第6話 野球小僧-6

「野球部相手に、挑戦してみようか」高松

「賛成!あの監督に、吠え面かかせてやる」池田

「ホエヅラ、ってどんなだよ」木村

「知らねえけど…、そんなことどうだっていいじゃないか!あいつに、仕返ししてやるんだ」池田

「おい、それじゃ同好会にならないよ」小林

「そうだよ、レギュラーになれなかった復讐をするなんて」木村

「違うよ!勝つためのチームづくりが、俺たちみたいな寄せ集めに負ける、ってことを教えてやるんだ」高松

「勝てるか…?」中沢

「勝てるサンディ!小林とサンディがいれば」池田

「それだけじゃぁな。それにまだメンバーが足んねえし」中沢

「そうだな……」池田

「ま、とりあえず、誰か知り合いに声を掛けてメンバーになってもらって、それから、チームの方針を決めて…」高松

「そうそう、まずはメンバーを揃えて、チームの方針を決めて、ゲームができるようになったら、あっちこっちに練習試合を申し込んで…」小林

「とにかく、試合がしたいな」中沢

「そうそう、試合ができなきゃ、野球してることになんないよ」小林

「でも、サンディ、すごいね」高松

「Thanks」サンディ

目の前でニコニコとしているサンディが、ついさっきまで剛球を投げていたことに亮はまだ納得できないでいた。ただ、自分もこのチームで野球ができるんだという期待が、静かに亮の心の中で、ふつふつと沸いてきていた。


 小林のクラスの林寿彦が参加して、メンバーは8人になった。

「えぇーっと、ピッチャーはサンディ、でいいな?」高松

小林が高松の問い掛けに頷いた。

「じゃあ、サンディがピッチャーということで。キャッチャーは、池田。ファーストは、俺。セカンドが大木で、サードが木村、ショートが林で、レフト、小林?だな。センターが中沢、で、あと一人だな……」高松

「いまんとこ、いいんじゃない。このポジションで」小林

「小林が控えっていうのも、贅沢だな。あとは、バッティングの方だけど」池田

「4番が小林……、ひょっとして、サンディ、バッティングも得意?」高松

「ハイ、まかせてください」サンディ

「オイオイ、何だよ、これは。サンディのためのチームか?」池田

「まぁ、いいじゃない。『がんばれ、ベアーズ』みたいで」高松

「まだ言うか?」中沢

「でも、あと一人どうしても探さなきゃ」小林

「誰かアテはないかな」池田

「3年でレギュラーじゃないやつに、頼んでみようか?」高松

「でも、それじゃ、受験ですぐに引退しちゃうから、また誰か探さないと」小林

「やっぱり2年か1年で探さなきゃな」中沢

「そういやぁ、小林、山本がいるじゃないか」池田

「山本?あいつか。でも…」小林

「誰だ、そいつ?」高松

高松の問い掛けに小林は言葉を噤んだので、池田が答えた。

「俺たちと一緒にリトルリーグにいたやつですよ。結構、うまかったんだけど」池田

「ケド?」高松

「5年の時にやめたんですよ」池田

「どうして?」高松

小林がゆっくりと説明した。

「ちょっと、わがまま、なやつで、練習はさぼるし、チームプレイができないし、上級生とけんかするしで、監督から怒られて、それでやめたんですよ」小林

「生意気なやつだけど、うまいのはまちがいなし」池田

「僕は、あんまり、好きじゃないんだけど」小林

「まぁ、小林、そう言うな。野球が好きならいいじゃないか。でも、野球部には入らなかったんだな」高松

「そう、ですね」池田

「まぁ、いいや。何組だそいつ?」高松

「確か、F組だと思うけど」小林

「EかFかあっちのほうですよ」池田

「じゃあ、池田と小林、顔見知りなら頼んできてよ」高松

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る