第7話いじめられっ子、女神から逃げ出す

彼女から僕に会いにきた用件を聞く。

大方の予想はつくが…


「あなたにも異世界に行って欲しいの」


やっぱりか。でも僕にこだわる理由がわからないので聞く事にする。


「何故ですか?確かに僕は昨日異世界に行く予定だったのでしょう。でも僕一人行かなくても問題ないのでは?」


「あなたに行ってもらわないと困るの。いや、困っている事にもうなってるのよ」


どうも要領を得ない。

そういえば勇者召喚をされたと言っていたな。

あぁ、なるほど。そうゆうことか。


「もしかして、僕が勇者なんですか?」


「…………違うわよ。」


違った。恥ずかしい。

こいつ何言ってんだって顔してる気がする。


「勇者になるかも知れないけど…。そもそもあちらの世界での職業や称号なんかはスキルやステータス、性格、行動なんかをシステムが判断して自動的に決定するものなの。

今回みたいな場合はあっちの神様に異世界でも生きていける様にスキルをもらう予定だったからそこで職業は決まるはずよ。称号はその後の行動次第ね。

だから、誰が勇者とか決まってなくてそもそも勇者がいないかもしれないの」


そうゆうものなのか。


「そうなんですか…。ちなみにステータスってどうやって確認するんですか?」


話を聞いて僕は称号の事が気になっていた。


「なんで今そんな事を聞くの?まだスキルをあっちの神からもらってないじゃない。まぁ別に教えてもいいけど…ステータスオープンって言うだけよ」


それはおかしい。それはすでに試してある。


「昨日の事が気になって試したんだけど何も起きませんでしたよ。「ステータスオープン」って」


目の前に透明なボードが現れる



影宮 灰人

Lv:1

職業

[逃亡者]

称号 

[運命から逃げたもの 神]

スキル

[逃走][生活魔法Lv:3]


HP:100

MP:10


ATK:10

DEF:10

INT:10

RES:10

SPD:20

LUK:500


ぅおっ!なんか出た。なになに…


異世界の神に会ってもいないのに職業決まってるじゃん。

職業[逃亡者]ってなんだよ。

称号は[運命から逃げたもの]か。教室で聞こえた声も確かにそんな事言ってたな。

なんかどっちもネガティブだな。

SPDとLUKがやたら高いけど職業か称号の影響なのか?



「ステータスをみるには異世界のシステムを認識する必要があるのよ。闇雲に唱えてもダメよ」


彼女の言葉で思考が現実に戻ってきた僕は、動揺を隠す為に話を戻す。


「そうだったんですね。話を戻しますけど勇者とかじゃないなら僕が異世界に行かないといけない理由がないですよね?」


誤魔化せたっぽいのはいいけど、返ってきた言葉はまたもや要領を得無い、


「あなたが地球に残ってるせいでパニックが起きてるのよ。」


意味がわからない。それに、僕が悪いみたいに言われて少しムッとする


「もう少し僕にもわかる様に1から説明してくれませんか?僕のせいでパニックになって困ってるって言われて、「はいそうですか。わかりました」なんて言うわけないじゃないですか」


さらに続ける。


「僕の居場所はここです。言っておきますが何を言われても異世界に行く気はありませんよ」


女神はシュンとなりながら説明しだした


「それは困ります。…学校の様子が今どうなってるか知ってる?」


「ニュースで見ましたけど行方不明多数で大騒ぎみたいですね。まあ、人が30人もいきなり消えたらこうなるのは当然でしょう。それがどうかしましたか?」


なにが言いたいんだろう?


「本当だったら事件にはならないはずだったの。転移した人達は元々存在してなかった事になる予定だったの。元々いない人がいなくなってもそれを誰も認識出来ない。でも今は…言いたいことわかった?」


衝撃すぎる話だった。

彼女は続ける


「あなたと言う、イレギュラーによってプログラムがエラーを起こしてキャンセルされちゃったのよ」


「だったら今更僕が転移したって意味ないじゃないですか?」


僕はそういうことじゃないんだろうと思いながらも聞いてみる。


「もう一度私が神力を使って再起動させれば何も問題ないわ」


「ただ、」と彼女は付け加える


「あなたにも異世界のシステムがインストール済みなの。このシステムを持つものが地球上に存在する限り何度再起動させても結果は変わらないわ。私が神力を使って疲れるだけ」


僕は呆然としてしまう。


「僕も転移したらいなかった事にされてしまうの?」


自然と言葉が漏れる。


「そうね。そうなるわ」


「…なにか方法は無いんですか?」


「あなたが周りから忘れられない方法なら一つあるわ…でもそ…「何ですかそれは!!?」」


僕は食い気味に希望に縋り付く


「…あなたが死ぬことよ」


そんな………

僕は言葉が出てこない。


「私が最高神様に命じられたのはあなたを異世界に転移させる又はあなたを始末すること」


彼女は悲しそうな顔をして言う


「あなたには申し訳ないと思うけど私はあなたを殺したくはないの。だからお願い…協力して」


異世界には行きたくない。両親と別れたくない。忘れられるなんてもってのほかだ。

だからといって死にたくない。


僕は彼女の顔を見ながら心の中で謝り唱える。


スキル[逃走]


その瞬間僕は家の外にいた。

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