異能魔術的次元体系

霧雨

第1話 Dimension/Rain

 今から少し文明が進み、人類が進化した世界。世界の半分の人間は超常的な能力を持った「異能者」と呼ばれる存在となった。そんな世界で人々は、平和に暮らしていた。これはどこにでもある都市「神谷町」で異能者たちが織り成していく物語。


 4月7日、桜がここ「神谷市」でも咲き始めた。上を見上げれば、バカバカしいほど青空が広がっている。雲は1つもない。


 この日は、この町一番の名門校「私立蓬莱高等学校」の入学式。周囲を見れば、男女様々な新入生や在校生が楽しそうにしている。


「『私立蓬莱高校』、せいぜいいじめにあわないようにしよう。まぁ、あったら斬るだけだがな。」


 銀髪で赤い目をした、学生服を着た少年が校門の前に立ってそうつぶやいた。彼は学生服のズボンのポケットに手を入れ、門をくぐる。


 ___彼の名は「霧雨 玲也」、《異能者》だ。


 この後、入学式がすぐに終わり、体育館で現地解散となるはずだった。しかし霧雨を含む生徒は自分のクラスと席の位置を早い段階で知りたいと思ったのか、そのまま帰路にはつかずに1年生の教室がある2階へ向かった。


「教室は……1-Dか。」


 教室のドアをガラガラと開ける。そこにはすでに生徒が20人ほどいる。5人ほどに集まって話をしている者たち、1人で本を読んでいるおとなしい者。2人でスマホを見て話し合っている者たち。多種多様だ。


「さてと、俺はこの席かな?」


 霧雨は、窓側でかつ教壇側の席に座り、窓からの景色を眺めている。いたって普通の高校生の風貌だ。


「何アレ?新手のヤンキー?」「まさか、ただのオタクじゃん。」「ださっ。」


 銀髪メカクレ赤眼の見た目は否が応でも悪い方向に目立ってしまう。クスクス、と霧雨を嗤う声が聞こえだす。


「……。」


 そんな嘲笑を霧雨は全く気にしていない。周囲の様子に興味がなさすぎる、自分の中の世界にいる、といった具合だろう。


「みんなおはよう!入学お・め・で・と・さん!!この伊達克哉ちゃんがやってきちゃったよぉ!」


 茶髪でピアスをつけ、さらにはクロムハーツのネックレス…体つきもなかなか仕上がっている。霧雨とは対照的な、完全に陽キャのステレオタイプを地で行く男が教室に入ってきた。


「きゃー!」「伊達克哉様よ!」「こっち向いて!!」


 教室がまるでアイドルの握手会のようだ。


「そして君が、霧雨玲也君だね。よろしくねぇ。」


 伊達克哉と名乗る男は、座っている霧雨の机の前に立ち、何かの当てつけのように見下している。


「……何の用だよ。」


 伊達はゆっくりと霧雨を指し、侮辱の言葉を放つ。


「いやはっきり言ってさ、君のようなイ キ リ 陰 キ ャなんかこの教室にいらないんだよねぇ~!」


 伊達は霧雨を指さし、嘲笑した。その顔には悪意しかない。取り巻きもクスクスと霧雨を嘲笑う。


 しかし、当の霧雨は無言でつぶやく。


「なぜ?俺はお前に不都合なことは一度もしていない。」


「いやね、普通に考えてお前みたいに悪目立ちする奴はいらないし、そいつが陰キャだというだけで目障りなんだよ。だから痛い目を見ないうちに出ていけ、この陰キャちゃん!」


 はははははははははははははははは!!!帰れ!帰れ!!


 伊達は、霧雨の肩を小突く。周囲の人間も霧雨に『帰れ』の大合唱をぶつける。しかし霧雨は怒る様子も、泣き叫ぶ様子もない。依然ケロッとしている。挑発に何とも思っていない姿はまるでロボットのようだ。淡々と言葉を紡ぎ、返すさまも。


「そうかい。登校初日で帰ってくれと。もしこれが教師にばれたら大変だなぁ。あんたも一緒に退学となるんだから、な。理由は『弱い者いじめ』という吐き気を催す邪悪な理由でな。お前の将来のことを考えてもそれはやめた方がいい。俺にはとてもとて「おう、はっきり言ってな、お前のようなイキリナードなんかに教師がかまう訳ねーんだよ。」」


 霧雨の机に右手を叩きつけ、伊達はガンを飛ばす。


「俺の力でお前をここから追い出すことだってできるんだぜ?あぁ?」


「ふん、親の七光りでかつ散々周囲に甘やかされている、養豚ざこぶた野郎の発言だな。で、どうやって俺を追い出すほどの力を見せつける?カードゲームか?喧嘩か?レスバトル?ボードゲーム?」


