第7話

「おい。いきなりそれはないだろ。なんだってそんな」


「俺はパラレルミリタリーをやめます」


「は?」


「仕事の合間にやってたんです。パラレルミリタリー。その仕事も、そろそろ大詰めで。終わったら、やめる予定でした。せっかく会ったし、いい機会なのでここでお伝えしようと」


「おい待てよ。じゃあ、わたしは、どうやってパラミリーを」


「最後にすればいい」


「そんなばかな」


「じゃあっ」


 彼の声。

 やさしい声ではない。

 大きな。

 迫力のある。

 男の声。


「あなたが胸を引き絞ってあざを作るのを、黙って見ていろというのかっ」


 彼。はっとした顔。


「すいません。つい大きな声を」


「なあ。おい」


「次で最後です。次で最後。お互い、普通の日常に戻りましょう。おかしかったんだ、お互いに」


「何言ってんだよ。あんなに楽しかったのに」


「俺は。死ぬためにあのゲームをやってたんです。あなたがときどき殺してくれるから、それが楽しくて。仕事ではなかなか死ねなくてね。だからなんです。ごめんなさい。あなたの人生を、ほんのすこし、歪めてしまった」


 そう言って。

 彼は出ていった。

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