第51話 後半戦開始です。信治後半3分でクロスでアシストします。

自警団はそれぞれポジションに付き、試合を始める笛を待っている。

自警団ボールからで試合は再開される。

ピー

レッツPrey

審判の声がかかり試合が始まる。この世界ではやはりサッカーは戦争でもあり、サッカーの女神さまに奉納を試合でもあるのだ。

シュタールはナターリアにボールを戻し、自身は前線に駆けていく。

王子は周囲を警戒しながらバイタルエリアに入ろうとする。

地方騎士団は高い位置に陣取りプレッシャーをかける。

ナターリアには地方騎士団の右ボランチがプレッシャーをかけてきた。

UJIZANEはアレックスへのパスコースを切る位置に立ち、泰朝は前線へ走る。

ナターリアは冷静にセンターバックのジョーンズにパスをする。

直ぐに泰朝とジョージが寄せてくるので、たまらず信治にパスを出す。

そこには広いスペースが広がっている。ジョージが戻る前に雪にグラウンダーのパスを信治は出し、タッチライン沿いを駆け上がっていく。

ジョンは急いで信治についていこうとするが、脚力が頼りなかった。

雪は左サイドから中に切れ込んでいく。

自身のプレーを広げるためと上がってくる信治にスペースを与えるためだ。

足の早さに絶対の自信を持つ、エクスが雪のマークに付こうと駆け出していく。エクスは信治の走りこむペースでも、自分の瞬発力なら戻って守備ができると思っている。

雪さんが内側に切れ込んだと信治は思い、ランニングの速度を押す。オフサイドにならないためだ。雪のプレーを見たシュタールは半身になり、ボールを得る態勢を取る。

シュタールをオフサイドトラップにかけるために、ディフェンスラインを上げるべきか悩み、ディフェンスラインが乱れた。

雪はそれを見逃さなかった。

エクスが不用意に開けたスペースへパスを出す。

信治はそのスペースに向かってトップスピードで走り、ボールを追う。

オフサイドは無かった。

「今度はさせへんでー、信治!」

エクスは叫ぶ。

信治は歯を食いしばり、一気にかける。

信治の願いは1つ。

間に合え。

信治はボールをクリアするために走りこんで来るのが見えた。

ディフェンスラインよりも深い場所にボールはある。

自分を信じてくれた仲間がいる。

一緒にプレーしてくる人がいる。

追いつけ。そしてクロスを上げろ。

自分に言い聞かせて、ボールに触るとワンタッチでディフェンスラインとゴールキーパーとの間にグラウンダーのクロスを入れた。

シュタールは一歩踏み込むと、左足でゴールの右隅にボールを蹴りこんだ。

信治と雪の位置関係を見ていた地方騎士団のゴールキーパーは瞬間、反応が遅れる。

シュタールのボールを止める事が出来なかった。

「いいクロスじゃったぞ。信治殿」

そう言ってシュタールがわざわざ近寄ってきて背中を叩いてくれた。

「なんとか間に合いました。雪さんのクロスを上げてと言う意思と優しいパスのおかげです」

「そんな事無いですよ。信治さんのロングスパートと私の意図を汲んでくれたおかげです」

そう言って微笑んでくれた。

きゅんと信治の心臓は高鳴るのだった。

そんな事を考えているとがしっとむにゅっとした感触が背中に起きる。

耳元でささやかれた。

「ナターリアの仕事どうだった?信治の役にたった?」

「ナターリアさん試合中です」

「得点を取った時の感情表現なの。別におかしくはないと思うの」

「ナターリアさん、信治さんから離れないと環さんに怒られますよ?」

「はーいなの。モテる女の子はつらいね。また後半3分で取った得点なのにみんな喜ばないの?」

「ナターリアさん、試合終了まで気を抜かず頑張りましょう」

信治は軽い気持ちで告げる。

「はいなの。信治が信じてくれるからナターリアも頑張れるの」

「おい。みんなポジションに付け。試合が再開されるぞ。気を引き締めろ」

アレックスの怒号がピッチに響き渡る。

試合に勝つ。全てはそれからだ。そう自分に言い聞かせる信治だった。

                                 続く

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