第44話帰還

伝令が間に合ったのか追撃をしていた続々と諸将が兵を纏めて戻って来る。

なんか不満そうな顔をしている人が多いけど折角勝利を最後の最後で覆されると後々厄介なことになりそうだし。

それにしても風間さんの配下に上野、現代で言う群馬県方面の調査をして貰ってなかったのは失敗だった。

情報は何よりの武器になるのに今回の合戦は勝ちっぱなしだったから完全に油断して失念してた。


昼を過ぎた頃には全軍が帰って来たので鉢形城の主殿にある広間に諸将を集め今後の方針を説明する。

景春さんには鉢形城を拠点に深谷、本庄方面の制圧を指示し抵抗する国人領主は攻めて領地を奪取し地盤を固めるように指示を出す。

坂戸の国人領主は景春さんと共に暫く行動を共にするらしい。


「宗麟様、深谷、本庄一帯の制圧とのことでございますと切り取り自由という事でございますか?」

「いや、申し訳ないけど切り取り自由ではないんだよね。 切り取った領地は検地を実施して石高を把握したうえで今回の褒賞として諸将へ分配するつもりだから。 ただ今回の合戦で得た領地の検地がすべて終わるのは来年の冬ぐらいになりそうだから、その間は切り取った領地から得られた年貢は景春さんの裁量で諸将へ分配してもらっていいんで」


「では、奪取した土地には代官を置き年貢は制圧に加わった諸将と分配させて頂きます」

「うん、申し訳ないけどお願いします。 論功行賞は正確な石高が把握出来次第実施するつもりだから少し遅くなるけどその分の補填という事で」


深谷、本庄一帯の国人領主の多くは関東管領の影響を強く受けていると思うから抵抗が予想されるけど制圧すればその分手に入る領地も多い。

後々、論功行賞で分配されて自分達の領地になるかは分からないけどそれまでの間の年貢は手に入るからか景春さんを始め諸将は概ね満足そうな顔をしている。


諸将が主殿の広間から出てゆき、景春さんと泰経さん、そして自分の3人だけになったので自分の思い描いている今後を話した。

やっぱりまだ国人領主が大名化していない時代の為か納得してもらうまで時間はかかったけど最後は何とか納得して貰えたと思う。

勝った側なのに先祖から受け継いできた領地から加増とは言え新しい土地へ領地替えとなると反発する人も出て来るとの事だったけど守護や守護代なんていう肩書だけで国を纏めるのはこれから日ノ本を統一していくには足かせになる可能性もある為、何としてでもこの機に戦国大名化をしておかないと効率が悪すぎるので出来るうちに改革を押しすすめるつもりだ。


その後も新しい体制について話合い翌日、鉢形城を出発し嵐山・松戸を経由し石神井城へ向かって兵を進める。

恐らく顕定にそそのかされたんだと思うけど、降伏しなかった国人領主が兵を挙げて青鳥城周辺を荒らしまわっているとの事なので帰りに一掃し石神井城へ向かう。

勿論今更降伏は認めず所領を没収するつもりだ。


実際に嵐山に兵を進めると降伏を申し出て来る国人領主が何人か居たものの門前払いで追い払い嵐山、松山一帯を松山城の上田さんと青鳥城の石橋さんをはじめ、従軍していた国人領主達に景春さんに提示した条件で暫くの間管理を任せておいた。


裏切ったら再度進攻して攻め滅ぼせば良いだけだし、周辺は既に両上杉家の影響力が低下しているから問題は無いと思う。

まあ反旗を翻して兵を挙げたとしても周囲はほぼ自分の勢力圏になってるから孤立するだけなんだけど。


それにしても今回の合戦は長かったような、それでいて今となっては短かったような。

両上杉家が兵を挙げて川越城と鉢形城を攻めようとしてると聞いた時はかあり焦ったし詰んだと思ったけど、ネットで調べた限り、例外はあるものの、この時代の合戦、それも籠城戦は相手を完全に攻め滅ぼす事を前提とせず相手を屈服させて降伏を促す事を目的としてる感じだったから助かった。


まあ両上杉家の目的は自分を豊嶋家から引き離し自分達の手中に収めようと企んでいたっぽいし。

そもそも野戦で雌雄を決するつもりが無かったと思う。

野戦となったら兵力に勝る方が有利だけど合戦の後、豊嶋氏を滅ぼしたとしても褒賞に困るはずだろうし。


そう考えると今後、自分が反対の立場に立った時、褒賞をどうするかとかも考えておかないと。

今回は武蔵一国を手に入れたうえ敵対した国人領主は追い出したから褒賞として与える土地には困らないけど、お金だけでなく褒賞となる物とかも用意しとかないと。


そんな事を考えていると石神井城が見えて来た。

うん、帰って来た~~~~!!!


つい最近出陣したような感覚に囚われるけど、なんか懐かしいような…。

そして石神井城に入城し軍装を解く。


既に今日帰城する事が伝えられていたようで主殿の広間には豪華な料理と酒が並べられ一門衆の皆さん労うかのような出迎えだ。

留守居の白子さん、農政改革の責任者だけどこういう事もそつなくこなせるとは、優秀な人材だな。


一門衆と重臣が集まり自分が労いの言葉をかけ終わると、そのまま祝宴になる。

今回は結構ギリギリというか詰まれた状況にも陥ったけど無事に全員が帰って来れたうえ大勝利だった事もあり皆さん一様に明るくガンガン酒を飲み歌い踊ってる。


それにしてもこの時代の酒は白く濁った感じで少し酸っぱいような…。

ネットで清酒の作り方調べて製作は開始してるけど忙しくてまだ本腰を入れてなかった事が悔やまれる。

あと、ワインなんかも作れないかな?

この時代にブドウがあるかは分からないけど、山葡萄なんかはありそうだし、果物を使った果実酒なんかも作れれば多分、お金になるはず。

これから勢力を拡大していく為にお金は必要だしね。


それはいいとして皆さん完全に酔っぱらってるのか板橋さんと平塚さんが踊り出したんだけど、男の裸踊りを見させられてもうれしくないんだよね…。

美女がチラリズム満載の踊りを見せてくれるならうれしいんだけど。


うん、無理っぽい…。

だって侍女の人達も少し呆れた顔してるしそもそもこの祝宴の場に踊れそうな女の子いないし…。


そう言えば照姫さん、桔梗姫さん、椿姫さん達は何処に居るんだろう?

帰ってっ来てからまだ会って無いんだけど…。


補足---------------------------------------------------

戦国大名

まだこの時代には戦国大名と言う存在は現れておらず、日本で最初に戦国大名化した人物は北条早雲(伊勢新九郎)と言われています。

戦国大名は、室町将軍など中央権力と一線を画し、守護職のあるなしに関わらず国内を独自に統一し、有力な国人領主などを統制し家臣団を構成することで、領国内において軍役などを課せるようにしていました。

しかし戦国大名化しても家臣が主家以上の権力を持つことで主家を傀儡としたり、主家を乗っ取る下剋上なども頻発していました。

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