第2話 名前

翌日

俺たちは

窓越しに会話をした


朝、目が覚めると

直ぐに窓を開け

寝癖を触りながら


「おはよう」


彼女は、早起きなのかな?

ちゃんとしたカッコウで


「おはよう」


と返した


昼、

彼女が描く絵を眺めながら

俺は好きな漫画や聴いている曲の事を話した

勝手にベラベラと話しかける俺を

嫌な顔一つせずに

にこやかに話を聞いてくれた


夜、

声を潜めながら


「おやすみなさい」


と言いあって

お互いにカーテンを閉めた


静かな彼女のリアクションは

本当に小さいから

俺との会話で退屈に思ってしまうのが怖くて

俺はずっと話していた

ふと思うと

彼女の方から

彼女にまつわる話を聞けていなかった

それどころか

名前も聞いていないことに気が付いた


出会って3日目


「ねぇ、名前おしえて」


アイスクリーム片手に聞くと

彼女は


「ハル」


と一言


「ハルちゃんって言うの?」


そう聞くと

頷いて


「ハルでいいよ」


そう言って微笑んだ


「俺は尚(なお)って呼んで」


やっと名前が聞けた

俺はうれしくて 

だらしないほどの

笑顔になった


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