意識と景色
@sk9615
序
人は愛情を知らないと他人の愛情をなかなか信じることができない。
どこかの心理学者がそう言っていたのを強く覚えている。それは自分自身に当てはまっていたからかもしれない。
でも僕は知っているよ。本当は君が人一倍に愛情深いことを。
僕は君にそのことを思い出してほしかっただけなんだ。等身大の君で人生を歩んでほしんだ…
うっ、、、
頭が重い。俺いままで何してたんだっけ
気がつくと俺はなぜか見知らぬ場所で倒れていた。どうやってここに来たのか、なぜここにいるのかは全く思い出せない。ただ確かなことはここが知っている場所ではないということくらいだ。
ゆっくりと上半身を起き上がらせて辺りを見渡してみる。
クソッ、なんも見えねぇ
真っ暗で静寂な空間に自分一人。なんとも言えない恐怖に包まれて身震いする。
落ち着け俺、まだ慌てる時間じゃあない。こういうとき下手に動かずに状況整理するのが定石だって誰かさんが言ってたよな
鈍くなっている頭を回転させてここにくる前の記憶を思い出そうとするが結果はてんでダメだった。
おいおい、なんでこんな綺麗に記憶が抜け落ちているんだ。怪しい組織に薬物でも盛られたのか
ここに来る直前までの記憶は全くないが、それ以前の記憶はある。
そんなこんなで思考を巡らせていると段々と暗闇に目が慣れてきた。それに辺りが少し明るくなった気がする。ただ明るいと言ってもまだまだ暗いことには変わりない。
周りにはなにも無いと思っていたが目を凝らしてみると大小さまざまな箱が置かれていた。
なんだよこれ、ドッキリですか。見た目は完全にミミックの宝箱なんですけど…
他に手がかりがないので恐る恐る箱に近づいてみる。よく見ると箱たちには色もついていた。赤、緑、オレンジに白と黒それに青やグレーなど様々だ。
えぇ、開けないとやっぱりダメかなあ
ビクビクしながらもゆっくりと箱に手のばす。箱に触れそうになったとき後ろに気配を感じて手が止まる。
やぁやぁ
ひやぁぁぁ!
突然背後から声をかけられて身体が飛び跳ねると同時に自分でも聞いたことのない情けない声が出てしまう。
とっさに後ろを振り向き、声をかけてきた人物の顔を見て唖然とする。
なんとそいつは自分と全く同じ顔だった。
ぷぷ、驚きすぎだよ
自分にそっくりのそいつは俺の反応をみて楽しんでいた。俺はというと訳のわからない状況にさらに意味がわからない出来事が重なって固まっていた。
ど、どちら様ですか、、?
思考が混乱している状態で出てきた言葉はどちら様だった。おそらく他の人でも同じことを聞くだろう。
君は僕と初めましてだね。僕は君の潜在意識だ。ちなみに君は顕在意識だよ。
意味がわからなかった。もちろん言葉の意味は分かっている。顕在意識は普段起きて脳が覚醒し活動している時の意識で、潜在意識は寝ているときなどの自覚がない意識。ちなみに無意識は潜在意識のうちだ。
あ、わかった。これってもしかして明晰夢?
明晰夢とはちょっと違うかな。ここは君と僕の精神世界だ。意識よりさらに深い心の領域。ここよりもっと深く行くと魂がある。
魂から心が生まれて心から僕ら意識が生まれる。
そうなのか、それでなんで顕在意識の俺がここにいるんだ
もう一人の自分、俺の潜在意識だというそいつは哀しげでどこか悔やんでいるかのような顔で静かに俺に言ってきた。
君はね自殺したんだ
少し明るくなっていた空間が再び暗くなった。
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