久しぶりに会った二人の幼馴染が、忍者と魔女になっていて迫ってくる

青キング(Aoking)

七年ぶりの再会

 桜の花びらが舞い散りきっていない高校二年の始業式の日。

 武田将吾は人間の縁のゆるぎないことを実感していた。


「春佳……」


 同じクラスの転校生として黒板の前で自己紹介しているのは、清楚な美少女へと変貌した武田の幼馴染である本澤春佳ほんざわはるか

 栗色のショートカット、溌溂とした瞳、人当たりの良さを感じさせる明るい笑顔。


 武田と春佳は七年前の冬に武田の家族総出での海外移住に伴い、ひとたびの別れを余儀なくされて、以来互いの連絡先もわからず一度も顔を合わせていなかった。

 それがこの日、新たなクラスメイトとして再会したのである。


「本澤さんは武田君と知り合いだって言ってたよね?」


 髪の薄い臼井という担任教師が春佳に尋ねる。

 はい、と春佳ははきはきと頷いた


「じゃあ、武田君の隣でいいね。丁度、空いてるし」

「お気遣いありがとうございます、先生」


 春佳は臼井に笑顔を振るまい、嬉々として武田の隣の席へ移動する。

 武田と目が合うと、心底懐かしそうに微笑んだ。


「七年ぶりだね、将吾」

「あ、ああ」


 春佳とは打って変わって、将吾は七年もの空白のせいで幼馴染とどう接していいのか戸惑っている。



「将吾」


 その日の日程が終わってすぐ、隣の席から武田は名を呼ばれた。

 武田が振り向くと、春佳が片手を仕切りのように口に添えている。


「この後、暇?」

「……まあ」

「じゃあ、将吾の家に遊び行っていい?」


 いきなりである。

 幼馴染とはいえ七年の隔たりがあったとは思えない距離感の近さだ。

 そういえば昔もこんな感じで話しかけてきたな、と思い出しながら武田は言葉を返す。


「今、一人暮らしだぞ」

「あれ、家族は戻ってきてないの?」


 春佳と武田は互いの家によく遊びに行っていた仲だった。

 武田は親の職業の関係で日本を離れる際に当時住んでいたマンションの一室は解約して、現在は別のマンションに住んでいる。


「三年前に俺だけこっちに戻ってきたんだ。母さんと父さんはまだあっちで仕事してる」

「寂しくないの?」

「時々、連絡取り合ってるからな」

「私とはしてなかったのに」


 春佳が唇を尖らせた。

 武田は苦々しげに言う。


「仕方ないだろ。あの時はまだ海外から連絡する方法知らなかったんだから。それにお前だって何も言わなかっただろ」

「そりゃ、あの時に将吾と私は約束したからね」

「約束?」


 春佳の台詞に武田は疑問を覚える。

 約束をした記憶がないのだ。


「約束なんてしたか?」

「したじゃない。将吾、忘れてるでしょ?」


 春佳はムッとした顔になる。


「七年前の話だからな」

「もう、大事な幼馴染との約束を忘れるとか考えらんない」

「ごめん」

「お詫びに将吾の家でゲームね」

「わかった。それぐらいで詫びになるなら」

「よしっ、決まったならすぐ行くわよ」


 そう言ってスクールバックを持って立ち上がった。

 昔から春佳に引っ張られてるな、と思いながら武田はヤレヤレの表情でカバンを手に取った。

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