第6話 買いたい株数がすべて買えるわけではない

 前回「板情報」について語りましたが、実際の売り買いにおいてどのように変化していくものなのでしょうか。

 また「買いたい株数がすべて買えるわけではない」という株式投資の原理もあります。

 今回は「売り買いするとき板情報がどうかかわってくるのか」について、手短に書きたいと思います。




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買いたい株数がすべて買えるわけではない


 仮に現在の株価2,000円のときに10,000株の「株式」を保有したい場合、2,000万円の大商いとなります。

 もちろん「株式取引」の初心者が手がけるような金額ではありません。

 あくまでも「わかりやすく」するための計算上の数字です。


 もし「板情報」で株価2,000円の売りが7,000株しかなかったらどうなるでしょうか。

 実際に売買した経験のある方ならおわかりですよね。


 もし株価2,000円を10,000株「指値買い」注文したら。

 「板情報」で株価2,000円の売り板7,000株がすべて約定して消え、株価2,000円の買い板へ新たに残りの3,000株が指値で残ります。

 つまり10,000株の「指値買い」注文なのですが、約定できたのは7,000株のみです。

 残り3,000株は2,000円の「指値売り」か「成行売り」が合計3,000株入るまで全株数は約定しません。


 これがもし10,000株の「成行買い」注文なら。

 株価2,000円の売り7,000株がすべて約定して株式が入手できます。

 そして株価が1ティック(呼び値)切り上がります。

 次の売り板の株価2,001円が3,000株以上あれば、株価2,001円の売り3,000株が引かれて約定します。

 2,001円の売りが3,000株以上あれば、10,000株の平均取得単価は2,000.3円となり、株価は2,001円になります。


 仮に株価2,001円が2,000株しかない場合は、株価2,001円の売り2,000株がすべて約定して株式が入手でき、株価がさらに1ティック(呼び値)切り上がります。

 さらに次の売り板の株価2,002円が1,000株以上あれば、株価2,002円の売り1,000株が引かれて約定するのです。

 2,001円の売りが2,000株しかなく、2,002円の売り1,000株が約定したら、10,000株の平均取得単価は2,000.4円となり、株価は2,002円になります。


 どうしても平均取得単価を2,000円ちょうどにしたいのなら「指値買い」にしましょう。

 時間はかかるかもしれませんが、希望する平均取得単価で10,000株保有できるかもしれません。


 いくらでもよいから指定した数量の株式を確実に保有したいのなら「成行買い」にしてください。こちらは注文を出した瞬間に約定します。


 現在は東京証券取引所で株式の取引システム「東証アローズ」が稼働しているのです。

 1/1000秒単位で注文を受け付け、0.001秒でも早ければそちらの注文が優先されます。


 あまり起こりませんが、仮に0.001秒単位で同時に注文が入った場合は「成行注文」が「指値注文」より先に処理されるのです。

 もし「成行注文」が同時に入ったら、数量の多い注文が優先されます。

 「指値注文」が同時に入ったときも、株数の多い注文が優先されるのです。

 つまり「時間の早さ>成行注文>指値注文>注文数量の大きさ」の順で決済されます。


 (私は基本的に成行売買をするので、実際に指値注文の不利は感じたためしがないですね)。




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 「株式」において、最初に「株式は市場に積まれていない」と大前提を出しました。

 それは「いくら大量に買いたくても、誰かが売ってくれなければ買えない」とわかっていただくためです。

 たとえ売ってくれる方がいても、あなたが希望する株数を持っていないかもしれません。その場合、どうすればよいのでしょうか。


 まったく同じ金額で取得したいのなら、2,000円で10,000株の「指値買い」注文を出せばよい。

 確実に10,000株欲しいのであれば、10,000株の「成行買い」注文にしてください。

 取得単価はそのぶん高くなりはしますが、買いたいときに確実に買えたら、チャンスをものにできますよ。


 また売りたいときに確実に売れないと、思わぬ損失が拡大する場合もあります。

 だから「売りたい」と思ったら、1、2ティックは他の人にくれてやるつもりで「成行売り」注文で確実に決済してください。


 買えなかったときは機会喪失だけなので、損害は出ません。

 しかし売れなかったときは手元に株式が残ってしまうので、その後株価が下がり続けたら確実に損失が拡大してしまいます。

 だから「売りたい」ときは、「指値売り」はしないように。

 最悪の場合、「売り指値」に株価が到達しても、あなたの注文は後回しになって、結果的に約定する前に株価が急落してしまいます。

 あなたは利益確定したつもりでも、実際に株式が売れていないのですから、あなたを待っているのは急速に膨らむ「含み損」だけです。


 株式取引において、1円でも有利に売り買いしたい、は「欲の皮が突っ張っている」のです。

 「スイングトレード(数日から数週間の取引)」「中長期投資」の場合は、1円、2円なんて大局を見れば微々たるものです。


 もちろん「デイトレード(日計り取引)」や「スキャルピング(利鞘抜き)」の場合は「一円を笑うものは一円に泣く」になりがちです。

 これらは「指値注文」で1円、2円をしっかり利益につなげなければなりません。


 「株式取引」初心者は「デイトレード」や「スキャルピング」には手を出さないでください。

 仕事の副業としてはまったくやれません。

 「デイトレード」も「スキャルピング」も、取引時間いっぱい市場に張り付いていなければなりません。たった1秒目を離しただけで暴騰・暴落は起こりえます。

 「デイトレード」や「スキャルピング」については後日書きたいと思います。



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