第184話 死闘の終わり

混乱したままのドワーフ族のチームはどの様にして戦うかを決められなかった。ディフェンスラインがボールを持てば、ボール回しからのビルドアップを図り、センターハーフの選手はドリブルを試みる。結果サイドハーフにボールが出る事もロングボールが来る事も無かった。じりじりと時間が過ぎていく。ディフェンスラインから出た苦し紛れの右センターハーフへのパスが渡る。泰朝はプレッシャーをかけるがかわされて、右センターハーフはドリブルを仕掛けて来る。

しかし、そのドリブルは長谷川とソフィアに簡単にボールを絡めとられる。

そのたびに信治はオーバーラップをしている。

パスが来るとは思わない。

ドワーフチームを低い位置にまで押し下げたり、体力を消耗させるためだ。

信治がオーバーラップすると、守備を固めるために自陣にドワーフ族は戻らざるおえない。信治をドワーフ族の右サイドバックが止める事が叶わないからだ。

そしてドワーフ族のフォワードが取り残される。

信治が走る事でディフェンスラインは横のスライドする。

その繰り返しを何度も続けている。

時間だけがずるずる過ぎていく。

残りロスタイムを含めて5分。

焦ったドワーフ族は全員で上がって来る。

その中心である右センターハーフのドリブルを長谷川は止めて、ボールを奪い取る。

その様子を見た信治はオーバーラップを仕掛ける。最後の時間だ。走り切ろう。

ドワーフ達は全力で戻る。戻りながら信治の動きを見て、信治のいる方にでフェンスラインと右サイドハーフがスライドして、スペースとパスコースを消してきた。

狙い通り、まったくのフリーになった長谷川は長いグランダ―性の早いパスをディフェンスラインにまで進出した泰朝に出した。

泰朝はフリーでボールを受けると、トラップをして反転する。そのままゴール左端を狙ってシュートを放つ。

ドワーフ族の左センターバックはショルダーチャージを仕掛けるが間に合わない。

そして泰朝の体幹も揺らがない。ドワーフ族のゴールキーパーはボールをパンチングで弾く。そのこぼれ球に反応したのが信治だった。


ミドルシュートのスキルが上昇しました。


謎の文字が頭に浮かぶが、そのままシュートを放つ。ボールはゴール右端に吸い込まれていった。

「信治さんやりましたね。ゴールです」

雪がそっと言って来る。

「後少し。耐えましょう」

「もちろんです」

雪はグータッチすると信治はポジションに戻る。

そしてドワーフボールで試合は再開される。

ドワーフがロングボールを蹴る。

パウロジュニアが、慌てず、優雅にヘディングでボールを跳ね返す。

そしてアレックスの所にボールが落ちた。

アレックスはロングボールを蹴る。

ぴー

そこで試合終了の笛が鳴るのだった。

何かを掴めたと言う自信と達成感に。

「悔しいけど、頑張ったわね。信治君」

環さんとハイタッチをかわす。

「むぅ、ずるいの環、ナターリアはご褒美に抱き着いてあげるね」

「こらナターリア」

ナターリアを制止する環で信治は抵抗できるテンションでは無かった。

苦しい戦いを制した喜びしかなかったのだ。

「えい」

ナターリアの反対方向から円が抱き着いてきた。

「やりましたね。信治さん、女神杯の優勝へ後一歩ですね。女神杯に来れるとは思っていませんでしたから、とてもうれしいです」

「こら、円もどさくさに紛れて抱き着かないで」

「ふふっ」

雪はその光景を見て微笑んでいる。でもこの喜びが永遠に続けば良いのになとも思っている。だって女神杯を優勝してMVPを取ると願いが叶うから。

信治さんが元の世界に戻ると言えばどうなるのだろう。

とても怖い。

でも夢は冷めるもの。私は最後まで走って、守って、攻撃参加をしてチームに貢献しよう。そして、チャンスがあれば伝えよう。素直な気持ちを。

そう決断する雪だった。

                                   続く

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