 伊達は机に手を何度もたたきつけ、顔を霧雨の顔に近づけ、まくしたてるように言い放つ。


「そんなの《異能力バトル》に決まってんだろぉ!?なめんなよ陰キャァ。」


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 ___《異能力バトル》。それはこの世界では一種のスポーツとなっている対戦方法である。異能者が世界中に現れ、異能力のルール・法律が求められるようになり、その過程でこの異能力バトルは誕生した。


 スポーツとしての異能力バトルは、3分間異能力を持って戦い、降参した方が勝ちというプロレスリングスタイルや、時間無制限でどちらかが降参する・再起不能になるまで戦う剣闘士スタイルといった、様々なルールが定められている。


 民明書房刊 異能とスポーツの歴史 上巻より引用

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「で、どうするんだぁ?霧雨くぅん?」


「おいまじかよ!」「あの『鉄風の怪物:伊達克哉』の異能力バトルが見れるって!?」「霧雨、終わったな。」


 周囲がぞわぞわしだす。あるものは恐怖、あるものは嘲笑、あるものは期待。いずれにしろ生徒の中に霧雨を応援するものは、いなかった。


「わかった。いいぜ。体育館でやろうか?あんたが勝ったらお望みどおりにしてやんよ。何ならあんたの奴隷になったっていい。」


 そんな状況下でも、霧雨は自信たっぷりに、かつ冷静に返す。


「言ったな霧雨くぅん!奴隷になるって!」


 一方の伊達は依然として自信たっぷりだが、霧雨とは対照的にいきり立っている。


「俺が負けたら、な。今なるわけじゃあない。場所は今日、今から、体育館でだ。それでいいな?」


「ああ、いいぜ、いいだろう、いいだろうよ!!よっしゃお前ら行くぜぇ!」


「あの伊達くんのバトルが見れるって!」「行こ行こ!」「霧雨、どうせいきってるだけの雑魚だろw」「カッコつけじゃん、ダッサ!」


 取り巻きの連中は、霧雨をあざ笑い伊達を応援している。感覚的には霧雨はアウェーだ。


~蓬莱高校 大体育館~


「時間は無制限、どちらかが敗北を認めるか、再起不能になるまで戦う。剣闘士グラディエータースタイルで行こうか。」


「おう、有利なルールありがとさん!き・り・さ・め・ちゃん!」


「「「ハハハハハハハハハハハ…」」」


 観客が霧雨を指をさして嘲笑う。しかし、霧雨は顔色一つ変えない。依然としてケロッとしている。


「どうした、観客に言いたいことはそれだけか?言い終わったら早く来やがれ"かませ犬"。」


 霧雨は右手の人差し指を動かし、伊達を挑発する。伊達はいきり立った顔つきで拳を構える。


「言ってくれるじゃねーか、かませはどっちか今教えてやるぜ!」


 伊達は霧雨に正面から殴りかかろうとする。その右手は握りしめられ、後方に引いている。即座に高威力の『パンチ』を叩きつけられる、万全の構えだ。しかし。


「…右手で殴り掛かる、脳筋馬鹿の発想だな。」


 霧雨は淡々とした表情で、左に跳びよけて彼の攻撃を回避する。


「ふん、やはり脳筋。パワーはすごいな。煙が上がってら。いや、いうほど脳筋でもないか。」


 粉塵と煙が上がり、その中から伊達が現れる。しかし『右手』で殴りつけようとしたはずなのに、実際に殴ったのは『左手』だ。


「ちっ、気づいてたか。」


「…右腕で殴ろうとして左で俺をつかみかかろうとする。地面に叩きつけようとした魂胆だろうが、よけられたので左腕での殴打に変えた、と。まぁ、このしょうもないフェイントで俺が異能力バトルの実力がどれほどあるのかを試そうとしたところだろうな。でも、威力は褒めてやるよ。」


「すげぇ。」「あれが伊達の『普通のパンチ』!」「まじかよ…!」「クレーターができてやがる…!」


 伊達の周囲には、2mはあるであろうクレーターができていた。


「かわすとはなァ…やるじゃねーか。だがいつまで、いつまで俺の攻撃を躱せるかなァ!!」


「ははははは!!躱すだけじゃあ俺を倒すなんて無理だぜぇ!!」


(あの威力だ、いくら俺でもまともに食らえば即死だ。ならば。)


