第16話 第二の事件! 決着、クリス&ダイヤ戦
◾ ジョーカー
瞬間、ダイヤの背後が閃光のように光った。眩しすぎてわたしと凛は思わず目をつぶってしまう。
ダイヤが氷や水の屈折や反射を的確に利用して太陽光を反射してきたのだ。
「これが……ほんとうの、トドメっ!」
つららを発射しようとしたダイヤに対して、わたしは「はぁ」と深くため息をついた。
「まだ気づかないの? 天はすでに、あなたたちを見放していたってことに」
「「?」」
ダイヤとクリスは怪訝そうな表情を浮かべる。
「……わたしの方が一手早かったってことよっ!」
「うぐあっ!」
クリスは前方によろけて倒れた。
わたしは万有引力を操作してさっき凛が投げた石ころをクリスの後頭部にぶつけたのだ。
すると、
「おーい! 凛! ジョーカー! いるのか!? いるなら返事してくれ!」
「お〜い」
隆臣とエースの声が公園に響き渡った。
その声を聞いて、ダイヤは白い光の粒子――霊魂状態になって、クリスの中に戻っていく。
その光景を最後にわたしの視界は暗転した。
◾凛
「大丈夫かジョーカー」
「……」
「あれれ? 眠っちゃってます」
隆臣に対しての返事がなかったのでジョーカーを見てみたところ、緊張から解き放たれ疲労も相まってか、ジョーカーはかわいらしく寝息をたてて眠っていました。
隆臣とエースがわたしのところに到着します。
「全身に攻撃を受けたはずなのに、右足の傷だけまったく――跡形もなく治っているんです」
ジョーカーの右太ももを見ると、先ほど食らった攻撃の傷あとはすっかり塞がっていて、元のシルクのようなきめ細やかでなめらかな白い肌に戻っていました。一体何が起こったのでしょう。
「ガイストの自然治癒力は普通の人間と変わらないはず……となると、何か反物理的現象が起こったのか? いや、そうとしか考えられない」
と、隆臣。
「救急車呼ぶ?」
エースはスマホを取り出して、隆臣を見上げながら尋ねます。
「その必要はない。むしろやめておけ」
そう答えたのは隆臣の声ではありませんでした。
「クリストフ・ウェルナー――ポツダム出身でベルリンのフンボルト大学の工学部を卒業後、ミュンヘンのBMW(ビーエムダブリュー)の本社に就職したエリートだったが、すぐに退職しマフィアになった」
聞き覚えのある声にわたし、隆臣、エースは声が聞こえた方に視線を送ります。するとそこには、
「尚子さん! ハートちゃん!」
蔵前橋通りの方に、をさした尚子さんとハートちゃんの姿がありました。2人とも魔術学園の制服を着ています。
「どうしてここに?」
隆臣が尋ねます。
「どうしたもこうしたもない。家に帰る途中にたまたま通りかかっただけだ」
尚子さんは高等部の生徒会長さんなので、いろいろお仕事があってゴールデンウィーク中でも登校していたのですね。ハートちゃんはその付き添いって感じかな。
尚子さんは続けて、
「状況から察するに、お互いに詳しい話が必要みたいだな。それならうちに来るといい。ジョーカーの手当てもしてやるし、雨で濡れているのなら風呂も貸してやる」
そのように提案してきました。
「では、お言葉に甘えさせていただきます!」
「そうだね」
「不本意だが、仕方がない」
わたしとエースは前向きに、隆臣は後ろ向きに尚子さんの提案に賛成しました。
というわけで、わたしたち4人は尚子さんの家に向かうことになったのです。
To be continued!⇒
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