第四十二話:母を訪ねて⑭/空と水の境界で
「………………っ?
気が付いた時──スティアは見知らぬ空間にいた。
「一面に広がる青空と、地平線まで広がる鏡みたいな湖、あたし何故か裸だし……なんか身体が発光してるし……。もしかして──また死んだの……?」
薄闇に包まれた森の中で幼い少女の姿をした“
「身体の傷も無い……眼も
辺りを見回し、自分の身体をしっかりと観察し──スティアは、自分が
(でも、なんだろう……不快な感じはしない。むしろ……晴れやかな、爽やかな気持ちになってくる気が……? 屋外で裸になってるからかな……いや、あたし
けれど、その空間はスティアにとっては
「気持ち良い……こんなに気持ち良い場所、生まれてはじめて……」
深く深呼吸をして──肺に
「
ずっと
「どうしよう……取り敢えず、
気になっていた──現実の自分がどうなっているのか、あの戦いがどうなったのか。行かないで、此処に居よう──と、後ろ髪を引っ張るように引き留める“本心”を必死に抑えて、スティアは少しずつ足を踏み出していく。
ちゃぷん、ちゃぷん──湖に足は沈まず、つま先と
「誰か居ないの……? フィーネ……あたし独りじゃ寂しいよ……」
スティア=エンブレムと言う少女は“孤独”を恐れている。誰かと居たい、誰かと繋がっていたい、誰かを感じていたい、誰かに愛されたい──故に彼女は、心穏やかになれるこの場所に居ても、真に心が安らぐことは無かった。
だからだろうか──、
「もうやめて……おねがい……もう、誰も傷付けないで……」
────
「誰……? 誰か居るの……?
爽やかな風と透き通る水の爽快感に
不安に満ちた、悲しみに満ちた、孤独に満ちた──この
「何処に居るの……? ねぇ、あなたは何処にいるの……!?」
足が無意識に速くなる、“バシャバシャ”と踏みしめた
「──────居た……あの子だ……!」
そして、見果てぬ
だだっ
「あなたは……誰? どうして……
遠くに見える少女に声を掛けながら、スティアはゆっくりと彼女の元へと歩み寄っていく。少しずつ、少しずつ──孤独に怯える少女は、孤独に
「ねぇ……あなたは──誰なの?」
水色の髪の少女の前に立ち、スティアは恐る恐る語り掛ける。不安、恐怖、焦燥、孤独──自分の
「……………………お姉ちゃん」
そのスティアの震える声に
「あなた……まさか……ッ!?」
「──────ヤーノ……!!」
少女の姿は、少女の顔は、間違いなくスティアが
「お姉ちゃん……ごめんなさい……! わたしのせいで……ひどい思いをさせて……ごめんなさい……!!」
そんな美しい“
散々に自分を痛ぶって、右眼を
「あなた……まさか、本物の……ヤーノ……?」
スティアの問い掛けに少女は無言で首を縦に振る。そう──彼女こそが“人間”の『ヤーノ』。母との再会を願い、スライムと
「じゃあ、
目の前のヤーノの正体を知り、そこで
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