三毛猫ミーのクリスマス~猫の島で起きた小さな奇跡

おしょう

第1話 幽霊の正体!見~た~ニャア~

 クリスマス・イヴの前夜らしからぬ、おけでも出そうな、なまあたたい風が吹く夜でした。


 静まり返った漆黒しっこくの森に、色とりどりのひかりの玉がかびました。


 その光景をながめていた酔っ払いの女が、千鳥足ちどりあしめて言いました。


「飲みすぎたから、夜風に当たりたくて、散歩に出てきたけど……」

「うん?」

「もしかして、かなり飲んだ?」


 観光客らしく、真冬にもかかわらず、小洒落こじゃれ軽装けいそうの若い女子たちでした。


「えー?そんな飲んでないよお」

「そう?だって、火の玉が見えるんだもん。ほら」


 彼女が指差した先で、光は、飛び、ね、い、一時いっときも休むことなく、せわしげに動いていました。


「あれ、火の玉じゃなくて、人魂ひとだまじゃない?尾を引いてないもん」

「もしかして、幽霊?」


 たじろいだ足元のそばで、フギャーッと、赤ん坊の泣き叫ぶような甲高かんだかい声が聞こえました。


「げっ!赤ちゃんがいる」

 ウギャーッ

「まさか!こんな真夜中の森に?」


 またしても、ウギャーッと、赤子らしき声。

「出たあ!」

 フギャーッ

「キャアアア!」


 一旦パニックが起きてしまえば、もう、どうにも止まりません。女たちは、悲鳴をあげつつ、千鳥足で、ふらふら逃げて行きました。


 その後を追うように、泣き声も、遠ざかって行きました。赤ちゃんらしき泣き声は、猫の鳴き声でした。


 猫同士が喧嘩けんかする時、

「コテンパンに、やっつけちゃうぞ!」

「やれるもんなら、やってみやがれ!」

 と威嚇いかくし合います。


 その鳴き声は、人間の赤ん坊そっくりで、都会では、事件かと勘違いした人が、警察へ通報することさえあります。


 人間と、猫が去り、静寂せいじゃくを取り戻した森で、光は、やがて動きをとめました。


 光の正体は、三毛猫みけねこが担いでいる白い袋からかがやいていた発光体はっこうたいでした。


 発光体は、三毛猫が担いできた、クリスマス・プレゼントでした。


 三毛猫は、もってきたクリスマス・プレゼントが、あまりにも多かったので、小分こわけにして、岩の中、木の枝の上、草むらにかくす作業を繰り返していました。


 その動きが、酔客すいきゃくには、人魂ひとだまに見えたようです。


 三毛猫は、プレゼントを隠し終えると、寝心地ねごごちが良さそうなれ草を見つけて、丸くなりました。


白、茶、黒の三毛みけですから、枯れ草の中にまぎれてしまうと、保護色ほごしょくになって、見分けつきません。


 夜行性やこうせいと思われている猫ですが、人に飼われていた猫は、人間と同じように、夜になると眠り、朝になると目覚め、昼間に活動します。


 やがて、三毛猫は、眠そうにまぶたを閉じました。


 あさってのクリスマス、この島が、人間との生死を賭けた、決戦の場になるとも知らず。


【2話へ続く】


【4話まで】舞台となる島や、登場キャストの紹介です。


【5話より】ストーリーが動き出します。


【16話~23話】戦闘シーンが苦手でしたら読まないほうが無難です、24話へお進みください。


 これから登場するキャスト

【猫】

 三毛猫のミー(主人公)

 黒猫のクー

 ブチ猫のブー

 ぼやき猫のモンクー

 もの知り猫のリュー

 ロシアンブルーのシャドー

 ボス猫のハロー

 カシラのジロチョー

 白猫のジョー

 アイパッチ猫のダンペー

 アメリカンショートヘアのショー

 伝令のハンゾー

【人間】

 ローコー

 ローバー

 スケサー

 カクサー

 ドクトル・ゲー先生

 武器を持った三人組

【幽霊】

 サンタクロース

 トナカイのルドルフ

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