第22話 第四の事件! これが俺らの戦い方
◾クリス
俺たちは少女を追うために個室を飛び出した。
――バラララララララ
「ッ!? もう1人いたのか!」
5人目の店員に扮装した男が隠れていたところから現れ小銃を乱射してきた。
ダイヤは咄嗟にピッチャーの水でぶ厚い氷の壁を作り出し被弾を防いでくれる。
そして氷の壁をつららに変形して発射しなんとか撃破してくれた。
「危ないところだった……ありがとう、ダイヤ」
「……ん」
ダイヤは短く返事して頷いた。ダイヤは頼れる相棒だ。
俺たちは自動ドアをくぐって外に出た。そのとき、
――ゴゴゴゴゴゴ
地面が揺れて轟音が響いた。
俺はすぐにその震源が自分の足元であることがわかった。
「ッ!」
突然足元から巨大な植物のつるがアスファルトを突き破って出現する。
つるは俺とダイヤの体に巻き付きぐんぐん上へと伸びる。
「ダイヤ!」
ダイヤは空気中の水分からつららを形成しそれを発射してつるを断ち切った。
しかしまた別の場所からつるが一直線に伸びてくる。ダイヤは氷の障壁でこれを防ぎ俺たちは地面に着地した。
「あの子ども……やっぱりガイストだったか。だがどこに行った」
「……気配、感じる! けど……どこにいるのか、わからない……」
ダイヤは360度をキョロキョロ見渡しながら答えた。
「ガイストの能力効果範囲は広くてもせいぜい半径2、30m。そう遠くにはいないはずだ。それにこの正確性……やつはこっちを見ているに違いない。ダイヤは引き続き警戒を頼む」
「……ん」
しかし一息つく間もなく
――バンッ!
夜の上野の空に乾いた銃声が響き渡った。
――キンッ!
刹那、ダイヤは目の前に氷塊を作り出し飛んできた銃弾の軌道を少しだけ逸らした。
銃弾は俺の頬を掠めて背後の建物の窓ガラスを貫く。
俺たちは狙撃されたのだ。
俺はダイヤの腕を引いて建物の陰に身を隠す。
顔を出して狙撃地点を確認しようとすると銃弾は俺とダイヤの向かい側の壁に着弾。運良く外れてくれたがもう顔を出すのはやめた方がいいな。
いくらダイヤの第六感――直感が優れていてもそう何度も氷塊で弾道を逸らすことはできないだろうからな。
しかし俺は狙撃銃のスコープが月光に反射して光るのを見逃さなかった。敵の場所は把握した。
「あのビルだ。あのビルの屋上から狙撃してきている。150……いや200mは離れているな」
俺は目測で狙撃手までの距離を測る。
「でも……さっきのガイストも、探さないと」
「それは違うな、ダイヤ。敵ガイストは探す必要なんてない。着いてこい!」
そう言って俺は建物の陰から飛び出した。
そんな俺らの足元から植物のつるが何本も生えてきて同時に発砲音が聞こてくる。
ダイヤはつる内部の水分を凍らせて動きを封じそれを盾にして銃弾を防いだ。さすがダイヤだ。
そして俺は車道の先頭で信号待ちしているニッサンのロードスターからいちゃつくカップルを無理やりに引きづり下ろしダイヤとともに乗り込んだ。
俺は赤信号にも関わらず思い切りアクセルを踏み込む。
「おい!」
「きゃー!」
騒ぐバカップルの声を掻き消すようにロードスターはエンジン音をけたたましく轟かせる。
そしたらビンゴ! 手の平からつるを伸ばしてそれを街路樹に絡めてターザンのようにロードスターを追いかけてくる緑髪の三つ編み少女が追いかけてきた。
「探す必要はないのさ。おびき出してしまえばいい」
「……クリス、すごい!」
ダイヤは美しい淡青の髪の毛を風になびかせそう言って俺を見上げてきた。我がガイストだがダイヤはかなり整った顔つきをしていると思う。
敵ガイストはあっという間にロードスターに追いついて並走してきた。なんて野郎だ。速すぎるだろ。
ダイヤは少女につららを放ち攻撃をしかけるが少女は植物のつるを上手に操ってそれらを受け流しすぐにダイヤに反撃する。
ダイヤはつららでつるを断ち切ろうと試みたが、
――パンッ!
狙撃銃の発砲音が再び響いた。そして銃弾はダイヤの首貫いた。弾丸の威力にダイヤは後部座席まで吹っ飛ぶ。
「ダイヤッ!」
急ブレーキをかけて高速運転していたロードスターを脇道に逸らして停車させ建物を遮蔽物にしながらすぐにダイヤを抱きかかえる。
「ダイヤ……おいダイヤ!」
ダイヤを抱き寄せ、首元を抑える。
「ダイヤ……嘘だろ? おい! なんとか言ってくれよ!」
震えた声で俺はダイヤにしゃべりかけるがまったく反応はない。
そんな俺とダイヤのところに敵のガイストが現れた。
背後には尖った木の根が構えられている。
左耳に取り付けられた小型のハンズフリーヘッドセット越しに狙撃手から指示を聞いたであろうガイストの少女は「了解」と言って余裕のある足取りで俺とダイヤに近づいてきた。
少女が尖った木の根で俺を攻撃しようとしたその瞬間、
「ところで君は、今どんなに気分だい?」
俺は声音を変えて少女に尋ねた。
To be continued!⇒
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