第9話「プロの料理人」

 

 冷蔵庫の中にはそこそこの食材が入っていた。その中から、とりあえず作れそうなものを作ろうかな。

 何作れるか考えていたら、牛丼か冷しゃぶサラダを作れることに気づいた。皆に牛丼か冷しゃぶサラダ、どっちが良いか聞いたら満場一致で牛丼だった。理由はわからない。

 



 料理中、側に南さんが来た。他の人はリビングのテレビにゲームをつなげて大乱闘なんとかクラッシャーズしてる。俺もやりてぇ。


「へぇ〜、男子って料理できないものなのかとばかり思ってたから意外だなぁ。結構ちゃんと料理してる」


「ありがとうございます。一人暮らししてたから勝手に身についた能力ですよ」


「なるほど、一人暮らしの人は自然に料理もできるようになるっと(書き書き)」


 と、その後ろから大乱闘で負けた様子の椿さんが来た。けど………


「椿さんはさっきから何故メモる?……それと別に全員が全員一人暮らししたら料理がうまくなるとは限らないですよ。というか、料理できるようになる方が少ないまで言える」


「へぇ〜。それはもしかして、インスタント系のものを買ってきて食べるのが増えるからかしら?」


「そういうことです。現に俺もたまにインスタントラーメン買ってきて食べてましたから」


「なるほど、深奈君は料理をしていた。でもたまに面倒くさくなって、インスタントラーメンも食べていた、っと(書き書き)」


「だからなんでメモる?」


 何かこれ以上口にして話すと色々めんどくさくなりそうだから黙っとこ。




 それから約十分後、出来上がったのでみんながいるリビングのテーブルに置く。


「出来たんで食べてください。口に合えば良いんですけど………」


「おっ、出来たのね。どれどれぇー?……………っ!?」


「…………お、美味しそぉ……!」


「早く……!早く食べましょ……!」


 皆早く食べたそうにしてる。大人しい雰囲気をまとっていた美坂さんも目が星になっている。嬉しいもんだなぁ。

 でも約一名、顔に早く食べたくてたまらないと書いてあるけどそれを隠そうとしているものがいる。


「ま、まあ見た目は合格点ね。見た目は。でも本当に大事なのは味よ、味。見た目だけいいのを作るなら誰でもできるわよ」


 相変わらず人に料理してもらったにも関わらず文句を言う七瀬さん。

 本当はさん付けしたくないけど、ここに住むことを許してくれたし、そのくらいはしてやろうということで付けてる。


「まったく……。ご飯作ってくれたんだからそんなこと言わないの」


「うぅ……」


「まあまあ、とりあえず食べてみてくださいよ」


「分かってるわよ!あんたに言われなくても食べるわよ!」


 なんでそんな怒ってるんだよ……。

 …………ああ!これってあれか!漫画やアニメに良くあるツンデレってやつか!


「「「「いただきます!」」」」


「どうぞ」


 …………………この食べてる間の沈黙が何か緊張するなぁ。どうだろうか。

 

「……ゴクッ………………皆さんに……というか深奈君に大事な報告があります」


 羽咲さんが急にガチトーンで喋り出した。


「な、なんですか?」


「これからは…………深奈君が料理を作っていくことが決定しました!!!!!!!」


「「「「「うんまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 なにそれ!?いや、美味いって言ってくれるのは凄く嬉しいけど……………っ!


「何これ。プロなの?あんたもしかしてプロの料理人だったの?(はむはむ)」


「やばいですやばいです!手が、手が止まらなくなりました!(はむはむ)」


「こ、これは………虜にならないわけないわ………(はむはむ)」


「(はむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむはむ)」


「(ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ)」


 三人ほどは美味しく食べてるのが分かるが、目を星にした少女と人格が変わった少女は気が狂っているのがわかる。


「深奈君!これ本当に美味しいよ!Why didn't you tell me?(なんで教えてくれなかったの?)」


「いや何言ってるか分からんて!!」


 急に部屋が暑くなってきた。皆夢中に食べてるから気付いてないけど、この部屋多分さっきより7℃は上がってるぞ。真夏かよ。


「美味しく食べてくれるのは嬉しいですけど、喉詰まるかもなのでゆっくり食べてください(はむはむ)」


 ……ゴクッ。…………だめだ、聞いちゃいねぇ。

 今なら何言っても許されそう。(ニヤ


「短足メス豚どもガハッッッ!!!!!」


「……………美味い飯がアンタの血で不味くなるでしょうが………。おかわりよこしなさい………?」


「……………はい……」


 なんだよ今の!見えなかったぞ!………早くおかわり持ってこないと本当に殺されそう………。目がやばい。



 それからは特に変わらず、皆美味しい美味しいと言いながら食べてくれた。おかわりの分が無くなったとき、皆悲しい顔になってた。

 いや俺おかわりしてないから。おかわりしようとしたら無くなってたから。悲しい顔になりたいのこっちだから。




 まあ、そんなことがあって少しイラッと来たことはその後にもあった。でも、このメンバーとなら今後も仲良くやっていけそうな感じがした。


 今は自分の部屋で荷解きをしてるけど、これ今日だけでは終わらんな。

 そう。実は、部屋は完璧に前のまんまだけど、新しい制服や元々部屋に置いてた本や飾り物には、運ぶ時傷がつかないよう舗装するいわゆるプチプチがついているまんまなのだ。しかもその上から凄く固い紐で固く縛られていて、それを解くのに時間がかかっている。

 

 (なんでこんな固い紐でこんな頑丈に絞めたんだよ……)


 面倒くさいと思いながら解いていたその時、ドアがゆっくりと勝手に開いて、人間が中に入ってきた。


「……………………」


 ………俺は急なことだったから、ベットに潜り込み寝たふりをした。








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