第29話 逃亡者、別れの時

「…疑ったのは悪かったが、なんだこのステータスは。それに称号も意味がわからない。詳細はわからないが加護を2つも持った人間なんて見たことない。」


「すぐに見せれなかった理由はわかってもらえましたか?」


「ああ。これは簡単に見せていいものではないな」

わかってもらえて良かった。


「この後の話は後でいいですか?さっきも言いましたが、ルカとルイは巻き込みたくないんです。」


「わかった。夜に聞こう」


その後は順調に馬車は進み夜になる


テントでルカとルイを寝かせてから僕達は外で話をする。


僕はここではない世界から来たこと、王城での出来事、そして処刑されそうになった事を話す。

ただ、処刑から逃れる為に、代わりにロンドが処刑された事は言わなかった。後悔はしてないけど割り切れてもいないから。


「そんな事ががあったのか。大体の事情は理解した。約束通り私達に出来る事なら協力しよう」


「いいんですか?そう言いはしましたが、かなり危険な事に巻き込もうとしてますよ?」


「いいんだ。それに私達も今の王国の在り方には納得いかない部分があった。君達に協力する事が結果的にオーラス国を良くする気がするんだ」


「ありがとうございます。今は何をして欲しいとかはありませんが助力を願うことがあると思います。その時はよろしくお願いします。」

僕は頼もしい協力者を得ることになった


その後馬車は順調に進み、僕達は途中の村で休みながら帝国領へ入った。


帝国領に入って2つ目の村で姉弟と別れることになる。


「もうすぐお別れね」

ルカが寂しそうに呟く

「そうだね、色々あったけどもうすぐルカ達の村だね」


「ねえ、ハイトさん達はこれからどうするの?これが最後のお別れは寂しいよ。また会いたい」


「僕もまたルカとルイに会いたいよ。…まだこれからの事は詳しく決めてないけど、とりあえずは冒険者登録するつもりだよ。お金も稼がなきゃだし、僕の目的を果たす為にもレベルは上げときたいからね」


「じゃあ会いたくなったら冒険者ギルドを訪ねるね」


「うん。ありがとう。待ってるよ」


しんみりしたまま馬車が走ること数時間ついに姉弟の村に到着する


「一晩ここで休んでから出発しましょう」

行商人の方が僕にそんなことを言う


「え?ここでは少し商売したら出発する予定じゃなかったですか?」


「予定は日々変わるものですよ」

恥ずかしいことを何度も言わせるなと、呆れた顔で言われる


僕達の為に予定をズラしてくれたのか

「…ありがとうございます」


姉弟の家に一緒に行くことになった


「ただいま!お母ちゃん会いたかったよ」

ルカが家に勢いよく入っていく

ルイも続いて入ってたいき母親に抱きつく


「おかえり、無事に帰ってきてくれてありがとう。まだ小さいのに出稼ぎに行かせてごめんね。」

母親はルイの頭を撫でながら謝る。


「いいの。わたしもルイも納得してたし、そうしないと3人で暮らすことは難しかったもの…」


「ありがとう…これでしばらくは生活できるわ。…ところでそちらの方達は?」


「ハイトさんとミアちゃんだよ。帰ってくるときに助けてもらったの。今日、うちに泊めてもいいよね?」

ルカに紹介されて僕とミアは会釈する


「もちろんいいわよ。ハイトくんにミアちゃんね、娘達を助けてくれたみたいでありがとうね。大したおもてなしは出来ないけどゆっくりしていってね」


「ありがとうございます。大した事はしてないので気にしないで下さい。それにミアにいい友達が出来てこちらがお礼を言いたいくらいですよ。移動の最中も楽しかったです」


「お母ちゃん、ハイトさんはなんでもないように言ってるけど、ハイトさん達が助けてくれなかったら私達はここに帰ってこれなかったの…」

ルカが母親に道中の事を話す


「そんなことが…ハイトさん、ミアさん本当にありがとうございました。少ないですがお礼もさせて下さい。私に出来る事ならなんでも言ってください。」


「さん付けしなくていいですよ。普通に呼んで下さい。それにあの時はたまたま助ける事が出来ただけです。お礼も気持ちだけで結構です。友達が困ってたから助けただけなので。ミアもそれでいいよね?」


「うん!気持ちだけでうれしい」


「ありがとうございます。ルカ、ルイいい人に出会えて良かったね」


「「うん」」


この後の夜遅くまで姉弟と談笑して眠る


翌朝、出発のときにルカがミアに髪飾りを渡していた。

お礼と友達の証としてもらってほしいと


「ありがとう。大事にするね」

そう言ってミアは髪飾りを頭に付ける


「似合ってるかな?」


「うん、似合ってる。ミアちゃんに似合うと思ったんだ」


2人を見てて僕はあったかい気持ちになる


「ミアよかったね」


「うん!」


「これ、髪飾りのお返しとしては申し訳ないけどもらって」


僕は猪の肉と城から盗んでたお菓子をあげる。


ちなみに猪はワルキューレの人達に捌いてもらった。代金を払うと言ったけど「ナディアを助けたお礼だ」と言って受け取ってもらえなかった。ナディアさんからはご馳走になってるし気にしなくてもいいんだけどな…


「こんなにいいんですか?高そうなお菓子まで」


「いいよ、まだあるし。干し肉にすれば結構日持ちするでしょ」


「ありがとうございます」


「私からはこれ、もらってくれる?」

ミアがルカとルイに木彫りの人形を渡す。人形には紐がつけてある。


「かわいい。ミアちゃんありがとう」

「ミアお姉ちゃんありがとう」


「馬車の中で彫ったの。お守りだから何か困った事があったらそれを握って強く願ってね。」


「うん。大事にする」

ルカはそう言って自分とルイの首に人形を掛ける。


「ミア、そろそろ…」

「時間だからもう行くね。楽しかった、またね」


「私も楽しかった。またね」


馬車が出発する

ミアは2人が見えなくなるまでずっと手を振っていた


—————— —————— ——————


後書き


これにて3章が終わりです。

もう終わり?って思うかもしれませんが、3章は、2章とも次の4章とも話の系統が違うので分けただけです。内容としては成長したよって事と伏線張ったよくらいの認識で大丈夫です。


4章ではちゃんとハイトが暴れますのでお楽しみに


新作始めました

宜しければ呼んで下さい

「イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・」

https://kakuyomu.jp/works/16816452220288537950

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