潜入先でも書類たち
@toukawa
第1話 書類仕事に追われる男
天魔人戦争 人界,魔界、天界における3大戦力が衝突し起きた戦争。何を火種にして起きたかはっきりとした詳細が判明しておらず未だに戦争は進んでいる。それぞれの戦力は拮抗しており最前線では常に睨みあいが起きている。
「何がきっかけで起きたのかわからない戦争して何の意味があるんだよ。」
俺の名前はイルス・ロウリンス 黒髪黒目の15歳
魔界において幹部に与えられる魔将の称号を授かったものではなく魔将の座に席を置いているある人の副官だ。今日も書類とにらめっこし日々を過ごしている。なぜこんなことになっているかというと俺の上司の魔人将様の書類仕事までやっているからだ。
「人界も魔界も天界のやつらもみんな何のために戦争してんだろ。
戦争終わんないと俺は一生、書類仕事から解放されねーよ。頼むよー。」
終わらない書類に愚痴をこぼしながら机に体を預けていると扉を叩く音が聞こえた。
視線を扉のほうに向けてみると、その視線の先には端正な顔にくすみが全くない鮮やかな金髪にアメシストのように輝いた瞳が不敵な笑みを浮かべこちらを眺めていた。
「今日も書類仕事がんばっているかい。」
「おい分かりきったことをいうな。副官についてから俺がこの仕事をやっていないときがあったか、いやないんだよ!!!!」
「そんなの分からないじゃないか。書類仕事から解放されている未来もあるかもしれないよ。」
訪れるかも分からない未来について爽やかな笑みを浮かべ語っているこいつの名前は
ナラル・ラスレル 15歳
今魔将の座に席を置く魔界軍の幹部である。一応、位は俺より高いのだが同年代ということもあってこうして砕けた言葉で話せる仲だ。
「そんな未来があるなら早くこい分岐ルート。」
「まあ、勿論その分岐ルートには今よりもっと書類が増えることになるルートもあるかもしれないけどね。」
と爽やかな笑顔で楽しそうに喋っている。だが待ってほしい。一瞬、俺も爽やかスマイルに騙されるところだったが俺は今、こいつの手のひらの上で遊ばれているのではないのか?一度は明るい未来が待っていると言われ僅かながらに期待を抱かされた。だがすぐに僅かながらの期待を砕いてきた。うん、完全に遊んでやがるよ。俺が書類仕事で疲労していなかったら今すぐあの爽やかスマイルに拳を叩きこんでいたところだ。危ない。危ない。
「お前って性格悪いよな。」
「僕にとってそれは誉め言葉だよ。ありがとう。」
今までで一番の笑顔が飛び出してきたわ。これがドS魔公子の異名を持つ男、俺とは立っている場所が根本的に違うのだと理解させられる。だが悔しいことにこいつはモテやがる。この爽やかスマイルで何人もの女の心を射止めてやがる。心の壁を貫通する効果でもついているのか?
ぜひとも俺にも付与してほしい。
「そんなことより魔王様からの招集命令だよ。」
「そんなことじゃないんだよ!分岐ルートは今の俺にとって何より大事だろ!」
「はいはい、その話は今置いといて。」
こいつ俺にとって分岐ルートがこれから生きていくためにどれだけ大切かを全く理解してないわ!もう書類とにらめっこしたくないんだよ!
するとナラルは俺の顔を見ながら何かに気づきフッと笑みを浮かべた。 なんだ?の顔になんかついてんのか?
付いてて笑ったなら最低やろうだ。絶交だわ。
「いや、もしかしたら分岐ルート来たんじゃないかい?」
おう、一瞬でも疑った俺を許してくれナラル
「えっ、今の話のどこにそんな要素あるんだよ。」
あくまで何事もなかったように俺は平然とした態度でふるまった。
「招集命令だよ。イルスは今、魔王様に呼ばれているわけだよ。魔人将じゃない副官の君をだ。」
確かに魔界の幹部である魔人将を招集することは特別珍しいことではない。だけど副官を招集するなんて俺は聞いたことがない。つまりこれは分岐ルートの上に立ったといっても過言ではないな。
「まあ、君の上司がやらかして書類仕事がこれまで以上に増えるよていう死刑勧告かも知れないよ。」
と俺の未来の地獄ルートを想像し耐えきれないとばかりに「ぷっ」と吹きだすのを我慢してこちらを見ていた。
また僅かな期待をちらつかせて砕きやがった。やっぱり最低野郎だ、さっきの俺の謝罪を返しやがれ。
こいつ意識的にやってるんだろうけど、どういう子育てをしたらこうなるのか親の顔が見てみたいね!いやどちらにしてもこいつが超が付くほどのドSでいじることが大好きだということがわかった。人の不幸が蜜の味ってか、くそが!
「まあ、それは冗談だよ。僕も呼ばれているからね。」
「だったら今の前の会話いらないだろ!」
「いやーなんかどういう反応するのか気になちゃって。
ごめんね、てへ。」
このドSめ、今までその顔面の変化で本来なら怒られるか文句の一言をもらうはずの状況化を乗り越えてきたんだな。だが俺は騙されないぞ。
世の中そんなに甘くないんだよ。
嘘だ、本当は少し揺らいでしまった。俺はなんて単純なんだ、、、、、、
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