第82話 逃亡者、ミコちゃんに会う

サクヤさんの故郷に到着する


「ようこそエド村へ」

サクヤさんが村に入って僕達を歓迎する


エド村か……トランプの事もあるし、これはもう確定だろう


「とりあえず、村長の所に挨拶に行こうか」

サクヤさんに連れられて村長に会いに行く


村長から滞在の許可をもらう。

村長の家に泊まっていいと言われたけど、気を使うので空き家を借りることにした。


村長に他の大陸の事を聞くけど、村長もよくは知らないようだ。

知ってる範囲で教えてもらった。


ここから、確かに海の向こうに大陸があるように見えるけど、船で向かっても一向に辿りつかないらしい。


昔、冒険者が数年かけて船を漕ぎ続けたことがあるらしい。

その時はこの大陸の反対側に着いたらしい。


もしかしたら幻覚か何かを見せられているのかも……

謎は深まるばかりである。


でも、魔王城に行くには許可がいるって言ってたから、もしかしたら、許可を得ている僕は辿り着けるかもしれない。

魔王城と関係なくても気になるので行ってみたいな


村の名前の由来を聞いたら、200年程前にこの村を開拓した人がつけたらしい。

多分、その人が日本人だ


村長がその人の子孫だと思ったけど違った。


子孫は今から会うつもりでいたミコト様らしい


村長にお礼を言って外に出る


「それじゃあ、ミコちゃ…ミコト様の所に案内しますね」


「別に愛称で呼んでも、僕達は気にしませんよ?」


「いえ、ミコト様は村人から崇拝されていますので聞かれたら厄介なことになるかもしれません」

聖人君子みたいな人なのだろうか?


「そうなんだね…」


僕達はミコト様の家……というか屋敷に案内された。


明らかに村長の家よりも大きいんだけど……


「ここにミコト様がいるの?」


「はい、まずは私が話をしてきますので少し待っていて下さい」

サクヤさんが屋敷の中に入っていく。

僕達は言われた通り、屋敷の前で待つ


屋敷の中でドタバタと音が聞こえるけど大丈夫なのだろうか?


しばらくしてサクヤさんが戻ってきた。

なんだか疲れた様子で


「大丈夫ですか?なんだか騒がしかったですけど…?」


「大丈夫ですので気にしないで下さい。中へどうぞ」


僕達はサクヤさんに連れられて屋敷の中に入る


屋敷の奥の方の部屋に案内されて入ると、そこに女性が座っていた


この人がミコト様か…


ミコト様は着物を着て髪に櫛を挿している。


昔の日本人の格好ってこんなだったのかな?異世界にいるせいか違和感しかない


「はじめまして、ミコト様。ハイトと申します、こちらは妹のミアです。本日はミコト様にお願いがあって参りました」

偉い人のようなので出来るだけ丁寧に挨拶する


「堅苦しいのは無しじゃ。まずはサクちゃんをここまで連れてきてくれたことにお礼を言うのじゃ」


のじゃ?まだ若いのに変な喋り方してるなぁ


「では、お言葉に甘えて……。僕達が連れてきてもらったのでお礼を言うのは僕の方ですよ。道中もサクヤさんと一緒で楽しかったです」


「そうじゃろ、そうじゃろう?サクちゃんは良い子だからな」


「ミコト様、そんなことより――」


「そんな堅苦しい呼び方をせんでくれ。妾の事は前みたいにミコちゃんと呼ぶのじゃ」

サクヤさんが話を変えようとするのを遮って、ミコト様が言う


幼馴染だって言ってたから、他人行儀なのは嫌なのだろう


「でも、あれはまだ私も子供でミコト様の事をよく知らなかったからで……村の人に聞かれたらなんて言われるか」


「村の奴らなんてほっておけば良いのじゃ。それともサクちゃんも皆と同じように妾を1人にする気かの?」


崇拝されるってやっぱり良いことばかりじゃないね。


「ミコト様がいいって言ってるんだから、普通に接していいんじゃないの?無理してるでしょ?」

僕は背中を押してあげる。

多分ミコト様にとってサクヤさんが唯一気を許せる人なんだろう。見ててそんな気がする。


「お主良い事を言うのじゃ。さあサクちゃん、昔みたいに妾と遊ぶのじゃ」


ん、遊ぶの?今は僕の話を聞いて欲しいんだけど……


「しょうがないなぁ。この屋敷の中だけだよ、ミコちゃん」


「それでこそサクちゃんなのじゃ。さて、何をしようかの?」

ダメだ、完全に遊ぶつもりだ。

遊ぶのは2人になってからにしてほしい


「あの、先に僕の話を聞いてもらってもいいですか?」


「お主、サクちゃんとの時間を邪魔するつもりか?」

一瞬背筋がゾワっとした


「…そんなつもりはありませんよ」


僕はミコト様を鑑定する


職業

[退魔師]

スキル

[降霊術]


色々と気になる所があるけど、今はそれどころじゃなさそうだ。

サクちゃんLOVEすぎるだろう。


「なぜじゃ。なぜ効かぬのじゃ。ならばこっちじゃ」


「ひゃっ」

ミアが声を上げる


「ミア、大丈夫?」


「うん、なんか、ひやっとしただけ」


再会を邪魔されて駄々をこねてるだけなのはわかってるけど、これ以上ミアに危害を加えようとするなら、僕も強く出ないといけない


「ミコト様、落ち着いて下さい。邪魔をするつもりはないんです」


「うるさいのじゃ。こうなったら仕方ないのじゃ。ご先祖さま頼むのじゃ」


また一瞬背筋がゾワっとする。


「ん、んぅぅぅぅ」

ミアが苦しみ出して、僕の体から魔力がごっそりと持ってかれた


「はぁ、はぁ、はぁ。ごめん……お兄ちゃん」


「大丈夫だから、ミアは離れてて」


「うん」


スキルから何をしているかはわかっていたけど、ミアがあのスキルを使わないといけないくらい追い詰められるとは思ってなかった。


これは躊躇していた僕の責任だ。


僕はミコト様の方に歩いていく


「待ってください、ハイトさん。ミコちゃんに悪気はないんです」

サクヤさんが止めようとするけど、悪気がなかったとしてもミアを苦しめられて黙っているわけにはいかない。


「黙ってて下さい」


僕はミコト様の頭を掴む

「駄々をこねるのもいい加減にしてください。僕がいつまでも下手に出てると思わないで下さいね」


僕はミコト様を見下ろしながら言う


「い、痛いのじゃ。やめるのじゃ。謝るからゆる――貴様、私のかわいい娘に何をする?」


急に雰囲気が変わった。

謝ろうとしてたから、詫びを受け取って許してあげようと思ったのに……さらに面倒そうなことになった。


状態

[憑依中]

職業

[退魔師]

スキル

[降霊術][鑑定][聖魔法Lv10][闇魔法Lv10][幻想]

称号

[勇者][魔王]


鑑定のツッコミどころがさらに増えた

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