知2

ここにきて予想外の問題が起きる、さらに時間も切迫していたこともあり一気に緊張感が高まった。



箱が見つからないってありえないよ…




理解できない出来事に潜在意識は焦りの顔を浮かべていた。



どうしよう…折角君が前に進もうとしているのに



震えた声でつぶやき、みるみると顔が青ざめていく。それに呼応するように空間の狭まるスピードが上がる。



いや、箱がないことよりもこの空間のほうがまずくないか



悟りを開いたかのような感覚になっていた俺は妙に冷静に状況を判断していた。しかし判断するだけでは状況は好転しない。



どうしよう…



どうする…



ほぼ同時に困惑の言葉を吐いた刹那、突然足元にドラム缶ほどの円形の穴があらわれる。




ちょちょちょ、ちょっと待ってー!




下の穴から飛び出し、そう大声で叫びながら現れたのは。




よっと、ギリギリセーフ?




大人の姿をしたマリだった。




な、な、なんでマリちゃんがここに




不測の事態にまさかの展開。視線を潜在意識に向けると、口を半開きにしながら頭の上に大量のはてなが見えそうなくらい疑問の表情をしていた。




気がつくと空間の収束する速度が遅くなっている。やはり俺らの感情が速度に影響していたらしい。




ナイス表情だね潜在意識くん。そして久しぶりだね弥くん。




ハニカミながらマリは挨拶をした。その様子は昔より純粋になっていた。体だけではなく性格も変わっていた。




なんでマリがここにいるんだ?それに最後見たときより成長してないか




やだなぁ弥くん。わたしは弥くんの味方だよ?弥くんがピンチの時、わたしは現れるのだよ




それと姿に関して制限がないのは弥くんも知ってるでしょうに。見た目と性格は弥くんの願望と心の影響さ




マリは流暢に輝くような声で喋った。屈託のない笑顔からは頼もしさすら感じる。




あ、そうそう!トラウマの箱はわたしが持ってるよ




潜在意識の目が見開いていく。




なんでマリちゃんが持ってるの。僕が隈無く探しても見つからなかったのに




弥くんが開けた箱、戻ってきて色が変わったでしょ?あれは想い入れが変わったから。トラウマの箱もすごく変わっちゃったから潜在意識くん気づかなかったんだよ




そして、これがトラウマの箱だよん




マリは出てきた足元の穴に両腕を突っ込んだ。そしてゆっくりと腕を引き上げていく。




よっこらしょっと




目の前に引き上げた箱を置く動作をした。しかし俺らにはマリがパントマイムをやっているようにしか見えなかった。




なにやってんだマリ




お兄さん方にはこの箱が見えないでしょ




見えないってもしかして




ふっふっふっ




そうだよ




トラウマの箱さんはね




透明になっちゃってるんだよねぇ

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