出雲編
第1話 出現
奴らは昼時に突然現れた。青白い肌、死んだような目、異常に肥大した犬歯、おまけに、対話が出来ず唸るばかりの怪物。通称 “ゾンビ”。
奴らが現れたのは2020年11月30日の午前11時ちょうど。
その時、俺たちは中学校で授業を受けていた。当時中学2年だった俺たちはこんなことになるなんて思ってもいないまま。
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眠い。理科の先生の声は異様に眠気を誘う。フルフルと頭を振った後、周りを見渡す。すでに半分以上の生徒が眠っているようだ。
ここ、島根県出雲市にある
特に英語、数学に力を入れているということで有名だ。が、実際行くとそうでもなく、特に変わった様子はない。
そんなぼったくり中学校で一年半以上を過ごしたある日。時刻は11時3分前。秋の暖かい日差しも差し込んで教室が温まり、みんなが居眠りをしている
「おーいお前らーいい加減起きろー」
科学の先生がイラついた声で呼びかける。
呼びかけで寝ていた殆どのの生徒が目を覚ましたが、俺の隣にいる
「おーい歩ー起きろー」
「地球を守るために……宇宙と交信して……るんです」
バシッ
俺が叩くとようやく頭を重そうにあげ、不満そうな顔をこちらに向けている。
「宇宙人との会話は終わったか?」
皮肉を効かせた言葉に歩はいつものように返す。
「はぁ? 何言ってんの
「こいつw」
歩は理科の授業があるたびに寝て、こうして言い訳をするのだが、最近ネタ切れなのか言い訳がオカルト方向に進んでおり若干起こすのが楽しみになってきている。
「歩も起きたな。じゃあこの式を使って圧力を求めてみろ」
「えーっとその式で解けば⒈2Paです」
「え? なんで、そんなはずはない」
予想外の答えだったのか、先生が混乱している。
「でも本当は12000Paです。先生、その式の㎠の所間違ってますよ。正解は㎡です。」
「あ‼︎ そうだ‼︎ ごめん!」
先生の大声で余計に目が覚めた歩は、やはり不満そうな顔をしていた。
「えーっと……とりあえずプリントの答え配るから、丸つけして。」
先生が教卓の上の資料を漁っているが、一向に答えのプリントが出てこない。
「多分……高校の職員室に置いてきた。ちょっと取りに行ってくる!」
そう言って先生はバタンと扉を開けると走り出した。
生徒には散々廊下は走るなと言っているのに、腕を振って走っていった。
控えめに言ってガチだった。
全力で走り出す先生を横目に、歩はまた寝始めた。
まぁ先生が来るまでは寝かしてやろう……どうせすぐに先生は戻ってくるんだし……
だが、5分待っても先生は帰ってこなかった。
「おい…先生遅くね?」
「なんで? プリントの束でしょ?」
クラスが次第にうるさくなり、「誰か行けよ」なんて声もあがり始めた。
「……はぁ……俺と
よほどめんどくさいのだろうが、さすがは学級委員長、それなりに責任を感じているようだ。
一方巻き込まれた清水は、不機嫌そうだった。
しかし、先生を呼びに行くこと自体には気乗りしないようだが、日向と授業中にどこかに行くことには乗り気みたいだ。
2人は職員室に向かってデート気分で歩き出す。
2分後、2人は教室に戻り、先生が高校の職員室に行っていることを知らせた。
日向によると、先生はプリントの答えを高校に置いてきたらしい。
しかも厄介なのは、どこにいるか分からないことだ。
先生は他の先生に行き先を伝えず走り出したようで、高校のどこにいるのか分からない。
一応、高校の職員室に電話してみたが、繋がらなかったみたいだ。
俺たちは雑談をして待つことにした。
10分後、やはり帰ってこない。
俺はバシッと歩を叩いて話しかける。
「ちょい、見に行ってみない?」
「はぁ……めんどくせ、なんで高校まで歩かないといけないの……何センチあると思ってんの?」
「距離はわからんけど別にそのくらいいいだろ。なんかあったら手伝えばいいし」
「うーん……まぁいいや……貸し1ね。」
こいつ……頼めばなんでも貸しを作ろうとしてきやがる。まぁ、今回ばかりはしゃーないか……
「ん。わかった。貸し1な。」
「交渉成立だな。」
歩はニヤッと笑うとガバッと椅子から立ち上がった。
顔は眠そうだがどうやらちゃんと行ってくれるらしい。
「しゃー行くかー」
そう言って教室を出ようとした時、後ろから「ちょい!まって!」と言われ、振り向くとそこには野球部キャプテン、
「ん? どうした? 俺と歩はただ先生の様子を見に行くだけだけど?」
「おう! それは知ってる! 俺もついて行ってもいいか?」
「ま、まぁ……ついてくる分には全然構わないけどよ……」
「サンキュー」
真柄はヘラヘラとしながらそう答えた。
クッソ…俺や歩は陰キャだからこういうキャラは眩しい…
結局、俺と歩、それと真柄の3人で高校の職員室に行くことになった。
中学校を出て、高校の敷地の中に入る。
「うーん……なんかさ、いつもより人気がなくない? いっつも剣道部の道場にいる先生もいなさそうだし……」
「たしかに……美術棟にも人のいる気配がないし……何より不自然なのは監視カメラに俺たちが映ってるのに誰も俺たちのところに来ない所よな。」
歩はこういうところで勘が鋭いから頼りになる。
でも、たしかに監視カメラに映ってるのに先生が来ないのは不自然だ。授業真っ只中のこの時間に生徒3人が高校を彷徨いていたら必ず先生が駆けつけるはずだ。
「うーん……とりあえず職員室に行ってみるか……何かあったのかもしれないし。」
そう提案すると二人は縦に首を振った。
俺たち3人は不自然だと思いつつも高校の校舎に入る。するとそこには異様な光景が広がっていた。
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