06
法廷
マリアは証言台に立っている。
兵士(男)ふたりはマリアの左右に立っている。
兵士1(男)「潔く罪を認め司祭様に許しを請えば大目に見てくれるかもしれんぞ。お前も聖職者としての生活があるだろ。それを手放したくないのなら少しは賢く振舞え」
裁判官(男)、司祭(男)、陪審員(男)三人が登場。
裁判官(男)「これより罪人マリアの裁判を執り行う。罪人マリア、司祭様に強姦されたと嘘を町中に吹聴し、司祭様の名誉と人格を甚だしく
マリア「違います。私は罪人ではありません。被害者です」
陪審員(男)たちがざわめく。
裁判官(男)「静粛に。罪人マリアよ、私の質問に“はい”か“いいえ”だけで答えないさい」
マリア「嫌です」
陪審員(男)たちがざわめく。
裁判官(男)「静粛に。罪人マリア、私の言葉に従いなさい」
マリア「私は……ノー様の
裁判官(男)「ほう……ノー様の
司祭(男)「いえ、マリアはまだノー様の
裁判官(男)「罪人マリア、司祭様に告白したことは事実か」
マリア「……はい」
裁判官(男)「罪人マリア、侮辱罪と国家反逆罪に問われている。間違いないな」
マリア「いいえ」
裁判官(男)「罪を認めないのであれば、この法廷で無実を証明せよ、罪人マリアよ」
マリア「一昨日の夜、私は司祭様の部屋へ訪れました。ミサの後、大事な話があると言われたので。司祭様は私がノー様の
裁判官(男)「部屋には司祭様の他に誰かいたのか」
マリア「いいえ、私と司祭様以外誰もいませんでした」
裁判官(男)「ならばいくらでも話をでっち上げられるのではないか」
マリア「……そういえば……部屋の外に、確かアーサーが、修道士のアーサーが……アーサー修道士をここへ呼んでください」
司祭(男)「そんなはずはない! あの夜、部屋には私とマリアしかいなかった。外を確認したが誰もいなかった」
陪審員1(男)「司祭様を支持します。記憶がなくなった罪人に正しい証言ができるはずがない」
陪審員2(男)「そうだ。仮にだ、そんなことはあるはずはないが、罪人が強姦されとして、
陪審員3(男)「そうだ! その通りだ。女はすぐ被害者面をするから困る。いい迷惑だ」
陪審員(男)たちが騒ぎ立てる。
裁判官(男)「静粛に。罪人マリアよ、反論はあるか」
マリア「アーサー修道士をここへ呼んでください。彼ならあの日、なにが起きたのか詳しく知っているはずです。お願いします」
裁判官(男)「司祭様、アーサー修道士をここへ証人として喚問できますかな」
司祭(男)「先ほど申し上げました通り、あの日、私とマリアしかおりませんでした。アーサー修道士を証人としてお連れすることはできますが、彼は修道の身、罪人マリアの戯言に付き合わせるわけにはいきません」
陪審員3(男)「司祭様を支持します。罪人の証言は信頼に値しません。無実を証明したいのであれば身をもって証明すればよい話。罪人はまがいにも修道女だ。この女が処女であれば有罪、処女でなければ無罪。これなら誰もが納得いくはずです」
司祭(男)「まっ、待て待て! それは無駄なことだ。マリアは……そうだ思い出した。マリアは娼婦の子、マリアを譲り受けた私は知っている。娼婦の娘は生まれながらにして処女ではない。神に使って断言する」
裁判官(男)「異議のある者は……いないな。罪人マリア、身をもって無実を証明せよ」
マリア「……どうして……どうして私にそんなひどい
裁判官(男)「己で証明できないのであればこれ以上の審理は無用。陪審員の審議に移る」
陪審員1(男)「裁判官、審議の時間など必要ありません。罪人マリアの罪は覆らない。火あぶりの刑を求める」
陪審員2(男)「私も同じく、この魔女には火あぶりの刑がお似合いだ」
陪審員3(男)「同じく。火あぶりの刑を求刑する」
裁判官(男)「陪審員の求刑通り、罪人マリアを侮辱罪および国家反逆罪で火あぶりの刑に処す。明日の正午、町の広場で刑を執行する! 以上!」
マリアは愕然とし膝から崩れる。
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