「そうか、ならばもう躱すのはやめにしよう。お前もいい加減、疲れてきただろッ!」


 深く、潜り込むように伊達の拳の下に入り込み、腰の左側に据えてある棒状の物を右手で握る。


 ___抜刀術の構えだ。


「な、なに!?」「刀!?」「ひ、卑怯だぞ!」「いやでも、剣闘士スタイルにそういうルールなんてないからセーフなはずじゃあ…でも!」


 ぱぁん!!刀が命中する音が体育館内に響く。その音から察するに、この音の主は竹刀だ。少なくとも本物の刀ではない。


「ぐふっ!」


 伊達の腹部に竹刀がぶつかった。その衝撃で伊達はよろける。


「やはりかませはかませだな。この程度で吹き飛ぶとは。さっきまでの威勢はどうした。俺を倒して俺を奴隷にするんだろ?さぁこいや。」


 無表情で挑発する霧雨。それを尻目に先ほどの攻撃でよろけながらも、伊達は何とか立て直す。


「くっ、さっきの攻撃、マジで効いたぜ…!霧雨、油断したよ。でも、俺はこういうのには強いんだよ!もうその抜刀術は効かねぇぞ!」


「そうかい。」


 霧雨は、縦一文字に竹刀を振るう。その斬撃は空を切り風音を立てるだけで、伊達に攻撃が当たるはずがない。しかし。


 ずばぁん!!


「なんだ!?」「なんか目に見えない衝撃波でも撃ったの!?」「馬鹿な!竹刀で衝撃波なんて!出るはずがない!!」


「…!」


 伊達は、驚愕している。霧雨の恐ろしい攻撃に。攻撃は彼の右側をかすめたが、もし命中していれば、ただでは済まなかっただろう。骨の何本かが折れてもおかしくはなかった、そういえるレベルの衝撃だった。


「へ…へへっ、その程度の斬撃で、俺を斬れっかよヴァーカ!!確かにこの衝撃の強さはすげぇと思ったよ、恐れ入った。だが所詮はあの程度!大したこたぁねぇ!!」


 そう言い放つと、伊達は上着を脱いで上半身裸のスタイルとなった。鍛え抜かれた細い体、割れている腹筋。高校生の中でも鍛え抜かれた腕。高校生にしてはなかなかに磨き抜かれた肉体だ。


「ほう、さすがは中学生空手日本一位にして、異能力バトル76戦無敗。すげぇ体つきだ。相当の努力をしないと成り立たない肉体だな。」


「お褒めにあずかり光栄。しかしもっと光栄に思えることがある。この俺にお前は殺されるんだからな!!」


 伊達は、両腕の拳をぶつける。すると、ぶつかった場所から腕が黒くなり、鉄のような光沢を放つ。


「ここまでさせたんだ死ぬ前に教えてやるよぉ。俺の異能力硬化は、俺の肉体を硬くするというものだが、その辺の奴らと硬度がちげぇんだよぉ!ほかの連中は岩石だの鉄だのと言うが、俺のは『鋼鉄』ッ!鋼と同格の硬さよぉ!そんな硬さでかつ、俺の得意技『回し蹴り』を食らったら…もうお前がどうなるかは、どんな馬鹿でも想像できるなぁ!」


「くっ!」


 ぶぉん!!空を切る黒い鉄の風。それを何発も放つ今の伊達は、まさに『鉄風の怪物』。何度も放たれる蹴り。さすがの霧雨も否応なくよけるしかない。よけなければ確実に死ぬ。異能者とて人間だ。鉄のハンマーで頭を殴られれば脳みそが吹き飛び死に至る。それほどの威力を誇る蹴りだ。


「この俺の鉄の蹴りをぉ!いつまでよけられるかなァ!?」


 何度も回し蹴りを放つ伊達。それを後方に躱していく霧雨。


「うぁ…!」


 霧雨は伊達の硬化した脚での蹴りをかわそうとしたが、踏みどころが悪く躓いてよろける。


「はっ!このまま俺の蹴りをお前にぶつければ!!俺の勝ちだぁっはっはっは!!」


 伊達は勝利の嘲笑を霧雨にぶつける。周囲のオーディエンスも確実に伊達の勝利を確信していた。


 状況的に言えば、霧雨の斬撃程度では伊達の硬化した肉体の切断は不可能、それ以前にふらつき、斬撃なんて撃てるはずもない。この状況下では霧雨はどうあがいても伊達にダメージを与えることはできやしない。理屈でいえば、伊達がこのまま蹴れば霧雨の頭部が吹き飛び、彼の勝利は確実だろう。


 しかしそれでも、霧雨は顔色一つ変えない。


「お前、やっぱバカだろ。油断したな。」


 その一瞬だった。ぶぅぁん!!伊達の腹部から衝撃が放たれる。その衝撃で伊達は後方に吹っ飛ばされた。壁にたたきつけられ、血を吹き出す。霧雨は右にしりもちをついただけでダメージはない。


「俺の異能次元斬は斬撃の操作を主としている。その能力をうまく使えば、斬撃の反射、方向の操作くらいはできる。悔しいが、確かに俺の斬撃程度じゃあ硬化したお前の腹をぶった斬ることはできない。しかし吹っ飛ばすことくらいはできる。鎧を着た兵士にハンマーが有効なように、硬化した肉体を持つお前の肉体の"内部"にダメージを与えることは可能なようだな。つまりは、自分の肉体の内側の硬化はできない、ということだ。」


