第46話 チャート分析は多くが使うから参考になる

 短期売買においては「テクニカル分析」と呼ばれる手法で買いどき、売りどきを測る手法があります。

 しかし「テクニカル分析」といえども万能ではないのです。


 過去、この株価で反発したから、きっと今回もそうに違いない。


 これ、冷静に相場を見ていると思いますか?


 今「テクニカル分析」つまり「チャート分析」をしている方は論理的で冷静だと思いますよね。


 実はそれ、思い込みなんです。


 株価が上がるか下がるかは、過去のチャートを分析するだけではわかるはずがありません。


 需要があるから株価は上がり、供給過多になると株価は下がる。


 至極当たり前な話です。


 しかし「チャート分析」は需要と供給という関係で値動きを見ていません。

 「陽線が三本出たから買い」という判断のどこに需給が織り込まれているのでしょうか。

 また「逆三尊だからこれから上がるから買い」という判断にも需給など反映されていません。


 私たちは日足チャートを見て値動きの推移を見るだけではならないのです。

 では需給を知るにはどうすればよいのでしょうか。


 日足チャートもたいせつですが、出来高の推移を必ず見てください。

 大きな陽線の日の出来高が多ければ、需要が山のように湧いてきて、どんどん株式を買っているとわかります。

 大きな陰線の日の出来高が多ければ、需要が大幅に減ってさっさと株式を売って利益確定しようとしているとわかります。

 出来高がそれほど伴っていなければ、そもそも需要と供給の勢いがそれほどなかったのだと判断できるのです。



 では巷にあふれる「テクニカル分析」「チャート分析」の書籍は役立たずなのか。

 そうでもないのです。


 よく売れた書籍に書いてある分析手法は、あっという間にトレーダーに読まれます。

 すると自分流のトレード哲学を持たない方は、その分析手法を取り入れてトレードするのです。

 なにが起こるかというと、書籍に書いてあるとおりにチャートが値動きするようになります。


 そうなのです。

 「テクニカル分析」「チャート分析」というのは、売れた書籍の分析手法どおりの相場が展開されていくのが常道といえます。


 多くのトレーダーがその書籍を参考にするから、そのとおりにチャートが出来上がるのです。


 よく書籍に「勝率何%」だったり「何勝何敗」だったり書かれていて、さも「すごい手法に出会った」と思っても、実はその書籍に書いてある分析手法は書籍発売後から有効になるようになっています。


 私は読書するほうなので、株式取引に関する書籍も数多く読んでいます。

 それによっても、その年その年で流行する分析手法は異なるのです。

 そして多くは書籍が販売されてから、その分析手法が有効になります。


 なぜかといえば、多くの読者が書籍の分析手法を用いてトレードを始めるからです。

 著者は今流行っている、儲かっている手法を書籍化したわけではありません。

 これから流行らそうとしている分析手法を掲載して、株式相場がそのとおりに動くよう誘っているのです。


 なぜかといえば、著者が株式相場で書籍の読者をカモにするため。


 そうなのです。

 株式取引の書籍とは、著者が読者をカモにして大金を稼ごうとするシステムで作られているのです。

 いかにも「秘伝公開」のような書籍でも、過去の値動きをチャートで示して「ここで買って、ここで売る」とまことしやかに書かれています。

 それも読者がその手法を真似てくれれば、株式相場は書籍どおりに推移します。

 読者より安値で仕入れていた著者は、読者が利益確定する前に読者に売りつけて利益確定できるのです。


 こんな不公平なシステムがまかり通っている。

 それが株式トレードの世界なのです。


 では書籍の著者を出し抜くにはどうすればよいのでしょうか。


 実は頭のうちに書いてあります。

 日足チャートと出来高を必ずチェックするのです。


 株価が上昇するときに出来高が増えていれば、株式相場は買いが優勢の状態です。

 株価が下降するときに出来高が増えていれば、株式相場は売りが優勢の状態です。


 つまり上下どちらかのトレンドに乗っているときは、必ず出来高が増えます。

 出来高が増えていないのに株価が上昇しているのは危険な局面です。

 いつ暴落するか、著者と頭の良いトレーダー以外の個人投資家には判断がつきません。

 弱者はいつも暴落する様を見てパニックを起こすのです。


 「テクニカル分析」「チャード分析」の書籍が「再現性」の言葉で持て囃されているのは、その書籍を買って実践するトレーダーが増えれば増えるほど、「再現性」が高まるようになっています。


 なんの道しるべもなく「テクニカル分析」「チャート分析」の書籍を読んでも、株式市場から退場するトレーダーは九割を超えているのです。

 書籍を読んで実践した方がすべて成功して富を得られるほど、優秀な書籍はありません。


 正しい分析手法は、チャートと同程度に有効な出来高を用いるものです。

 ただこれだと「スイングトレード」向きの備忘録になってしまうため、デイトレードにも言及しておきます。

 デイトレードでは分足チャートと出来高と板情報の三点を必ず把握しておいてください。

 そしてタイミングが訪れたと判断したら、一瞬で売買注文を出せるように訓練しましょう。


 デイトレードの「テクニカル分析」「チャート分析」はまだ書籍化されていません。

 もしされていたら、まともに株価がつかなくなる恐れもありますからね。



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