第46話 逃亡者、試験を見守る
翌日、フィルとフェンの冒険者登録試験のために冒険者ギルドへ来ていた。ミアはサラさんと留守番している。
「ハイトさん、お待ちしておりました。今日はフィルちゃんとフェンくんの登録試験ですね。試験の内容はハイトさんが受けた時と同じです。よろしいですか?」
「ひとつ聞きたいことがあるんですが、手出しはしないので僕も一緒について行っていいですか?危なくなったら助けたいので。」
「試験中に直接手出しをしなければ大丈夫ですよ。準備などは手伝っても構いませんが、戦闘はもちろん探索も試験の対象です。不測の事態であれば問題ないですが、基本は手を出した時点で不合格と思ってください。」
「わかりました。ではこれから行ってきます。……これ昨日と同じですけど食べてください。」
僕は今日もゼリーを渡す
「ありがとうございます。このお菓子、不思議な食感でとてもおいしかったです。どこで売ってるんですか?」
「……僕と家にいるメイドさんが作りました」
「え?手作りだったんですか!それにメイドさんを雇ってるなんて実はお金持ちだったんですね」
お姉さんに羨望の眼差しで見られる
う、眩しい。
…メイドさんの給金は領主様が出してるなんて言えないしな
「そんなことないですよ。メイドと言っても僕が雇ってるのではなく一時的にお手伝いに来てもらってるだけですので…はは」
嘘は言ってない
「謙遜しなくてもいいですよ。同僚の子が羨ましそうにしてたので、今度何個かもらえませんか?お代は払いますので」
お姉さんに向こうにいる女性を見ながらお願いされる。
僕がそっちを見ると手を振られる
「いつもお世話になってますからお金なんていりませんよ。引き続き何かあれば相談に乗って下さい。」
僕は収納からゼリーをもう一つ取り出して渡す
「これ、渡してあげて下さい。」
「いいんですか?これからダンジョンで食べる分ですよね?」
「家に帰ればまだありますので気にしないで下さい」
実際はまだ収納にたくさんあるけど……
「それでは今度こそ行ってきますね」
僕達はダンジョンに向かう
入り口にて2人を送り出す
「ここからは2人で協力して魔物を10体倒してくるんだよ。僕は遠くから見てるけど助けてはあげられないからね。昨日練った作戦通りやれば大丈夫のはずだから」
2人ともレベルは1だけど、獣人はステータスが元々高い。装備もしっかりしてるしフィルには荷物持ちとしてだけど戦闘を何度も見てきた経験もある。十分合格出来る可能性はある。
あとは、見守りながら応援しよう
2人はダンジョンに入っていき、スライムと戦いながら進んでいく。
作戦通りだね。レベルは上がらないだろうけどまずはスライム相手に戦う練習だ。
しばらく進むとゴブリンと遭遇した
フィルが前衛で戦い、フェンが後衛で援護する。
今日だけはフェンにミア用の杖も持たせている。
実際に出来ることは周りを明るくして戦いやすくするか目眩し程度だけど……
ステータスや実戦経験を考えるとフェンには今回の試験は荷が重い。
なので今日はフィルに頑張って弟の分のノルマまで達成してもらう予定だ。
見守っていると、苦戦しながらもゴブリンを仕留めることに成功する。フィルは証明部位を切り取って袋に入れる。
流石にまだレベルは上がらないか…
2人は引き続き辺りを探索する。
するとゴブリン2体を発見した
2人はそっとその場を離れる
よし、いいぞ。冷静に動けている。
実際にはゴブリン2体相手でも倒せると思う。でもリスクを負う必要はないから、1体相手に苦戦しなくなるまでは必ず2対1で戦うように作戦を立てた。
2人はそのまま辺りを探索して3体目のゴブリンを倒した時にフィルのレベルが上がる
レベルアップしたな。スキルは増えてないけどこれで少し楽になるだろう
引き続きゴブリンを倒していく2人にワイルドバットが襲いかかる。
フィルが不意打ちをくらい、腕に怪我をする
フェンが慌てるがフィルは冷静にフェンを落ち着かせて逃げる。
なんとか逃げ切ったところでフィルはポーションを使って怪我の治療をする
錬金術の店で買っておいてよかったな。
手を出せないのがもどかしい
その後は休憩を挟みながら、順調にゴブリンが1体の時だけ戦闘をしてら無事に10体の魔物討伐の試験を達成する。
後はギルドに戻って報告したら終わりだ。
時間的にも十分間に合いそうだ
結局危なかったのはワイルドバットに不意打ちされた時だけか。ゴブリン2体とは最後まで戦わないようにしてたし、フィルは結構慎重派なんだな。
ちなみにゴブリン以外と戦わないのは作戦通りである。ワイルドバットは短剣で戦うには分が悪いし、他の魔物はステータス的に少し厳しい。
自分で戦うより見てる方が疲れたな。
2人とも頑張ったし今日の夕食でお祝いしよう。
僕は念話でサラさんに夕食のリクエストをしておく。
2人が無事ダンジョンから出たところで僕も合流する
「よく頑張ったね、おめでとう。報告だけしちゃって家に帰ろうか。実はサラさんに夕食は豪華にしてもらうようにお願いしてあるんだっ」
「ホント、やったー!」
フェンが手を挙げて喜ぶ
フィルは泣きそうだ
緊張が一気にとけて安心したのだろう
「よく弟を守ったね。さすがお姉ちゃんだね」
僕はフィルの頭を撫でながら褒める
冒険者ギルドで達成報告をして無事登録が完了する
フィルが報酬の銀貨を僕に渡そうとするので、フェンと何か好きなものを買うように言って受け取らない。
ちなみにギルドから出るときにお姉さんの同僚の女性から笑顔でゼリーのお礼を言われた。
……次から甘味は2つだね
2人にもこのくらい欲望に素直になって欲しいものだ
屋敷に帰ると豪華な夕食が出来ていた。ミアも手伝ったらしい。
「合格おめでとう」
ミアが祝福しながら2人を席に座らせる
「少し夕食には早いけど始めようか」
2人は今日の事を話しながら食べていたけど、少しづつウトウトしてきて、最後には座ったまま寝てしまった。
よっぽど疲れたんだな。僕は2人を背負ってベットに寝かせる
お父さんってこんな気持ちなのかな…
僕はそんな事を考えつつダイニングに戻ることにした
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