第9話進軍
城内に2000人もの人が入るとごちゃごちゃになって出陣に支障をきたす為か、城下町の外に各一門衆や重臣達の兵が整列し、城には主だった人とその家臣10人程なので大した混乱もなく自分の愛馬となった青毛の巨馬に跨り城を出る順番を待つ。
それにしても昨日から照姫さん見かけないけど、風邪でも引いたのかな?
てか城内の目に見える範囲に女性が居ないような…。
ふとそんな事を思うも先頭の先陣の白子さんが城門から進軍を開始すると、それに続き一門衆が、その後泰経さん親子と一緒に城を出る。
泰経さんが城を出て城下の人が集まっている中で「このお方は天よりこの日ノ本を統一する為に遣わされた鳳凰院 宗麟様であらせられる! 皆の者! 宗麟様のご尊顔を目に焼き付けよ!!」とか大声で言うし、即席で作らせましたとか言って白地に赤で鳳凰を書いた大旗を掲げるから、滅茶苦茶城下に住む人達の注目を受けてしまった。
戦が終わったら照姫さんに案内してもらって城下町をぶらりとしたかったのに、顔覚えられたら気楽に城下町散策出来ないじゃん!!
城から出発し城下町の外で待機していた兵と合流したところで改めて進軍を開始し始めた時、泰経さんが江戸城の偵察に向かわせていた人が報告に戻ってきて来た。
そして報告を聞いた泰経さんは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「宗麟様、此度の合戦はかなりまずいかもしれません」
「ん? 予想より敵の数が多かったとか?」
「左様でございます。 江戸城に集結した兵は約4000との事で城から打って出る様子であると…」
「2倍か~、正面からぶつかったら数で押し負けるね…。 兵を率いてる一門衆や重臣の人にはこの事を伝えて相手が少数であっても接敵したら無暗に追撃しない事を徹底させてください。 特に先陣の白子さんには良く言い聞かせてくださいね。 下手に追撃すると最悪白子さんの部隊だけ敵に囲まれて全滅なんて事もあり得ますから」
そう言うと泰経さんは伝令を各一門衆や重臣の元に走らせてくれたので、併せて道灌軍の動向を探る為の物見を多数放つように依頼する。
前回の江古田原沼袋の戦いで伏兵に気付かず挟撃されそうになったのを思い出したのか泰経さんは物見の依頼を快諾し側近に指示を出してくれた。
これでそれなりに敵軍の動きが分かるはずだから伏兵に襲われる可能性も減るでしょ。
そう思いながら進軍を続けていると、宗泰君が馬を寄せて来た。
「宗麟様、その立派な馬でございますが、名はなんと言うのですか?」
「名前? そう言えば考えてなかった…、やっぱり名前があった方が良いよね?」
「はい、これだけ素晴らしい名馬、そしてその主であり天から遣わされた宗麟様の愛馬でございますので日ノ本中に轟く名があった方がよろしいかと」
「そうだね、日ノ本に轟かなくても良いんだけど名前付けてあげないと可哀そうだもんね…」
馬に名前を付ける事をすっかり忘れていたのを誤魔化しつつ、愛馬の名前を考える。
青毛の巨馬だし青…、いやなんかショボい。
それに青毛の馬とは言うけど、見た目は光沢のある黒だし、ここは中二病を全開にして…。
「
「黒帝…、確かに他の馬と違い堂々とした体躯に見事な毛並み、まさに馬の中の
宗泰君は顔を紅潮させ興奮した様子で黒帝を見てる。
多分宗泰君も黒帝に乗ってみたいんだろうな…。
まあ戦の後で黒帝ハーレム計画を実施する予定だから上手くいけば黒帝並みの馬に乗れるかもしれないからそれまで我慢してもらおうかな。
黒帝が嫌がらなければ合戦の後で乗せてあげても良いし。
まだ豊嶋氏の勢力圏なうえ物見を放っている安心感から宗泰君と雑談を交わしながら馬を進める。
昨日調べたら石神井城から江戸城まで普通に歩いて3~4時間、今日のうちに江戸城まで到着してしまう為、道灌が城から打って出たら1~2時間後には戦闘が始まる可能性があるんだけど、野戦になるなら明日の朝からの方が良いんだよね…。
道灌の動きや布陣を見て作戦立てられるし、なにより遭遇戦は兵数が少ない分出来れば避けたい。
そう思っていると、江戸城を偵察していた人が1人戻って来た。
どうやら城から打って出たみたいだ…。
さて、どうしたもんか…。
補足-----------------------
※補足
在来馬
当時の馬は現在のサラブレッドのように大きくなく、例えるならポニーのように小さな馬だったそうです。
現在も少数在来馬が保護されていますが、概ね体高が120センチ~130センチ程だったそうでそれに鎧を着た武者が乗ると人が走るより少し早い程度の速度しか出なかったそうです。
また長時間乗ると馬が疲れてしまうので、騎馬武者は大体替え馬を2~3頭程連れて合戦に行っていたそうです。
尚、黒帝はサラブレッドと同サイズで肉付きが良いと言う設定です。
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