フォークリフト教習所に行ったのに資格が取れなかった話

ニート

第1話

 フォークリフトの免許(正確には技能講習の修了証)を取ろうとして取れなかった人間なんてこの世に一体何人いるんでしょうかね?


18歳以上の99.999%以上が取得しているという普通自動車免許よりはるかに簡単と言われているほどのレベルです。


発達障害とかぶっちゃけ普通に知的障害入ってる人でも取れる普通免許より簡単なフォークリフト講習すら修了できないギリギリ健常者(一応)、それがまさにオレなんですよ!


なぜそんな誰でも取れるものがオレには取れなかったのか?


そのことについて書いていきます。


歯車は申し込みのときから狂っていた。


フォークリフト講習はフォーク一台につき最大で10人までしか参加できないため申し込みに行った教習所は、


リフトがそもそも1台しかなかったし先生も一人しかいなかったようで予定日に10人以上集まっていると受講


できなかったのだ。 当時ちょうど暖かくなってきた時期で屋外でする講習もそんなに苦になりそうにないと


思っていたのだが受講希望者が殺到していたらしく、抽選が行われそれに漏れてしまったオレは予定してた日時


より一か月近く待たされることになったのである……


それから結構待たされたものの、3月ということもあり冬から春の変わり目ということで


暖かくなっていくだろうから体調のことは心配しなくて良いかな、当日まではそう考えていた。


しかし当日は冬の寒さがぶり返してきた上に大雨だった……しかも教習予定の四日間ずっとその天気が続くという


予報……いやな予感がしてしまう、しかし教習料金を先に支払っている以上やめることは当然許されない、


お金はいかなる理由があろうとも返金しないと申込書に書かれてあったのだ。


ついに講習が始まった。


通勤や通学ラッシュを切り抜け電車で約1時間かかる会場に着いた。


まずは学科からである。


しんどい、だるい、めんどい、大雨の中どんよりとした空気で駐車場のようなところにフォークリフトが一台


止めてあるところの横にある掘立小屋のようなところで始まった授業だが、本当に退屈である。


これが約7時間、トイレ休憩と昼休みはあるみたいだがそれまでお経のような講師の説明を聞いてると朝から


眠くなってくるのは言うまでもない。


ほんとうにつまらない、講習の先生はずっと教科書を読んでるだけである。


たまに現場ではどうこうだとか言ってるがオレはそもそも現場をしらない、というか現場で仕事してるやつが


今から資格を取りに来るって順番として逆だし普通に違法なのに、周りの連中はどうやらみんなそんな感じで


仕事してたがコンプライアンスがどうとかで会社に言われて仕方なく今更取りに来てるってのばかりらしい。


7時間+試験っていうと学校の6時間授業より長い、大学の授業4コマフルに入ってるとき、いや5コマ分


くらいだろうか……


しかし寒い、3月も終わりだというのにみごとに寒の戻りの時期にぶち当たってしまったのか


トイレが近くなる。ほかにも同じように休憩時間になると受講者ほぼ全員がトイレに並んでいる。


しかしオレも他人のことは言えないがみんな陰キャっぽいのばかりである。まあこんな資格取りに来るような


のは底辺みたいのばかりだから当然か、しかも独り言ブツブツしゃべってる明らかにやばそうなのもいるし……


こんな連中と同じ職場には死んでもなりたくないと思うばかりだ。


そしてやっとこさ昼休みになった。


プレハブ小屋の重々しい空気から一刻も早く遠ざかりたかったオレはすぐにそこを飛び出し、


駅前の繁華街に走った。牛丼チェーン店などもあったが昼休憩は40分ほどだったので、もし間に合わない


なんてことになるとちょっとした遅刻でもこういった講習は中止にされ返金もされたりしないと聞いたことが


あったので悩んだものの結局ハンバーガーセットをテイクアウトして戻って食べることにした。


