【15万PV突破】異世界転生してハーレムがつくりたい? こちとら現実世界でロリっ子ハーレム作ってるんやが?

矢田あい

第0話 東京魔術学園高等部(前編)

■隆臣視点



 俺こと品川しながわ隆臣たかおみ15歳が通う高校はいわゆる異能力者や魔法使いが集う特殊な学校だ。

 名を東京魔術大学付属学園。幼稚園から大学・大学院までの一貫校なんだが俺は訳あって高等部から外部入学した。

 魔術学園では文科省から与えられた必修科目の他に独自で魔法学を設けており、この科目では魔法や異能力、魔導具や魔獣について学ぶ。



――――――――――――――――



 1時間目現代文A。作者の気持ちなんてわかるはずないだろ。

 2時間目数学1。因数分解……まだ舞える!

 3時間目世界史A。カタカナ無理。

 4時間目化学基礎。「水兵リーベ僕の船七曲がりシップスクラークか」は完璧!

 現文古文世界史はマジでムリ。でも数学はまだ舞えてるし周期表も20番までは覚えたから、俺は理系なのかもな。

 文系でも理系でもずっとつきまとってくるのは英語。

 英語の担当は担任の駒込こまごめクリスティーヌ椿つばき先生。とにかく元気で明るくて頭のおかしい先生だが授業はめちゃくちゃ楽しくてわかりやすい。おかげで今のところ苦手意識はない。

 さて昼休みだ。



「飯行こうぜー」



 すっごい上機嫌に話しかけてきたのはクラスメイトのみやこかがり。その横には同じくクラスメイトの杉野すぎの亮二りょうじと生徒会書記でもある清瀬きよせ薄男はくおもいる。

 そんな3人と食堂に向かう。

 相変わらずめちゃくちゃ混んでいたが券売機で食券を購入して料理を得るために長蛇の列に並ぶ。

 数分経ってようやく料理をゲット。運良く4人テーブルが空いていたのでそこに座った。

 俺はソースカツ丼。篝はチキン南蛮定食。亮二は醤油ラーメン。薄男はホイコーロー定食。どれもこれも安いのに飛ぶほどうまい! さすが私立!



――――――――――――――――



 5時間目は魔法学7だ。

 俺の一番苦手な科目は魔法学。苦手ってより大嫌い。

 現文も数学も世界史も化学も1とかAとか基礎からだろ? なのにこいつだけ7からなんだよ! 1〜6をすっ飛ばして7! ちなみに魔法学1は初等部4年生で修得する科目なんだとか。

 つまり魔法の基礎中の基礎すらわからない俺は10歳以下ってことなんだよな。

 基礎すらわからない俺が7の内容なんてわかるはずもない。それに日本語の他に未知の文字を使ったりするから板書すらまともにできない。だからこの授業のときは俺はいつもぼーっとしている。

 でも2年生でも3年生でも魔法学はあるのでゴールデンウィークの連休中に亮二たちに一から教えてもらうことになっている。



 6時間目は実践1。これは魔法学7のような座学ではなく実技だ。

 今日の内容は魔力による3級魔獣の駆除。

 魔力っていうのは簡単に言えば魔法のエネルギーのこと。つまり魔法のエネルギーを放出して最低ランクの魔獣を倒せばいいのだ。

 座学が苦手な俺氏、実は実技も苦手。

 魔術学園では中等部3年生までに魔力をある程度自在にコントロールできるようカリキュラムが構成されているらしい。だが高等部から外部入学した俺はろくに魔法と触れ合ってこなかったから魔力の操作がめちゃくちゃ苦手。

 篝と亮二曰く「体内の魔力を素早く移動させることで空気中の魔力が反発してエネルギーが生まれる」らしいが、ちょっと何言ってるかわからない。


 俺は36番目。40人のクラスなので順番的には最後の方。

 それにしてもすげー! これが内部進学生か。みんな30秒以内に3級魔獣を駆除している。

 篝や亮二、学年一低身長の神代かみしろアリスや高等部生徒会長の豊園ほうえん尚子なおこなんかの優秀な生徒は10秒以内に駆除を完了しているぞ。

 どんどん俺の番が近づいてきている。もうすでに俺の前の生徒が実践場で魔獣が投入されるのをじっと待っている。

 この女生徒は俺と同じ外部入学の子だ。風紀委員でたしか名前はアンナ。きっとアンナも上手く魔力を操作できずに困っているに違いな――


 ――ボフン!



 魔獣が消えた? いや違う。アンナが消し飛ばしたんだ。膨大な魔力で。

 タイムは0秒72。これには科目担当の鬼瓦おにがわら先生も空いた口が塞がらない様子。

 どうしてこんなスゴい人の次が俺なんだよ!



「すごいなアンナは。なんかコツとかあれば教えて欲しいんだけど」



 実践場から出てきたアンナに声をかけアドバイスを求める。色々話したいことはあるけど次は俺の番だからな。



「肉弾戦で駆除しろ。お前にはまだ早い」



 アンナはそう言って実習室に戻ってしまった。相変わらず冷たいなぁ。コツの1つや2つは教えてくれたっていいだろ。

 とはいえ魔力を放出することができないのなら肉弾戦でどうにかするしかないよな。それで先生に怒られても今の俺にはどうすることもできない。


 実践場に入る。中はかなり広い。無機質な壁と天井、そしてグラウンドのような砂の地面。部屋の隅にはカメラが設置されていて実習室に実践場の映像を生中継している。

 3級魔獣が檻から放たれ入場。てかなんだこいつ! 今まで中継で見てきたやつとは見た目も雰囲気も全然違うぞ!

