日本人は魚好きだから、クトゥルフ神話もあまり怖がらない。という話を聞いたことがある。
でも魚ってよく見ると案外不気味だ。死んだ魚のような目という言葉もある。あの真っ黒な目は確かに異様な感じだ。
魚は痛覚が無いなんて話もあって、だから食べていいなんてベジタリアンの人もいるらしい。それも我々と全く違う生命のようで、よく考えると怖くはないだろうか。
哺乳類ならだいたいの人がかわいいと思うだろうし、昆虫くらいになると機械じみていて、ホラーというよりパニックものの雰囲気がある。
となると不気味な生き物の筆頭は、爬虫類か魚類になる。妖怪や怪異の話でも、人を殺すようなおどろおどろしいものは、蛇とか魚が多い。
意志があるように見えるが、何を考えているのか分からないのが怖さの原因のような気がする。
この作品に出てくる怪異も、何か目的があるような気はするのだが、それが何なのかははっきりしない。分からなさ、未知なるものであることが恐怖つながり、その身近さもあって、本当にありそうな物語に仕上がっている。
魚に対する知識も、ホラーの展開によく生かされていて、非常にクオリティの高い怪談話でした。