リアンナが失ったモノ
「はい……それはもう……大切な物を失ってしまいました……」
鎮痛な面持ちでそう告げるリアンナに、私は驚愕と同時にやはりなと納得してしまった。
完全転生蘇生術は何度も述べている通り莫大な対価という代償を必要とする。片腕一本失うだけでも安い方で、私でも自分の全てともいえる魔力全てを差し出さないと行使する事が出来ない禁断の秘術そのものだ。そんな術を行使したのだから、リアンナも何かしら失っていてもおかしくはないが……
「見たところ腕や脚はちゃんとありそうだが……まさか義手や義足か?」
「いえ。この手足は生まれついた私の身体の一部ですよ」
「そうか……ハッ!?まさか!?今私が視えていないのか!?」
「いえ!バッチリ視えてますよ!それはもう!師匠の華麗でキュートなそのお姿が!!」
「では……味覚とか嗅覚とか……そういう感覚的なものか?」
「それが無くなったら師匠に美味しい手料理振舞ったり!師匠の芳しい香りを楽しめないじゃないですか!断固それだけは差し出してません!!」
「前者はともかく、後者は個人的にやめて欲しいが……そうなると………魔力か?」
「私に魔力が無かったら師匠真っ先に気付くはずでは?」
……おかしいな……。代償になりそうな物は全部失っていないとは……
「リアンナ……お前は一体何を失ったというんだ……?」
私は恐る恐るリアンナに尋ねると、リアンナは再び鎮痛な表情になり……
「はい……それはもうとても大切な物を失いました……私にとって命よりも大切な……………
師匠コレクションの全てを!!!?」
「は?」
リアンナの発言に過去最大の間の抜けた顔になる私。いや、何だ私コレクションって……嫌な予感しかしないが、一応聞いてみると……
「私が集めに集めた師匠コレクションですよ!!私が幼かった頃!夢見が悪く眠れなかった時、一緒に寝てくださった布団一式!師匠が私の為にと作ってくださったちょっと焦げついた料理!師匠の髪を整えるという名目で採取した師匠の髪の毛!それから、こっそり撮影魔法で撮った師匠の隠し撮りコレクション……」
「って!?待て待て待て待て!!?何だ!?それは!?お前そんな事をしていたのか!?全然知らなかったぞ!!?」
「そりゃあそうですよ!勘の鋭い師匠にバレないように集めていたんですから!」
「そんな事を胸を張って自慢するなぁ〜ーーーーーー!!!?」
いや、リアンナが私に執着し過ぎているとは思ったが……まさかここまでとは……私はどこで弟子の教育を間違えたのか……って言うか、そんな対価で完全転生蘇生術が成功するなんて……
「何を言ってるんですか!私にとっては命よりも大切な物ですよ!!!」
「あぁ……そう……」
もうなんだか疲れてそんな言葉と溜息しか出ない。リアンナの話を聞いていたら、私が完全転生蘇生術の危険性を話したが大袈裟に言ってるようにしか思われないだろうなぁ……
「あっ、それともう一つ。先程の撮影魔法の技術が私から失われて、もう私には使えなくなりました……はぁ〜……せっかく師匠が目覚めてくれたのに、今後は師匠の可愛らしいお姿を目に焼き付けておく事しか出来ないなんて……」
「あぁ……うん。そうか……是非今後はそうしてくれ……」
ついでのようにそう話したリアンナだが、その代償も魔法の技術の一つが失われたというだけで、やはり大した事はない。
それに、リアンナならまた撮影魔法以外の方法を編み出しそうな予感がして、私の背筋に寒気が走った。
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