しかし雨が強いのに店員はビニール袋ではなく普通の紙袋で商品を出してきたため、持ち帰る途中水滴と雨に


よって紙袋が破れ落ちファンタグレープが地面に落ちてしまった……結局ドリンクは自販機で買いなおすことに


なった。ついてねぇ~


そして戻ってハンバーガーを頬張った。セットのポテトはお腹のことを考え少し残した。


昼休みが終わりまただるい学科が再開された。


ようやく夕方になり、講習も終わりに近づいてきた。


試験に出るところは先生がはっきりと事前に教えてくれていたが最後にまた出るところを伝えた。


そして最後に安全教育のビデオを流しながら先生は試験の準備を始めた。


10分ほどでそのビデオも終わり試験が始まる、試験時間は50分とかだったがどう考えてもそんなにかかるとは


思えないほどの量だ。5分足らず、ちゃんと見返しても10分はまずかからない、そんなかんじで答案を提出した。


その場ですぐ先生は採点し始めた。合格ラインは7割だそうだが9割でも余裕なくらいだ。


「はい、お疲れ様です!」


これでようやく講習初日が終わった。


帰りにラーメン屋に寄った。普通のラーメンを注文したのだが店員が間違えて煮卵もつけてきた。


お、これはツいてるな、そう思っていたのだが……


帰ったらそのまま寝てしまった。


起きたら夜中だった。しかしなんかおかしい……体がだるく節々が痛く感じる。


これはまさか!? と思い体温計を取り出すと案の定熱があった。


38.5度…… 微熱とは言い難いが途中で休むことなどできないためなんとかこの状態でも行かねばならない。


とりあえず時間になるまでもう少し横になって休みながら様子を見るしかない。しかし寝られない……


うーんなんでこんなときに、昨日大雨で寒かったのもあり体調を崩したのだろうが丸四日一日中拘束されるだけに


二日目にしてこれはきついなあ、朝になったら晴れて気温も上がってくれれば……そう思うしかなかった。


横になっていたものの結局緊張からか寝付けないまま朝を迎えてしまった。


当然熱が引いた感じは全くなく、外に出ると昨日よりも雨風は強くなっていて気温も低く感じた。


その日は屋内でヘルメットを着け簡単な説明を受けた後はずっと屋外で講習を受けることになった。


低い気温と強い雨の中で自分が乗れない間もひたすら待っていなければならない。それが8時間続くのだ。


38.5度の熱がある中でこんなことに耐えるのは当然ながら地獄だったのは言うまでもないであろう……


大雨の中熱があり、色々説明を受けながらわざわざ大げさに安全確認などの手順を踏みながら講習を受ける。


そして10人いるため自分が乗れない時間は立ったまま雨に打たれて見学するというのを一日中延々やるというのは


本当にしんどかった。いつになったら終わるのかとずっと考えながらの8時間か9時間……休憩時間は近くの


牛丼屋に寄った。もちろんそのときも大雨が降っていた。しんどい、しんどい、何をやっていてもきつい……


ただそれだけの一日だった……


二日目の講習を終えて帰宅したとき、9時を回っていた。


ほんとうに死にかけた。しかも帰宅途中どうしても咳が抑えられなくてゴホゴホしてたら変なオッサンに


絡まれるわでよく無事に帰ってこれたと思う。


とりあえず母親に連絡して熱があることを伝えた、熱を測ると39度を越えていた。そしてそのまま就寝、


寒気とともに目覚める。夜に比べれば少し熱は下がっていたもののとても外で講習なんて受けられる状態とは


思えなかった。すぐ母親にそのことを連絡するものの母は


「受講料無駄になるんだから死んでも行きなさい」


と言ってきた。無理だっつーの…… とりあえず教習所に今日は行けないと連絡を入れる。


教習所には受講料がこれで無駄になるといったことは言われなかったが先のことも説明はされなかった。


結局そのまま今日にいたるのである、まあバックレたということだ。

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