 霧雨は、倒れてへたった伊達に竹刀の切先を向ける。


「それにお前の異能力の弱点もわかったよ。一部分しか硬化できない、という弱点な。」


「だ、だがまだだ!この程度で俺を倒せるとでも!?そもそも論その竹刀程度じゃあ俺を斬ることすら不可能だ!」


「確かにそうかも、な。」


 霧雨は竹刀を力強く横に振り、壁にぶつける。その衝撃、否、斬撃は壁にその形を彫り込んだ。横一文字の堀跡だ。


「あ…ああ…。」


「負けた…よな。」「伊達が敗北するなんて!」「信じられねぇ…!」「なんなんだあいつ!!」「強っ!!」


 さっきまで完全に伊達を応援していた観客が手のひらを返し、霧雨を称えだす。それを気にせず霧雨は淡々と伊達を脅す。


「これから無数の斬撃を飛ばし、お前の体中の動脈や急所を切り刻む、ということも可能だ。それでも、負けを認めないのか?残酷な死に方をしたくなかったらおとなしく負けを認めて、謝る気にn「俺の負けだ!!許してくれぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええ!!」」


 伊達は、戦闘開始前とは打って変わって、泣きじゃくって命乞いをし始める。


「わ…悪かった…!俺がすべて悪かった!!少し調子に乗りすぎた!!許してくれ!頼む!もうこういうことはしないから!!お願いだ許してくれ!どうか命だけは…!命だけはぁぁぁぁああ!!」


「あれが…伊達ちゃん…だよね。」「本性キモ!」「まじで幻滅したわ。」


 一通り、醜いとしか言いようのない命乞いを聞いた霧雨は、左足を1回、地面に叩きつけた。地団太だ。しかし悔しいからではない。これは怒りだ。それも仕方がない。自分には打ちのめされる覚悟もないのに、人を侮辱し、あまつさえ命乞い。周囲の観客が手のひらを反すのも、霧雨が怒るのも無理はない。


「さんざんコケにしておいて、いざ自分が追い詰められたら『許してくれ』、どの面下げて言ってんだよ?え?」


「ひぃぃぃ!!」


 霧雨は目を見開き、伊達を上から見落としている。伊達は泣き震えながら両手を合わせて命乞いをする。その顔は『伊達男』には程遠い、まるで温泉に入った山猿のように赤く、涙にぬれてぐしゃぐしゃだ。


 ___しばらくの静寂の後、霧雨は先程とは打って変わった、穏やかな口調でこう言った。


「…でもいいよ、俺はあんたを許す。俺も悪かった。非礼を許してくれ。ここでお前をぶちのめせば絶対に胸クソが悪い。そのうえ手負いのお前に攻撃をするということは、死体蹴りと同義だ。だから、もうしないというのなら俺はあんたを許すさ。」


 霧雨は少し口角を上げて刀をしまい、右手を伊達に向けて差し出す。


「さぁ、立ちな。」


「あ…あ゛りがどう…!俺も…悪がっだ…!」


 伊達は、霧雨の手を握って立ち上がった。伊達は男泣きをしているのか、顔が赤い。その時だった。


「甘いな、命乞いしているクズにとどめを刺さず、あまつさえ和解。とんだ甘ちゃんだな。霧雨玲也。ええ?」


 "そいつ"は伊達克哉の背後に、音もたてずに現れた。


「お前は、あk「死刑執行じごくにおちろ。」」


 バシュッ、あまりのスピードで脚が見えないほどの強烈な足払いだ。それも、なかなかの細マッチョな伊達が空中に舞い上がるほどの。


 黒髪の七三分け、ハイライトのない、ドス黒い目、機械のような無表情。な彼には不釣り合いなほど派手な青いスーツと赤いネクタイ。


「ゆ…許しt「だめだね。」えっ」


 男は、先ほどの足払いで倒れた伊達の背中を何度も力強く踏みつけ、頭を蹴り飛ばした。蹴りに渾身の力を込めたのか、伊達はそのまま壁に激突、泡を吹いて気絶した、頭からは血が流れている。


「……だめだな霧雨玲也。このテの『くず』にはここまでやらなければ、な。」


 どす黒い目をした男は、狂気的な笑みを浮かべてこちらを向く。その右足は血に濡れて紅く染まっていた。


 いやああああああああああああああああああああああああああああああ!!!


 女子が悲鳴を上げ、周囲の生徒は一斉に逃げ出した。かなりの恐怖だった。そして、最終的に残ったのはその男と霧雨だけであった。


「お前、誰だ?」


 霧雨は、多少警戒しながら彼に問う。今まで冷静だった彼も、この残酷極まりない男を前に、冷や汗が流れ出す。


「赤刃 励磁。"非"能力者だ。」

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