいよ?」
少女は胸元をグイッと広げて挑発してくる。
バカやめろ! 女の子がそんなことしちゃダメだ!
俺は右斜め上を見ながら、
「お前は一体……何者なんだ?」
「ふふふ。お兄さんのだ〜い好きな小五ロリですよ?」
この少女は小悪魔を通り越して悪魔だと俺は悟リました。
「エース!」
俺の声で空中に現れたエースは分身を形成して少女をつまみ上げた。
――バチバチ
少女の指先に青白い稲妻が走っている。
「これは……まさかお前! ガイスト!?」
「ちっ……! (POP!)」
少女が大きく舌打ちをすると、
「停電か?」
あたり一帯の電気が一瞬のうちにすべて消えた。
すぐに電気は復旧するが少女の姿は消えていた。オレンジ色のパーカーだけが分身の手に握られていて、近くには水色のランドセルが転がっている。
急いで路地裏から出ると所々にメカメカしいコンプレッションウェアを着た少女がものすごい速さで歩道を走り抜けているのが見えた。
なんて速さだ。小五ロリとか言ってたのに俺よりも速いぞ!
「追いかけるぞ! 掴まれ!」
エースは分身を消しその分で俺の身体能力を強化してくれる。俺は強化された身体能力でガイストの少女を追いかける。
エースは浮遊しながら俺の肩につかまりひも付きのヘリウム風船のようについてきてくれる。
敵ガイストはものすごい速さで走っていたがたちまち減速したため俺はすぐに追いついて少女の腕を掴むことができた。
「捕まえたぞ!」
しかし少女は振り返って拳で俺の顔面を殴りつけてきた。
「くッ! このパワーッ!?」
この威力とスピード、小さな女の子のものではない。大人の男のそれをも遥かに凌駕している。
俺が怯んで腕を離してしまったのと同時に、
「POP!」
再び辺り一帯の電気が消えた。
「この停電もやつの仕業か! ちくしょう! 暗くて何も見えねェ!」
「隆臣! 後ろ!」
暗くて視覚は奪われたがエースは自身の第九感――脳の機能が進化することにより獲得した上級感覚でガイストから発生する残滓粒子を知覚し、それを頼りにガイストの居場所を教えてくれた。
振り返って防御するよりも早く少女の拳が俺の顔面に命中。
電気が戻って少女を認識するや俺はすぐに距離を取った。
ちくしょう痛てーじゃねーか。血も出ていやがる。
◾エース
私は第九感を利用して分割高速演算を開始した。
ガイストは普通女子小学生並みの力しか出せないはず。なのにあのパワーとスピード……これがあのガイストの能力なの?
だとすると停電の原因が説明できない。単なる偶然? いや、停電は明らかにあのガイストにプラスに作用するタイミングで発生している。
それならあの子のガイスト能力があたり一帯を停電させる能力で、あのパワーとスピードは上級感覚ってこと?
じゃああの指先で発生していた稲妻は何? あのメカメカしい全身タイツは何?
分割数と思考速度をさらに高め私は敵ガイストの能力解析を開始した。
To be continued!⇒
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