第28話穢れがつく? 迷信は信じません
泰経さんに陣触れを発して貰い、兵が参集するまで2日程との事なので、それまでは石神井城内にある自分用の家で照姫さん、椿姫さん、桔梗姫さんと過ごす。
普段はいつも自分が居た現代の話など聞いて来たり、隙を見つけては密着しようとして来る3人が、出陣前は…、と言って城内の別室に行こうとしたので引き止めて4人で時間の許す限りのんびり過ごす。
椿姫さんも桔梗姫さんも自分の両親が住む城へ大軍が迫っているという事もあり浮かない顔をしつつも、武家の習いですのでと気丈にふるまっている。
「景春さんの方は道灌さんに援軍を送れなくする為の陽動みたいなものだから大丈夫だよ。 それに道灌さんも川越城の防備を強化してるし、近隣の国人領主から援軍も来て兵糧も豊富だから大丈夫。 今回の合戦は道灌さんの手腕に依るところが大きいけどちゃんと作戦立ててるし」
浮かない顔の2人をそう言って安心させようとするものの、やはり6万の軍勢が向かっていると聞いて特に椿姫さんは心配そうな顔をしている。
「そうだ、今夜から一緒に寝よう」
突然の提案に驚く3人に、必死で何もしないと言い、同じ部屋でなるだけだと伝える。
「しかし…、合戦の前は…」
「仕来りだよね、ただ自分としては迷信でしかないし、歴史上には合戦に奥さんを連れて行ったり家臣の奥さんを呼び寄せさせたりした人も居たから大丈夫。 まあ鼾や歯ぎしりしてたらうるさくて寝れないかもしれないけど、多分鼾も歯ぎしりもしないから大丈夫だと思うよ」
そう言って笑いかけるも、合戦に向かう男に女性は近づいてはいけないと言われ育てられてきた為か3人とも躊躇っていたけど、最終的に3人がおれて同じ部屋で寝る事になった。
うん、下心が無いとは言わないけど、元気の無い2人の憂いを取り除く為だよ。
合戦前の仕来りなんて気にしない理由をコンコンと説明し納得してもらったら、寝る前にお風呂に入ってる時に、背なかを流しますって3人がやって来ちゃったけど、見たくて見たんじゃなくて見えてしまったから事故だからね!!
うん、目の保養になった…。
同じ部屋に布団を並べ川の字になって寝て、翌朝4人で朝食を摂り、泰経さん達と打ち合わせをした後は自分の家で3人と過ごす。
それにしても女の子3人と同じ部屋で寝るのってドキドキするな…。
キャリーバッグに入ってたシャンプーやリンス、ボディーソープを使用してると言っても自分も同じものを使用してるから香りは同じはずなんだけど、なんか違う。
これが女の子の香というやつか?
日本では女の子に縁が無かったから知らなかったけど、これが女の子の匂いなのか?
コッソリ隣に寝てる照姫さんの布団に潜り込みたい衝動に駆られるけど、そこは理性を最大限に動員して耐えた!!
いきなり布団にモゾモゾと入って来て身体を触られてトラウマになったら困るし、何よりまだ犯罪者にはなりたくない。
この時代では犯罪にはならないんだけど、この一線だけは越えたらいけない気がする。
でも寝息立ててる3人の寝顔凄くかわいいんだよね。
これが出陣前に女性を近づけてはいけない理由か?
実はドキドキして寝れず睡眠不足になるから女性を近づけさせないと言う風習が産まれたのか?
今度4人で寝ても大丈夫な大きな布団を作って貰おうかな…。
泰経さんからも女性は遠ざけるものと言われたけど3人にした説明をコンコンと説いて納得して貰った。
なんか泰経さん、じゃあ某も今晩は…、とか言ってたけどその前に18歳以上の側室候補見つけてよね。
「照達が居るでは無いですか」ってまだ14歳~15歳なんだから!!
そんな心の叫びも婚姻年齢が違うこの世界ではある意味異端のようだ。
3人が嫌なわけではないけど、どこかに名家のお嬢さんで18歳以上の人居ないかな~。
そして部屋に戻ると、キャリーバッグに着替えを詰め込んでいるとなんかこれから出張にでも行くような気分になって来るけど明日出発するのは出張では無く合戦だと言い聞かせ準備をする。
尚、今回は鎧櫃を持っていく事にした。
荷と長持を合体させた車長持に日々補充される物を保管して必要に応じてその場で褒美として渡すとかする予定だ。
何より饅頭と最中が毎日補充されるので甘味に飢える事も無いし参集した国人領主へ参陣の労いとして各1個づつ渡したり出来るから持って行った方が良い気がしたからだ。
それにキャリーバッグとリュック型ビジネスバッグが多くなったら石神井城に送れば良いだけだし。
若干荷物が増えるけど役に立つこともあるから問題は無いよね。
ただ異世界定番のアイテムBOXとかは欲しかったな…。
城内、城外で準備が完了しつつある荷駄の数、アレを運ぶだけでも相当な労力になるから出来ればその労力を無くしたいんだけど…。
牛もまだ数が増えて無いから牛に牽かせる訳にもいかないし、今後の課題だ…。
補足-----------------------------------------------
小荷駄・荷駄
当時の人は兵站と言う概念は無く荷車に食料などを積んで合戦に赴き、食料が無くなると近隣から購入したり奪ったりしするか撤退をする事が多かったそうです。
その為、大きな勢力を有する人の軍を除いて、敵に籠城をされると長期間に及ぶ兵糧攻めとかはあまり出来なかったそうです。
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