第27話 逃亡者、力を見せる

起きるともう昼だった。

大分寝ていたようだ


ミアに聞くと、大分熟睡していたので起こさなかったとのこと。


「カルロさんが朝食を持ってきてくれた時に起きたら父のところまできて欲しいって言ってました」

ミアから伝言をもらう

「なにかあったのかな?とりあえず行こうか。ルカとルイは?」


「今日も畑の手伝いに行きましたよ」


僕達は村長に会いに行く


「待たせてしまってすいません。村長、何か僕達に話がありましたか?」


「大丈夫ですよ、お疲れだったのでしょう。行商人が来ましたのでお知らせしようと思ってたのです。もしかしたら乗せてくれるかもしれません」

嬉しい知らせだった


「本当ですか!教えていただきありがとうございます。行商人の方は今どこにいますか?」


「村の広場で店を開いていますよ。宴会をやった場所です」


「あそこですね。行ってみます」


僕達は広場に向かう。広場には村長の言う通り出店が開いていた。


「すみません、行商人の方ですか?」

店を覗くと女性の方が販売をしていた


「いらっしゃい。そうだよ、なにをお求めですか?」


「僕達、隣の帝国領に向かう途中だったんですが乗り合い馬車が盗賊に襲われてしまって、逃げる際に僕達を置いて馬車が行ってしまったんです。よろしければ馬車に乗せてもらうことは出来ませんか?多くはありませんがお金は払います」


「君たち2人でいいのかい?」


「いえ、もう2人子供の姉弟がいます。全部で4人です。」


「うーん、4人か…護衛の冒険者の人にも相談してみるからちょっと待ってて。」


話が終わるのを待つこと数分。


「子供が増えると襲われた時に守りきれないかもしれないと言われたよ。乗せてあげたいんだけどね…」


「襲われた時に僕達を守ってもらう必要はありません。その時は僕が3人を守ります。何かあっても自己責任と見捨ててもらって構いません。食事も自分達で用意しますので乗せてくれるだけでいいんです。お願いします」

僕は頭を下げてお願いする


「私はいいけど、冒険者の人を自分で説得してもらっていいかな。自己責任と言っても子供を見捨てるのは気が引けるし。彼女らはあっちで休んでるから」

店主は向こうのテントを指差す


「ありがとうございます」

僕達はテントに向かう


「すみませーん」

ぼくはテントの外から呼びかける

「なんだい?」

中から20代後半くらいの女性が出てくる。彼女らって言ってたしこの人がリーダーなのかな?


「さっき店主の方からお話しがあったと思いますが僕達も馬車に乗せて欲しいんです。僕達の事は護衛しなくてもいいので乗せてください。店主の方は護衛の冒険者を説得できたら乗せてくれるって言ってました。」

僕は要件を伝える。


「とりあえず中に入りな」

僕達はテントの中に入る

テントの中には3人の女性がいたので僕は会釈する。


「あれ、ナディアさん!」

見知った顔があったので、思わず声を掛けてしまう


「知り合いか?」

リーダーらしき人に聞かれたので「前にちょっと…」と答えておく。ナディアさんが内緒にしてるかもしれないし


「ハイトにミアちゃん、お久しぶり。あの時はありがとう。後から聞いたらハイトの言う通り本当に盗賊だったよ。おかげで売られずにすんだよ」

隠してるわけでは無さそうだ


「お久しぶりです。ナディアさん、パーティ組んでたんですね。あの時は1人だったのでソロ冒険者だと思ってました。」


「あの時は別行動してたの。合流するのにあの護衛がちょうど良かったんだ。報酬もらいながら移動も出来るから。まさか盗賊だとは思わなかったけど…」


ナディアさんと話してるとリーダーらしき人が話に入ってくる

「ナディア、この子が前に言ってた男の子か?」


「ええ、そうよ。ハイトとミアちゃん」


「ナディアを助けてくれたみたいだな。ありがとう」

リーダーらしき人にお礼を言われる。


「たまたま気づいただけですから気にしないでください。」


「ナディアの恩人だから助けてやりたいが、何かあった時に依頼人を護衛しながらさらに4人も守るのは無理だ。諦めてくれ」

僕達を心配してくれての発言だ。


「僕達まで護衛してもらわなくても大丈夫です。僕が3人を守りますので皆さんは依頼人の方だけを護衛してくれればいいです。何かあった時は放置してもらって構いません」


「君がどれだけ戦えるのかは知らないが、私は子供が目の前で死ぬのは見たくない。旅は危険がたくさんある。甘くみない方がいい」


「僕の実力を見せれば乗せてくれますか?」


「護衛が必要ないと証明出来れば乗せてやる。方法は決めさせてやる」


さてどうするか、偽装したステータスを見せてもいいけど、僕達を心配してくれた人を騙すようでなんか嫌だな。


僕は小声でミアに尋ねる

「ミア、収納って珍しいスキル?」

「持ってる人は多くはないですが、そこまでではないです」


収納スキルがある事は話してしまうか。いい人達みたいだし悪いようにはされないだろう


「わかりました。ここでは見せれないので外の森まで来てもらえませんか?」

僕は森まで一緒に移動してもらう


「それでは見せます」


「ああ」


僕は収納からボアの死体を出す


「っ!今どこから出した?それにこれはボアか…。このサイズのボアを倒したと言うつもりか?」


「収納スキルを持ってるんです。ボアは僕が倒しました」


「馬鹿な、このサイズのボアとなるとBランクパーティで倒せるくらいだぞ!それになんだその収納は!…こんなに大きいものは入らないだろう」


「……え?ボアってCランクパーティが倒すくらいですよね?収納だってそんなに珍しいスキルじゃないと思いますけど…」

僕は言いながらジト目でミアを見る


「ボアはCランクって聞いたことあります…。収納は…お兄ちゃんのはおかしいです」

ミアが小声で教えてくれる……僕はおかしいみたいです。


「君が言ってるのは一般的なボアの話だ。このボアは通常の1.5倍くらいのサイズだよ。Cランクでは荷が重い。私達のパーティでも苦戦して倒せるくらいだろう。それに収納は大きくても猪が入るくらいだ。ボアはおかしい」

…猪もまだ入ってますよ。


「たまたまですよ」


「たまたまでボアが倒せるわけないだろう…。いいだろう、君の実力は認める。馬車の中で詳しく教えてもらうとしよう」


認めてもらえたのはよかったけどやりすぎたようだ。

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