生きる屍のその先に

不死裂@秦乖

第0話 プロローグ

あぁ……死ぬなこりゃ……


1人刀を振りながら死を感じる。

周りには仲間の死体。動き回っているだけのただの死体があった。

両足がない死体はズリズリと地面を這いながら着実に俺の方に向かってきていた。


(ハァ……ハァ……)


もう何時間刀を振っているだろうか。汗できている服が肌に付きまとって気持ち悪い。


(しゃーない……一回引くか……)


右手に持っていた刀を大きくひと振りし、そのまま走る。

少し走ると近くにコンビニがあった。

もう地球に残った数少ない人間に神が味方してくれたかもしれない。

なかに足を踏み入れると聞きなれたBGMが店内になり響く。最後まで理由は分からなかったものの何故か電気は供給され続けてたな……

なかに入ると、床は商品で散らかりまくっていた。

しゃーない。レジに座るか。どうせ誰も見てないし、いいでしょ。

軽く飛び上がり、レジの上に腰かける。


「ふぅ……」


ようやく口から言葉がでてくる。

正直かなり疲れた。右手の感覚はもうほぼない。何日も刀を振り続けたことが原因かなぁ……

ふと顔を上げると、通路の奥にお酒コーナーがあるのが見えた。


(そういえば何ヵ月か前に梅酒のんだな……あれは美味かった)


味を思い出してしまい、喉が鳴る。

どうせもう生きて帰れはしないんだ。最後くらい飲みたいもの飲んでもバチは当たらねぇよな。

ゆっくりとお酒コーナーへ向かい、梅酒を1缶取り出して喉に流し込む。

未成年飲酒を盛大にかましていると、外から無数の唸り声が聞こえてきた。


「チッ、早いな。もうちょい休ませろよ。こっちはもう腕がボロボロなのによ。」


片手に持っていた缶を投げ捨て、もう一度奴らの前に立つ。


「さぁ、バッドエンドを始めようか。」


道路のど真ん中を再び走り、1人2人と首を落としていく。


「ああぁぁぁぁぁあああああ!!!!」


咆哮を轟かせながら、前へ前へと進んでいく。もういつ死んでも悔いはない。


(ヤベッ!)


右足を冷たいものに捕まれる。

右足をブンブン振り、引き剥がそうとするも、思った以上の力の強さになかなか離されない。


(どうせ死ぬなら迷惑かけない形で死んでやる!)


俺は刀を大きく360°振る。


「お前らぁ!!これが俺の死に様だ!!諸君!!また何処かで!!」


俺はそう叫ぶと喉にめがけて一気に刀を突き刺す。

鮮血が舞い、ドサッという音と共に俺は地面に倒れた。


(お前らの敵……取れんかった。すまねぇみんな……)


視界がどんどん暗くなる。

奴らは俺が死んだことが分かったのか、俺に背を向けてどこかへと歩いていくのがうっすらと見える。

もう声を出すことすらできない。

ヒューヒューと乾ききった呼吸をしながら、俺はこの現象が起きたあの日のことを思い出す。


あの日。俺たちの運命がかわった。

そう。忘れもしない2020年11月31日から。

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