第25話 戦の女神、降り立つ

 さぁ、反撃開始だ。ヘスティアにエロスの矢が直撃、この影響でエロスが動揺。隙だらけだ。当然、ヘスティアも今は動くに動けない状態だ。一気呵成に畳みかけるなら今しかない。

「潤、掴まれ!エロスの元までぶん投げる」

「え、大丈夫?!」

「俺を信じろ!」

差し出された歩夢さんの機体の手を仕方なく握る。不安しかないが今はそうも言ってられない。

「うぉぉらぁぁぁ!」

機体をぶん回し、勢いよくエロス目掛け飛ばされる。多分、俺の人生の中で2度と味わう事がないだろう、もとい味わいたくない感覚だった。次はないようにしたい…。

などと考えている間にエロスとの距離が狭まる。「っ…?!人間風情が調子乗ってんじゃねぇ!」

流石にこの距離じゃ気付くよな。だけど、この距離ならやれる!

ガギン、という鈍い音が響く。

「ちっ、浅いか!」

攻撃は当たりはした、が直前に弓で剣の軌道をずらされたのだ。これにより、狙っていた箇所から的は少し外れたのだ。

「腐っても神か、今のでやれる思ったんだけどな」「この私に傷をつけた?人間が?許さねぇ、てめぇら、まとめて殺してやる!おい、ヘスティア。いつまで休んでんだ、立て。少しリミット外すぞ」

「あれは美しい私には相応しくないから好きじゃないんだけどな。仕方ないか。それよりエロス、あんたの矢効いたよ、あとでたっぷりお礼させて頂きますね」

リミット?まだ、隠し玉があるというのか。

「二人とも退がりなさい!リミットを少しとは言え外した神を相手取るにはまだ早すぎます。いいですか、これは命令です」

「どういう事だ、それ!」

「説明は後です。今は逃げる事を最優先にいいですね」メーティスさんの様子からただならぬ事態というのはよく分かる。分かるがこの状況でどう逃げろと…。

「潤、来るぞ!」

ハッと我に返った時、既にヘスティアが目の前にいた。

「戦場で仁王立ちとはなめられたものだな。我々も」

既に剣は高く上げられており自分自身の死を否が応でも直感させられた。声も出なければ動く事すら叶わず、ただ小さく震える事が俺に出来た唯一の事だった。

目を閉じ死を待っていると、カン、という高い金属音が耳を支配する。痛みも無い事を不思議に思いゆっくり目を開くと、盾が自分を守っていた。

「遅れてすまない。我が名は戦の神アテナ。よく持ち堪えてくれた感謝する」

どうやら救援が間に合ったようだ。

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