トン子シリーズ
青花
第1話 ニックネーム
今日、私はるうちゃんから手紙をもらった。
「家に帰ってからよんでね」
と言われた。
るうちゃんとは、中学に入学して初めて出来た友達。私は、何故か家が微妙な位置過ぎて、今まで小学校が一緒だった友達とは全く違う校区の中学に通う事になった。ていうか、今まで、あまりにも微妙すぎて、どうやら違う校区の小学校に通っていたらしい。道理で、小学校遠いなあと思っていたんだよ。が、しかーし、今回、市が調べてくれた所、徒歩五分の中学校に通う事になったのだ。
ありがとう、市の職員さん。小学校の友達と離れるのは、寂しさを感じなくもないけど、やっぱり、朝は出来るだけ寝ていたい。徒歩五分。なんて素晴らしい響きなんだろう。
もうワクワクしながら、入学式に出席したのを覚えている。
自分のクラスを確認して、教室に入って自分の席に着くと、隣の席にるうちゃんが座っていた。
るうちゃんは小柄で、ショートボブのサラサラヘアの色白の子だった。るうちゃんは俯いていて、なんとなく大人しい印象を受けた。
今日は9時間睡眠で入学式に臨んだ私。メチャクチャ機嫌が良かった。気分がHighのまま、るうちゃんに話しかけてた。
「ねえ、ねえ、あなた、なんて名前?私、夏川 奈々子。あだ名がね、トン子って言うの。トン子って、呼んでね」
るうちゃんはビックリした顔で私を見た。今、思えば、るうちゃんは突然話しかけられて固まってたんだと思う。でも、メチャクチャ機嫌の良い私は、相手の気持ちは関係なく、グイグイ話しかけた。
「で、あなたの名前は?」
「………な」
ほぼ聞き取れない音量で答える、るうちゃん。
「ごめ〜ん、聞き取れなかった。もう一回言って」
あまり言いたくなさそうにもう一度
「西川 ルナ」と教えてくれた。
「へえ、ルナちゃんって言うんだね。可愛いねえ。じゃあ、るうちゃんって呼んで良い?」
るうちゃんはビックリした顔のまま黙ってたから、ありゃ、るうちゃんは気に入らなかったのかなと思って、
「るうちゃんって駄目だった?」と聞くと
「良いよ。るうちゃんで良い」と言ってくれた日から、ずっと私はるうちゃんと呼んでいた。
そんな私達も、今日が卒業式だった。そして、るうちゃんから手紙をもらったのだった。
私は家に帰ると、るうちゃんの手紙を読んだ。
その内容は、実は小学校の時に名前のせいでイジメられていたと書かれていた。るうちゃんは、「月」と書いてルナと読む、いわゆる、キラキラネームだった。でも、それは、るうちゃんのお母さんが、なかなか子供が出来なくて悩んでた時、夢で綺麗な満月を見て、その夢のお月様に子供が欲しいです、お願いしますと祈って、1か月後にるうちゃんが出来たんだって。だから、お月様が願いを叶えてくれたと、るうちゃんのお母さんは感謝して、月の女神の名前をるうちゃんに名付けたんだって。すごく良い話しだと私は思うんだけど、その名前のせいで、名前負けとか、女神とか馬鹿じゃねと言われて、学校もあまり通えなくなったと手紙に書いてあった。
でも、入学式のあの日、私に名前を聞かれて、本当は名前を言うのが嫌だったけど、私が「可愛い名前だね」と言ってくれて、とても嬉しかった事、そして「るうちゃん」と言うニックネームをつけてくれたおかげで友達が沢山出来て、中学生活がとても楽しかった。ありがとうと書いてあった。
今更ながらだけど、るうちゃん、名前言うの嫌だったんだ。全然、気づかなかった。るうちゃん、校区外から通っていたのは、前の学校の子達と同じ中学校が嫌だったからなんだ。全然知らなかったよ。
私、結構、鈍感の塊じゃね?
でもまあ、今まで、るうちゃんに見放されず仲良くやってきたから大丈夫と言う事にしよう。
私は早速、るうちゃんに手紙を書く事にした。実は、明日、るうちゃんと遊ぶ約束をしているし、ちなみに高校も一緒。私達の縁は、ずーっと続くのだ。
手紙の最後に「トン子」と言うニックネーム衝撃だったと書いてあった。
そう、私はニックネーム通り、ポッチャリさんだ。それで、男子がふざけて「トン子」と名付けられたのだけど、平和的な話し合いの末、愛情を込めて「トン子」と呼ぶようになり、このニックネームが定着した。
今では、みんなが親しみを込めて呼んでくれるこのニックネームは私のお気に入りだ。
明日からは春休み、いっぱい遊ぶぞ!
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