第2話 Let It Be -2
職員室に立たされた二人は、教頭先生と二人の担任を前にまだ興奮冷めやらぬ様子だった。
「一体、どういうことなのか説明してもらえないか」
教頭先生の言葉に、互いに牽制しながら、先に口を開いたのは大野の方だった。
「こいつが、いきなり殴りかかったんだ」
教頭は軽く頷くと美智子に問い掛けた。
「本当かね?」
「はい」
美智子は大きな声ではっきりと答えた。
「どうしてそんなことをしたんだい」
小柄な少女に優しく問い掛けた教頭に、毅然とした態度で美智子は答えた。
「先に挑発したのは、向こうだからです」
「挑発?」
怪訝な顔で大野に目線を移した教頭に慌てて大野は言った。
「俺は挑発なんてしてないぜ。ただ、女のくせにそんなカッコしてるのは、おかしいって言ってやっただけさ」
「おかしくなんかないじゃない。これだって制服じゃない」
「ナニ言ってやがる。女のくせに。女は女の制服があるだろ」
「うるさい。これだってちゃんとした制服だ」
「まぁ、待ちなさい。そんなことで殴り合いまでしたのかね」
「殴り合いじゃねえよ。一方的に俺が殴られたんだ。凶器攻撃でね」
「やかましい。ケンカに凶器もクソもあるか」
「女だろ、オマエ。ちっとはまとも口の利き方してみろよ」
「うるさい。女だ女だって、そんなのどっちでもいいじゃないか」
「いい加減にしなさい」
教頭の一喝で二人は黙った。
「とにかく、新学期早々揉め事を起こした処分は覚悟しておくように。それと、西川さん」
「はい」
「女子は、ちゃんと制服が別に決められている。そういう服は着て来ないように」
「どうしてですか」
「そう規則で決まっているからだ」
「それは男女差別だと思います」
「なに?」
「男はこうあるべきで、女はこうだなんて、差別です」
「ーん、それで、君は反撥しているという訳か」
「そんなことは言ってません。アタシは、この制服の方が好きなんです」
「女子は女子の制服を着用のこと。いいね。早々に購入するように」
まだ反論しようとする美智子を遮るように教頭は席を立った。美智子は言葉の向け先を失って黙ってしまった。
大野と二人説教を受けた後、予鈴が鳴り放免された。職員室を出て、美智子は廊下でひと息ついた。
「おい」
妙に沈んでいる美智子に大野がつっけんどんに声を掛けた。
「なんで、そんなにこだわるんだ?」
「なにが?」
「制服だよ」
「いいじゃない…そんなの」
「揉めるだけ損だぜ。学校なんてな、目ェつけられると」
「あんただって、派手なカッコしてるじゃない」
「俺はいいんだよ。もう。一年からツッパっても損するだけだぜ」
「いいの。あたしはこれで」
美智子は大野を後に残してそのままつかつかと歩き去った。大野は、呆れながら、それでも戸惑いながら美智子を見送った。
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