 中継で見た3級魔獣は形容できないほどデタラメな見た目だった。

 だがこの魔獣ははっきり外形が定まっていて、長くて太いしっぽの生えた単眼の人間のような見た目をしている。身長は俺と同じくらいだが体付きはかなりがっちりしている。

 他の3級魔獣には一切の戦意は感じられなかったが、コイツだけやけにやる気満々なんだけど! ボクサーみたいにステップをしながらシャドーボクシングしてるし。

 なんかめっちゃ強そうじゃね? どうして俺のときばっかりこうなんだよ! もっと弱そうなのにしてくれよ!

 俺は邪魔なブレザーを脱ぎ捨てワイシャツの袖をまくる。

 人型魔獣は歯茎まで剥き出しにして楽しそうに笑っている。気味が悪いぜ。

 頼むから見てくれだけであってくれ!

 俺は人型魔獣に殴りかかる。

 しかし、



 ――ズドン!



「グハッ!」



 腹に重たいカウンターを食らってしまった。なんてパワーだ。昼に食ったものが上がってきそうだ……耐えろ。

 コイツ見てくれだけじゃねぇ。ちゃんと強い! カウンターのボディーブローが見えなかった。スピードも速い。中身プロボクサーじゃないよな?

 俺はバックステップで人型魔獣から一旦距離を取る。

 さあどうこいつを駆除する。

 コイツの間合いに入ったら確実に攻撃をくらう。周りに武器になりそうなものは……何もないな。やはり素手でこいつを仕留めるしかないようだ。

 俺を弱いと判断した人型魔獣は一気に詰めてきた。

 武器がないとはいえ使えるものはある。

 俺は地面の砂を蹴って巻き上げた。人型魔獣の単眼に大量の砂が入り人型魔獣は目をおさえて悶える。

 俺は大きく踏み込んで人型魔獣の顔面に渾身の右ストレートをかます。人型魔獣は大きく仰け反る。

 いってぇ! 反作用で拳がいてぇ。



「イヒヒ!」



 人型魔獣は気色悪く笑いながら上半身を起こした。

 ヤツの左頬は明らかに腫れ上がっている。俺の拳は効いてるぞ。これなら魔力操作ができなくたって駆除できるはずだ。

 俺はヤツに攻撃のモーションを取らせないように顔面や胴体を殴り続ける。手応えはある。いける!

 だが俺のターンはいつまでも続かなかった。

 ヤツは長くて太いしっぽで俺に殴りかかってきた。俺は反撃を警戒していたのでステップと腕によるガードでダメージを最小限に抑える。しかし続く正拳突きで俺は後方に吹き飛ばされた。

 腕が痛い。ボクシングみたいにグローブをはめているわけじゃないからカードしてもそこそこダメージをくらっちまう。長期戦はキツイな。

 ヤツの顔面からは血が流れている。それにまぶた越しだが単眼に拳を叩き込めたのもデカい。まぶたが腫れて目の半分が隠れている。

 ヤツの弱点はあの単眼だ。単眼ゆえに1つ潰せば視界を奪うことができる。



「ニギギギギ! フギギギギ!」



 ヤツは明らかに怒っている。地団駄まで踏んでいる。

 


「ゴ……ろズ! ゴロじで……やドゥ」



 しかもカタコトな人語で喋り始めたぞ。

 地団駄をやめたかと思うとものすごいスピードで俺に詰め寄り拳を放ってきた。

 サイドステップで避けようとしたがヤツ左フックはフェイントで本命の回し蹴りを頭部にモロに食らう。

 そして首を掴んで持ち上げられ右腕と尻尾でタコ殴りにされてしまう。

 いてぇ……目眩も酷い。息も苦しい。ヤベェ、俺死ぬのか? 学校の授業で3級魔獣に殺されちまうのか? おい早く助けてくれ。内部生おまえらならこれくらいの相手は余裕だろ? 誰でもいいから助けてくれ。マジで死んじまう。

 半分諦めかけていたそのとき、俺はある言葉を思い出した。

 父さんから言われた言葉だ。


「強くなれ。強くなってお前がみんなを守ってやれ」

 

 ありがとう父さん。忘れかけてたよ。俺は強くなってあの子・・・を……あの子たち・・・・・を守ってやらなきゃいけないんだ。もう二度と悲しい目に合わせないために。

 人型魔獣の左腕を両手で掴む。そして両脚を絡めて体を思いきり反らす。

 こんな低級魔獣ごとき俺一人で十分だ。

 俺は人型魔獣の左腕を引きちぎった。

 ヤツは怯んだがすぐに右の拳を握って殴りかかってくる。

 このときの俺はゾーンに入っていた。ヤツの動きが全て予測できる。半ば未来予知のような直感で俺はヤツの右ストレートを躱して懐に潜り込み、フルパワーの右ストレートをヤツの顔面に放った。頭蓋骨を砕く感覚が腕に伝わってくる。

 人型魔獣は吹っ飛び地面に仰向けに倒れた。身動き1つしていない。頭は盛大に砕け散っている。

 なんだ今の……俺が俺じゃなかった。

 俺は右手を開いたり閉じたりして感覚を確かめる。

 実践場の扉が開いてそこから鬼瓦先生とクラスメイトのみんなが入ってきた。

 助けに来るのが遅すぎるぜ。もう3級魔獣の駆除は完了しちまったよ。

 みんなの方に歩き出そうとした瞬間、俺は膝から崩れ落ちてそのまま気を失った。



 後編へ続く

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