初恋リベンジ!

きゅうとら

第1話 初失恋

「振られた…」


 僕はポツリと呟いた。



 僕、天野新あまのあらたはついさっき幼なじみに告白して振られてしまった。


 告白した相手は七海ななみさくら。

 まあ一言で言えば完璧少女。

 勉強は常にクラスのトップに君臨し習い事のテニスでは全国大会に出場するほどのスーパー小学生だ。

 社交的で各クラスにさくらのことを好きな人が必ずいるくらいのモテ方をしている。


 対する僕も全然モテない訳ではなかった。

 毎年バレンタインでチョコを二個もらえるくらいには、まあまあな顔をしていると思っている。

 そのうちの1個はさくらからの分なのだが。

 その他はこれといって特筆すべき点は自分では見つけられないのだが自分ではそういうものだろう。



 僕達二人は同じ日、同じ病院、同じ病室で生まれた。

 偶然にも家が近所で物心ついた時には自然と一緒に遊んでいるような仲だった。そういうこともあり、当たり前のように幼稚園と小学校は同じだった。


 そんな僕がさくらへの気持ちに気づき始めたのはつい最近の出来事だ。

 いつものように一緒に帰ろうとした時、同級生の男子数人から冷やかされたのだ。


「お前らいつも一緒に帰ってるよなー。付き合ってんのー?」


「そんなんじゃねえよ!なんとも思ってねえからこんなやつ!」


 反射的に出たその言葉に悲しそうな顔をしたのは隣にいたさくらだった。


「ごめんね…」


 さくらはそう言い残し走って帰ってしまった。

 僕はその時した行動にすごく後悔した。なぜあんな事を言ってしまったのだろう。本当はそんなこと思ってなかったのに。


 家に着いてからも頭の中はさくらのことでいっぱいだった。

 明日会ったらなんて謝ろう。もしかしたら今まで通りに接してもらえないかもしれない。

 そんなことを考えていると、いてもたってもいられず家を飛び出した。


 さくらの家の前に着くとドアの前で座っている女の子の姿があった。


「さくら?」


「なんで新がここに?」


 そう言いながら彼女は驚いた表情でこちらに寄ってきた。


「帰りの時のことを謝りたかったんだ。あれは本心じゃないんだよ。ただ売り言葉に買い言葉で…」


「わかってるよーそんなことくらい、 ただちょっと悲しかったなー。まさかあんな事を新から言われるなんて思ってなかったからさ」


「だからごめんて、からかわれて恥ずかしかっただけなんだ」


「もういいよ。そのかわり明日からも一緒に帰ってね?」


 彼女は笑いながらそう言い残し家の中に消えていった。


 僕はその笑顔で初めて気づいたんだ。

 好きってこういう気持ちなのだと。


 翌日は学校の帰りが楽しみで仕方なかった。なんせ好きな人と二人で帰ることが出来るのだから。


 校門を出るとまた昨日の男子達にからかわれた。


「また一緒に帰ってるよ。ヒューヒュー」


 あいつらか。まあいい。昨日の僕とは考えが違うんだ。


「勝手言ってろ。一緒に帰りたいから帰ってるだけなんだから」


 そう言うとさくらが笑顔で嬉しそうに呟いた。


「ありがとう」


 かわいい。とてつもなくかわいい。

 なぜもっと早く気づけなかったんだこのかわいさに。

 そう思うのと同時に僕の口は勝手に動き始めた。


「かわいい。好きだ。」


 え?僕今なんて言った?あれ、もしかして告白しちゃった?


 恐る恐る顔を上げて見てみると、そこには顔を真っ赤にして俯くさくらの姿があった。


「いや、あの、そのーこれは…」


 慌てて言い訳しようとする僕にさくらは言った。


「新のことは好きだけどそういう好きじゃないの。ごめんね…」


 そう言うとまた昨日と同じく走って帰ってしまった。


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