殉キョウの果てに

トム・今本

第1話 邂逅

 入学式、と聞けばみんなは新しい出会いに胸を膨らませるんだろうけど…俺にはそんな気持ちなんて微塵も無かった。むしろ、これから始まる学生生活に対して嫌気の方が勝っている。

などと思いながら電車を降り家路を急いでいた。次の駅へ走っていく電車を見ながら「俺も電車も同じ…」

そうポツリと呟いた矢先だった。耳をつんざくような轟音と身を焦がすほどの熱風が突然、吹き荒れた。立ち込める砂煙の中、かろうじて見えたのは脱線し、横転してしまった電車と爆心地と思しき場所に立っている一人の少女だった…。

 少女と目があった、あってしまった。本能的にマズイ!と感じる前に少女が目の前に飛んで来た。

文字通り、ジャンプして来たのだ。

「私達に協力しましょう。それが貴方の為です」

「お嬢さん…でいいのかな?何を協力すればいいのよ? いや、その前にアンタ何者…」

「質問は一つ、協力するのかどうか」 

「謎の爆発を起こしておいて、素性も明かさない人間に協力なんて出来ないでしょ⁉」 

「分かりました。家は近いんですか?」 

「ああ、そうだよ。歩いて5分くらいの場所だよ」 「分かりました。では、ここら一帯を更地にします」 

「お前、なに言って」

「私達には一人でも多くの協力者が必要なのです。協力出来ない、と言うのであればこちらも手段を選んでいる猶予は無いのです」 

真顔で眉一つ動かさず淡々と述べてはいるが、目は本気だ。一体、この子は何者なのだ? 

「協力する、と言えば素性を明かしてくれるのか?」

「当然です」

「………」時間にして、1分にも満たないような短い時間だっただろうが俺にとっては1時間とも思えた。そのくらい、熟考して「分かった。協力する」

「ありがとうございます。では、人が騒がしくなったので詳しい事情はまた明日話します。どうか、死なないようにお願いします」 

待て! と言う間も無く、飛んで行ってしまった。文字通り、空をビューンって……

これから何が起きるのか。それは分からないけど

どこか、胸を踊らせている自分がいた。



 

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