第6話
ダイアナの言い方ではまるで、モニカが父に頼んでフォクシーに恋人になるように強要したと言いたげだ。
確かにフォクシーは見習いで、モニカの父は彼の上役であるが、モニカの父には見習いを追い出すような権限はないし、だいたい真面目一徹が服着て歩いているような父がそんなことに手を貸すわけがない。
「あんた、失礼なこと言うんじゃないわよ。意中のフォクシーに相手にされなかったからって」
「断られても懲りずに付きまとっていたのはアンタのほうじゃない」
モニカを庇う友人にそう指摘されて、ダイアナは悔しそうに唇を噛んだ。
モニカはぎょっとした。
(そうか。ダイアナはフォクシーのこと……)
そういえば、昨日フォクシーがいつも彼を取り囲んでいる女の子達に「恋人が出来た」と告げていたとハンスが言っていた。その中に、ダイアナもいたのかもしれない。
「モニカなんて……フォクシーに相手にされる訳ないわ! 私は騙されないからね!」
ぎろっとモニカを睨みつけて、ダイアナは背を向けて出て行ってしまった。
「なぁーに、あれ。モニカ、気にするんじゃないわよ」
「私の彼も騎士団にいるけれど、あの子は本当に訓練の邪魔だって言ってたわよ。何回注意されても勝手に入ってきてフォクシーの横でずっと喋ったりしていたって」
「フォクシーにはっきり「モニカと付き合っている」って言われても諦めないつもりかしら。しつこい女は嫌われるわよ」
皆口々にダイアナの悪口を言ってモニカを慰めたが、モニカは罪悪感で胸がずきずき痛んだ。
ダイアナみたいに、本気でフォクシーのことを好きな女の子が、モニカのせいで傷ついて泣いたのかもしれないと思うと、安易に「恋人のふり」を受け入れた自分が酷い奴に思えてきた。
(やっぱり、良くないよね。恋人のふりなんて……)
今朝、フォクシーと手を繋いで歩いていた姿も、フォクシーのことを好きな女子に見られていたらきっと傷つけてしまっていた。
そう思うといても立ってもいられなくて、モニカは教会の仕事を終えると騎士団の詰め所に飛んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます